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【中京記念】世代を超えて甦る偉業

  • 2019年07月20日(土) 12時00分

持続する末脚が結果につながる


 重賞レースを連覇するという偉業も、その瞬間は大きく取り上げられても、やがて記憶の彼方に消えてしまうものが多い。ところがある出来事がきっかけで甦ることがある。

 中京記念がマイル重賞に変わったのが2012年のこと。その記念のレースを勝ったのがフラガラッハ(牡5)だった。前走がオープンの米子Sの勝利で、このローテーションは今でも強力だ。

 フラガラッハは翌年もこの中京記念を勝って連覇したのだが、その父がデュランダルで、こちらはマイルCSを連覇した名短距離馬。GI連覇の父からGIII連覇の子が出たということになる。

 2013年のフラガラッハの勝利がデュランダルを甦らせたのだが、大きなフットワークを繰り出し馬群をのみ込んでいく姿は、父子に相通じるものがあった。

 父の武器だった末脚を発揮したフラガラッハだったが、実はその2週間前に父デュランダルは14歳で急死していた。中京記念連覇のその瞬間、どうしてもデュランダルの現役時代の勇姿が、頭からはなれなかった。

 一番インパクトのあったレースが、2003年のスプリンターズSで、15頭の出走馬の中には、これが引退レースで史上初のスプリントGI3勝目を目指すビリーヴがいた。そのビリーヴが先頭に立ってゴールをめざす大外から、4コーナーしんがりから追い込んできたデュランダルが、強烈なラストスパートを決めハナ差で勝っていた。

 初めての重賞をGI初制覇で飾った瞬間だったが、スタート後の行き脚が悪かったのにこの快足で、レースは最後まで分からないと再認識させられ、その時の池添騎手のしてやったりのポーズと共に、はっきり甦っていた。

 デュランダルは4歳のこの時マイルCSも勝ち、翌年も勝って連覇を果たしていたのだった。ケルト神話の不滅の聖剣から命名されたデュランダルが再び甦ることはもうないだろう。

 中京記念は、マイルになって最初にフラガラッハの連覇があったが、その後は、フジキセキ、グラスワンダー、ステイゴールド、そしてディープインパクトが2回とその産駒たちが勝ってきた。いずれも持続する末脚を武器にして結果を出している。

 デュランダル産駒に見る破壊力も中京コースでは魅力だが、今開催はこれまで一度も良馬場になったことがなく、何よりも時計がかかることを重くみたい。過去7年で4頭しか出ていない3歳馬が、今年は3頭も出ている。斤量も含めて有利な材料が揃ったので注目してみたい。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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