【関屋記念】底力を秘めるドイツ牝系に現代の主流スピード血統配合
高速の切れ味に加え、バテないスピード能力も重要なレースに変化
このマイルの快速重賞は、2001年から現在の左回りになり、最後の直線は日本一長い約659m。2008年までの8年間に1分31秒8が4回も記録され、平均勝ちタイムは「1分32秒14」だった。
ところが、各陣営(騎手)が新潟の外回りに慣れるにつれ、長い直線1000mのレースが行われることもあり、全体バランスがスローに近い流れが多くなった。最近10年間の平均勝ち時計は、2012年の快レコード1分31秒5(ジェンティルドンナの全姉ドナウブルーが記録)を含みながら、「1分32秒29」にとどまる。
もちろん、芝が悪くなったわけではない。直線の切れ味勝負を念頭においたスローが多くなったからだった。最近10年の前後半の平均バランスは、『46秒69-45秒60』=1分32秒29となる。
一般に使われる前半1000m通過平均は、未勝利戦と差がない「58秒27」。明らかなスローになり、上がりは高速の3ハロン平均「34秒02」の決着。
この10年間に、逃げ切り、あるいは2番手からの抜け出しが5回もある。求められるのは「高速の切れ味」であると同時に、先行して簡単には「バテないスピード能力」も同じくらい重要なレースに変化している。
前走のエプソムCで、テン乗りになった丸山元気騎手が押し出されるようにハナを切って結果(0秒1差2着)を出したサラキア(父ディープインパクト)に期待する。スローとはいえ、サラキアの上がりは稍重で33秒0。ジリ脚ではない。
ブエナビスタ、マンハッタンカフェ、ソウルスターリングなどと同じドイツ血統の牝系。ドイツ血脈というと、頑強なスタミナ型の印象があるが、それは父もアカテナンゴ(その父ズルムー)とか、モンズーンなどドイツ血統の場合のこと。
底力を秘めるドイツ牝系に現代の主流スピード血統を配合すると、前出のソウルスターリングや、日本ダービーで上がり32秒7の爆発力をみせて勝ったエイシンフラッシュが象徴するように、スピード能力、切れ味に大きなプラスをもたらす。
このサラキアの牝系は、牝馬ながら独ダービーを独走するなど【9-3-0-0】の星を残した伝説の名牝シュヴァルツゴルト(1937)を経由したファミリーであり、近年とくに注目度が高まり、1993年の新潟記念を制したブラウンビートルの父スタイヴァザント(輸入種牡馬)もこの牝系出身だった。
サラキアは、昨年の秋にローズS2着があるが、その直前は小倉の500万特別の圧勝で、芝1700m1分39秒5のレコードだった。下級条件でまだ力不足ながら、マイルなら1分33秒台中盤に換算できるタイム。平坦コースや距離に不安はない。
丸山騎手は今年重賞を3勝もしている。フラワーCを鮮やかに逃げ切ったコントラチェック(父ディープインパクト)のようなレースを期待したい。