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【関屋記念】直線勝負に徹した思い切りの良い好騎乗

  • 2019年08月12日(月) 18時00分

大目標のマイルチャンピオンSも合っている


 夏の新潟を代表する快速重賞は、過去10年の勝ちタイム平均1分32秒29=「前半46秒69-後半45秒60」。しだいに長い直線勝負の色合いが濃くなっている。

 今年もほぼパターン通りのペースで、勝ちタイムは平均と微差の「1分32秒1」。前後半バランスは「46秒5-45秒6」。絵に描いたような近年の傾向通りだった。しかしそれは、実際は少し離して逃げた馬のラップであり、前半1000m通過は例年とほぼ同じ「58秒0」ながら、2番手以下は超スローにも近い流れだった。

 3番手で先行し、一旦は先頭に立ち惜敗した3着ソーグリッタリング(父ステイゴールド)の中身は1分32秒2=「59秒0-上がり33秒2」。寸前まで勝ったかと思えたミエノサクシード(父ステイゴールド)は少差で2着だったが、いつもよりずっと早めに動いて4コーナーでは好位の外。自身は1分32秒2=「59秒3-上がり32秒9」。惜しいところで勝てなかったこの2頭は、スローを察知していつもより早めにスパートしての快走であり、マトを射た絶妙の好騎乗だったろう。

 残念ながら、直線勝負に徹したディープインパクト産駒のミッキーグローリー(C.ルメール)に捕まってしまったが、ミッキーグローリーの中身は1分32秒1=「59秒9-上がり32秒2」であり、高速の上がり「32秒2」はNo.2。直線約660mのレースに徹した思い切りの良さと、秘めるスケールが勝利につながった。直線1000mとほとんど同じ中身の、直線約660mだった。この馬は大目標のマイルチャンピオンS(京都)にも合う。

重賞レース回顧

関屋記念を制したミッキーグローリー(撮影:下野雄規)


 1400mのスワンS(18年)をコンビで勝っているロードクエスト(M.デムーロ)は、今回はさらに後方からミッキーグローリーをマークするような位置で大逆転狙い。上がり最速の31秒9で突っ込んでいる。届かなかったが、動いたら止まるからやむをえない。

 先導した17着のマイネルアウラート以外、2番手以降はここまで緩い流れになると、思い切って早めにスパートして出るか、ルメールやデムーロのように腹をくくって直線だけの勝負に徹するか、そのどちらかしかなく、なまじ中途半端は入着こそあっても勝ちはないという難しいレースの典型だったかもしれない。

 好位から中団に位置したサラキア(父ディープインパクト)、ロシュフォール(父キングカメハメハ)、エントシャイデン(父ディープインパクト)などは、いくらも負けていないから、ほかの競馬場なら正解のそつのないレース運びになるが、新潟のスローの直線勝負では秘めるプラスαを引き出せないことがある。

 今回の直線は「11秒8-10秒8-11秒5」。ここでハロン10秒台を連続させないと、善戦はできても勝ち負けは至難。ここで一転の上昇も望めたから仕方がないが、他を圧する爆発力に自信がなかったならもっと強気のスパートをかけても良かったかもしれない。

 ケイデンスコール(父ロードカナロア)、ハーレムライン(父マンハッタンカフェ)は、まだ上がり32秒台で伸びる鋭さがなかった。とくにケイデンスコールは3歳馬らしからぬ落ち着いた気配だったが、32秒台を叩き出すには身体の完成度が低かった。

 たちまちこういう特殊なレースでも通用するようになるはずだが、スローの関屋記念1600mは一見、(数字上は)シャープな鋭さ優先のように映って、長い新潟の直線は忍耐力の勝負に近い。

 直前の札幌の「エルムS」。快勝した5歳モズアトラクション(父ジャングルポケット)は、これはもう文句なしだが、負けて強かったのは6着の4歳タイムフライヤー(父ハーツクライ)だった。初ダートで、おそらくダート向きの身体に変える途中の印象も残ったなか、前半1000m通過58秒5の猛ペースを離れず強気に追走し、4コーナーを回って残り100mまで先頭に並んでいた。

 1996年の年度代表馬サクラローレルとイトコになる母タイムトラベリング(父ブライアンズタイム)は、ダート重賞を9勝もしたタイムパラドックス(全16勝)の全妹。これからダートのチャンピオン級に育つのではないかと思わせた。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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