スマートフォン版へ

「タタソールズ・オクトーバー1歳馬セール・ブック1」の上場馬が発表

  • 2019年08月14日(水) 12時00分

世界規模のプレミア・マーケット、今年も注目馬が目白押し


 10月8日から10日まで、イギリスのニューマーケットで開催される「タタソールズ・オクトーバー1歳馬セール・ブック1」の上場馬が発表になった。

 タタソールズ・オクトーバーと言えば、ヨーロッパでも選りすぐりの良血馬が上場されるプレミア・マーケットで、ヨーロッパ内はもちろんのこと、アメリカ、アジア、中東、オーストラリアからもトップバイヤーたちが参集する、世界規模のプレミア・マーケットである。

 セール出身馬は今年も各国で大活躍を見せている。例えば、6月のロイヤルアスコットでG1キングズスタンドS(芝5F)とG1ダイヤモンドジュビリーS(芝6F)のダブル制覇という歴史的快挙を成し遂げたブルーポイント(牡5、父シャマーダル)は、15年の当セールにて20万ギニー(約2788万円)で購買された馬だった。

 今年の3歳世代では、G1愛二千ギニー(芝8F)を制したフェニックスオヴスペイン(父ロペドヴェガ)が、17頭の当セールで22万ギニー(約3050万円)、G1ジュライC(芝6F)を制したテンソヴリンズ(牡3、父ノーネイネヴァー)が20万ギニー(約2787万円)、G1パリ大賞(芝2400m)を制したジャパン(牡3、父ガリレオ)が130万ギニー(約1億8120万円)で購買されている。

 更に、豪州で今年4月にG1シドニーC(芝3200m)を制したシュラオー(セン7、父シーザスターズ)も、14年の当セールにて17万5千ギニー(約2440万円)で購買された馬であった。

 購買価格を見ると、ジャパン1頭が飛びぬけて高いが、他は日本円にして2000万円〜3000万円というお値打ち価格でG1勝ち馬たちは購買されている。タタソールズ・オクトーバーは「高い」という印象もお持ちの方もいるようだが、むしろ、リーズナブルな価格で一級品が入手できるマーケットとなっている。

 しかも、イギリスのEU離脱問題がこじれている影響で、現在はイギリスの通貨であるポンドが売られて安くなっているのだ。日本円との相場で言えば、今年3月半ばの段階では、1ポンド=148円だったのが、8月に入ると1ポンド=130円を割り込むことも珍しくなくなっている。すなわち、イギリスで今お買い物をすると、5か月前より12〜13%は安く買えるわけで、日本を含めた海外のバイヤーにとっては、英国で馬を買う絶好のチャンスが訪れている。

「タタソールズ・オクトーバー1歳馬セール・ブック1」の今年のカタログ記載馬は、前年より33頭多い552頭となった。

 品揃えの良さは相変わらずで、兄か姉が重賞/準重賞の勝ち馬という血統背景を持つ馬を数えると、なんと243頭にものぼる。すなわち、上場馬の半分近くが重賞/準重賞の弟か妹になるのだ。母がG1勝ち馬という血統背景を持った馬が21頭。そして、兄か姉がG1勝ち馬という馬が、59頭も含まれている。

 前述した、ロイヤルアスコットの短距離G1連覇のブルーポイントの半妹にあたる上場番号11番の牝馬(父インヴィンシブルスピリット)、同じく前述した今年のG1ジュライC勝ち馬テンソヴリンズの全妹にあたる上場番号19番の牝馬(父ノーネイネヴァー)、今年のG1英二千ギニー(芝8F)勝ち馬マグナグレシアの半弟にあたる上場番号208番の牡馬(父シユーニ)、G1コモンウェルスC(芝6F)やG1モーリスドゲスト賞(芝1300m)を勝ったアドヴァタイズの半弟にあたる上場番号301番の牡馬(父リーザルフォース)などは、兄姉の快挙がフレッシュな記憶として残っているだけに、バイヤーたちのより熱い視線を集めることになりそうだ。

 日本の競馬ファンの目で見て非常に興味深いのは、セール最終日の10日(木曜日)に上場番号414番として登場する、母ラヴアンドバブルスの牝馬(父フランケル)である。母馬の名をご覧になって既にピンと来ている方も多いと思うが、本馬は12年の日本ダービー馬ディープブリランテの半妹にあたるのである。父が日本の英雄ディープインパクトから世界の怪物フランケルに変わって、いったいどんな仔が生まれているのか、筆者も実馬を見るのを楽しみにしている。

 今年の春もG1英オークス(芝12F6F)勝ち馬アナパーナやG1ファルマスS(芝8F)勝ち馬ヴェレイシャスらを送り出し、種牡馬としての箔をますますつけたフランケルは、ディープブリランテの半妹を含めて、実に40頭もの産駒をタタソールズ・オクトーバー・ブック1に送り込んでいる。中でも、G1英ダービー(芝12F6y)やG1凱旋門賞(芝2400m)を制したゴールデンホーンの半弟にあたる上場番号288番の牡馬(父フランケル)は、馬が良ければ最高価格馬の候補となろう。

 この他、種牡馬別に見ると、ドゥバウィが29頭、ガリレオが23頭いるから、フランケルを含めたいわゆる「御三家」種牡馬の産駒だけで92頭を数えることになる。

 さらに、初年度産駒からG1仏二千ギニー(芝1600m)勝ち馬パーシアンキングが出て人気急上昇中の若手種牡馬キングマンの産駒が41頭、ヨーロッパ種牡馬リーディング上位の常連となっているダークエンジェルが30頭、前述した今年のG1愛二千ギニー勝ち馬フェニックオヴスペインの父ロペドヴェガの産駒が25頭、欧州2歳リーディング上位の常連であるコーディアックの産駒が23頭、今年の2歳が初年度産駒となる期待の若手種牡馬ムハーラーの産駒が15頭など、目移りするようなラインナップとなっている。

 日本の競馬ファンの皆様も、ヨーロッパのプレミア・マーケットの動向に、ぜひご注目いただきたい。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング