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【札幌記念】凱旋門賞挑戦への展望が固まる非常に望ましい勝利

  • 2019年08月19日(月) 18時00分

苦しい形から器用な立ち回り、洋芝にも明らかに適性あり


 この秋の主役を担って欲しい4歳牡馬フィエールマン(父ディープインパクト)、ブラストワンピース(父ハービンジャー)、ワグネリアン(父ディープインパクト)の注目の対決は、今回はブラストワンピースに軍配が上がった。

 とくに凱旋門賞挑戦を展望する2頭(フィエールマン、ブラストワンピース)には、手応えを確かなものにしてこの先に進んで欲しいところがあり、「この札幌記念の中身しだいで…」のトーンも残っていた3番人気ブラストワンピースの勝利は、これにより展望が固まる非常に望ましい結果だった。

 また、昨年の札幌記念馬サングレーザー(父ディープインパクト)が、昨年とほぼ同じような内容の少差2着なので、結果としてこの秋を展望するときの格好の能力の目安になるレースでもあった。昨年のサングレーザーは、このあと秋の天皇賞2000mを1分57秒0で2着している。

 先行馬が少なく牝馬エイシンティンクルが先導した流れは、前後半「59秒9-60秒2(レース上がり36秒1)」=2分00秒1。ブラストワンピース、フィエールマンの進んだ位置は前半1000m通過(推定)61秒5前後か。総合力というより、後半の加速力、切れ味が問われたレースなので、2頭にはこの内容が凱旋門賞に結び着くわけではないが、それでもインから伸びて勝ち切ったブラストワンピースは見事。

 コーナーワークに死角をみせるどころか、苦しい形で勝ったから素晴らしい。もちろん、凱旋門賞を勝ち負けするには、もっと圧倒的な迫力を示す必要があったが、洋芝は明らかに合っていた。

重賞レース回顧

今回の勝利で凱旋門賞挑戦が決まったブラストワンピース(撮影:高橋正和)


 Kジョージ6世&QエリザベスSをレコードで独走した父ハービンジャーは、凱旋門賞は不出走でも、その父ダンシリはレイルリンク(ディープインパクトを差した凱旋門賞馬)を送っている。また、ハービンジャーの母の父ベーリングは、ダンシングブレーヴの凱旋門賞2着馬。その直系祖父は凱旋門賞独走のシーバード。さらに、母ツルマルワンピースの牝系はUSA育ちでも、凱旋門賞には必須のリボーの血が入っている。ブラストワンピースは凱旋門賞に合うことだろう。

 対するフィエールマンもいくらも負けたわけではないから、悲観することはない。ただ、身体つきにもレース内容にも、これなら凱旋門賞で…という迫力はもう一歩だった印象はある。父ディープインパクトなら楽勝していたレースだろう。菊花賞、天皇賞(春)はレースレベルに問題があり、それを振り払うのが4歳の秋を迎えるフィエールマンの1番大きな課題だったから、距離不足としても、今回の3着には物足りなさは残った。もっと不器用と思えたブラストワンピースが快勝したからなおさらだった。

 でも、心配しても仕方がない。フィエールマンの母方はフランス色そのもの。母リュヌドールは仏で3勝。その父グリーンチューンも、さらにその父グリーンダンサー(母の父ヴァルドロワールは凱旋門賞3着)も仏2000ギニー馬で、その父は凱旋門賞を2着に負けたことが衝撃だったニジンスキー【11-2-0-0】。

 フィエールマンの祖母リュートドールの父方祖父は、輸入種牡馬ラインゴールド(1973年の凱旋門賞馬)であり、3代母ヴィオレダムールの父リュティエ(輸入種牡馬ノーリュート、ダンディルートの父)は、凱旋門賞9着止まりだったが、その産駒サガスは凱旋門賞【1-1-0-1】。2着は1984年の1位入線降着だった。フィエールマンは父ディープインパクトよりフランス競馬に合う可能性がある。

 ワグネリアンは、適クラの印象があって2番人気に支持されたが、理想のレース運びで4着止まり。ただし、底力負けではなく落鉄の不利があったという。サングレーザーとの比較から、天皇賞(秋)に向けて視界良好だろう。

 今回は仕上がり一歩とみられたペルシアンナイト(父ハービンジャー)も、なだめて進むほどだったからさすがGI馬。差のない5着(0秒3差)なら、この秋の展望は明るくなった。

 6歳牝馬クロコスミア(父ステイゴールド)は、これで休養明け【0-1-0-7】。これまで通りなら、真価発揮は叩き3戦目になるのだろう。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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