スマートフォン版へ

記憶にあるのは強くて元気なディープの姿(津田照之)

  • 2019年08月20日(火) 18時00分

血を受け継いだキズナ産駒から注目馬がデビュー


 一昨年の8月、種牡馬を見学するため、社台スタリオンステーションを訪問。牧場スタッフの計らいで数多くの馬を馬房から出していただき、立ち姿、歩く姿を順々に観察。それぞれの特徴についても詳しく教えてもらった。

 その中の一頭にディープインパクト(当時15歳)の姿があった。馬体は現役時代と同様、他の馬と比べると少し小柄で、まったく太め感のない体付き。しかも筋肉が緩んだ感じもなく、「研ぎ澄まされている」という表現がピタリとはまるほどだった。あまりのシャープさに「今週の札幌競馬に連れて行って、午前中のレース(下級条件)に使ったら、たぶん勝てますよ」と皆が冗談を言っていたほど元気だった。

 その後、牧柵の向こう側にある別の敷地(距離で言えば50メートルくらい先)に牝馬が数頭歩いていた。それを見たディープはしばらくジッと見つめた後、盛んに前足を上げて立ち上がる姿を見せ、ちょっとした興奮状態に陥った。種馬としての習性か、初めて見る牝馬にかなり興味を示しているようだった。結局、ディープのテンションが上がったため、外でのツーショット写真撮影は中止になり、馬房の中で横並びの写真を撮らせていただいた。

 いずれにしろ、久しぶりにあったディープは体そのものが若々しく、精神的にも活気があり、まだまだ種牡馬生活を続けられそうな雰囲気だった。振り返れば、引退レースとなった有馬記念での圧勝劇、そして種牡馬になってから見た若々しい姿。少なくとも私の記憶の中には「強くて元気」なディープしか存在しない。今後はその血を受け継いだ産駒に期待したい。

 そんなディープ産駒の中でも、新種牡馬キズナは注目の存在だろう。これまで中央で36頭が出走。そのうち6頭が勝ち上がっている。もちろんこの数字も優秀なのだが、ビアンフェ、ルーチェデラヴィタの2頭はすでに2勝をマーク。それぞれ函館2歳S、コスモス賞を制している。勝ち上がり率が高いだけではなく、それ以上のパフォーマンスを見せている馬が出現している点も見逃せない。

 そんな中、今週の札幌競馬でも有力キズナ産駒がデビューする。

 宮本厩舎のヴォルスト(牡、母ナスケンアイリス)はゴルトマイスター(5戦3勝、現3勝クラス)の半弟。「まだ子供っぽさは残るけど、ひと追い毎に動きは良化。1週前にしっかりと追ったことで、さらに良くなってくると思う。スタートが速く、ポテンシャルの高さを感じる」とは吉永助手。兄が砂で活躍しているため、初戦はダートへ。8月24日のダート1700メートル戦に出走。馬体重は480キロほど。鞍上はルメール騎手を予定。

 もう一頭は武英厩舎のサウンドプリズム(牡、母サウンドリアーナ)。こちらは母がファンタジーSの勝ち馬で、ユニコーンSでも2着している。「函館でゲート試験に合格。その後、一旦、放牧に出して、再入厩。馬体は小柄(420キロほど)だが、バネがあっていい動きをしている。初戦から勝負になると思う」とは武英師。デビューは8月25日の芝1200メートル戦。鞍上は松田騎手を予定。

 条件の違うレースに出走してくる2頭。キズナ産駒の適性を探る意味でも注目したい。

須田鷹雄+取材班が赤本紹介馬の近況や有力馬の最新情報、取材こぼれ話などを披露します!

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング