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【ナンソープS展望】ヒートアップする新旧スピード王対決に注目

  • 2019年08月21日(水) 12時00分

ヨークを舞台とした伝統の「イボア開催」は好カード目白押し!


 いよいよ日本時間の水曜日夜、シュヴァルグラン(牡7、父ハーツクライ)が出走するG1インターナショナルS(芝10F56y)が発走の時を迎えるが、24日(土曜日)まで続くヨーク競馬場を舞台とした伝統の「イボア開催」は、今後も好カードが目白押しだ。エネイブル vs マジカルが実現する22日(木曜日)のG1ヨークシャーオークス(芝11F188y)も、当然のことながら見逃せない一戦だが、ここでは23日(金曜日)のメイン競走として行われるG1ナンソープS(芝5F)を展望していきたい。

 欧州のスプリント戦に日本調教馬が参戦するケースは、近年ではほとんどなく、したがって日本の競馬ファンの皆様には馴染みの薄い路線となっているが、実は現場はヒートアップしている。なかでも、「バターシュ vs テンソヴリンズ」という新旧スピード王対決が見られる今年のG1ナンソープSは、インターナショナルSやヨークシャーオークスに匹敵する話題を集めている。

 5Fのスペシャリストとして、既に3シーズンにわたって戦線の最前線に立ち続けているのが、チャーリー・ヒルズ厩舎のバターシュ(セン5、父ダークエンジェル)だ。

 G2シャンパンS(芝7F)勝ち馬エトラーラの甥にあたり、タタソールズ10月1歳セールのブック2に上場されたところ、エトラーラも所有していたハムダン殿下のシャドウェルに20万ギニー(当時のレートで約3940万円)で購買されたのがバターシュだ。

 2歳5月にバースのノーヴィス(芝5F10y)でデビューし、ここを4馬身差で勝ち上がった後、続いて出走したロイヤルアスコットのLRウィンンザーキャッスルS(芝5F)で12着に大敗すると、その10日後には早くも去勢されてセン馬となったから、馴致の段階から何らかの問題を抱えていたものと推察される。

 2歳時はその後3戦し、G3コーンウォーリスS(芝5F)3着の実績をあげたものの、未勝利に終わっている。

 本領を発揮するようになったのは3歳になってからで、LRスカーリーS(芝5F)、G3コーラルチャージ(芝5F)、G2キングジョージS(芝5F)と3連勝。この年のG1ナンソープS(芝5F)では4着に敗れたものの、続いて出走したG1アベイユドロンシャン賞(芝1000m)を4馬身差で快勝して初めてのG1を奪取。この時のパフォーマンスでレイティング123を獲得して、17年のワールドランキング・スプリント部門で世界第2位の評価を獲得することになった。

 4歳時は5戦し、G2テンプルS(芝5F)、G2キングジョージS(芝5F)を制したものの、G1キングズスタンドS(芝5F)ではプルーポイントの2着に敗退。G1ナンソープSもG1アベイユドロンシャン賞も4着に終り、このシーズンはG1を取り損なうことになった。

 こうして迎えた今季、初戦のG2テンプルS(芝5F)を快勝後、ロイヤルアスコットのG1キングズスタンドS(芝5F)はまたもブルーポイントの2着に惜敗。しかし前走、グロリアスグッドウッドのG2キングジョージS(芝5F)はしっかりと勝利し、このレースの3連覇を達成するとともに、自身7度目の重賞制覇を果たしている。

 一方、この路線の新興勢力として、ここへ来ての台頭が著しいのが、エイダン・オブライエン厩舎のテンソヴリンズ(牡3、父ノーネイネヴァー)だ。

 G3ペネロープ賞(芝2100m)4着馬シーキングソラスの4番仔で、タタソールズ10月1歳セールのブック2に上場されたところ、奇しくもバターシュと全く同額の20万ギニー(当時のレートで約3198万円)でクールモアスタッドに購買されたのがテンソヴリンズだ。

 2歳の8月にカラのメイドン(芝6F)でデビューし、ここを7馬身差で快勝して緒戦勝ちを飾ると、続くカラのG3ラウンドタワーS(芝6F)、ニューマーケットのG1ミドルパークS(芝6F)をいずれも白星で通過。3戦無敗の戦績で2歳シーズンを終えた同馬は、クラシックの有力候補の1頭として今シーズンを迎えた。

 3歳緒戦となったのがニューマーケットを舞台とした3冠初戦のG1二千ギニー(芝8F)で、テンソヴリンズはオッズ3.25倍の1番人気に推されたが、ここはマグナグレシアの5着に敗退。この段階で、同馬の最適距離は6Fと判断した陣営は、次走にロイヤルアスコットのG1コモンウェルスS(芝6F)を選択したが、ここでもオッズ2倍の1番人気に応えることが出来ず、アドヴァタイズの4着に敗れている。

 しかし、一変した動きを見せたのが7月13日にニューマーケットのジュライコースで行われたG1ジュライC(芝6F)で、G1コモンウェルスSでは2.1/4馬身差をつけられて後塵を拝したアドヴァタイズに、逆に2.1/4馬身の差をつけて優勝。2度目のG1制覇を果たしている。
 
 スプリンターとして完成の域に近づいたと見た陣営は、究極のスピードを要求される5F戦のここに、テンソヴリンズをぶつけてきたのである。

 ブックメーカー各社の単勝オッズは、テンソヴリンズが2.5倍〜2.75倍、バターシュが2.75倍〜3.25倍と、テンソヴリンズがわずかに前売りマーケットをリードしている。

 ヨークを舞台とした疾風の5F戦に、日本の競馬ファンの皆様もぜひご注目をいただきたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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