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【札幌2歳S回顧】新種牡馬ゴールドシップ産駒が1着、2着独占!

  • 2019年09月02日(月) 18時00分

父ゴールドシップよりは、祖父ステイゴールドを思わせた/札幌2歳S


 新種牡馬ゴールドシップ(その父ステイゴールド)産駒の「ワン、ツー」が決まった。またまた、ちょっと不思議な種牡馬の誕生だった。このレースが行われた時点で(8月31日終了現在)、ゴールドシップ産駒は全国で17頭(地方除く)がデビューし、勝ち上がっていたのはたった「2頭」だけ。その2頭がワン、ツーを達成したのである。注目の出世レースで新種牡馬の1着、2着独占は大変な快挙であると同時に、勝ったブラックホールは5番人気、2着のサトノゴールドは3番人気。衆目一致の人気馬でもなかった。

 同じステイゴールドの後継種牡馬オルフェーヴルと似たムードの出発だった。オルフェーヴルの初年度産駒も最初は勝ち上がり率が低く、札幌2歳S(2017年)の時点ではごく少数しか勝ち上がっていなかったが、ロックディスタウンがいきなりこのレースを勝っている。

 最初の勝ち上がり率は高くなくとも、ゴールドシップも、オルフェーヴルのエポカドーロ(皐月賞馬)や、ラッキーライラック(阪神JF)のような産駒を送るのかもしれない。平均した評価は高くなくとも、中に侮りがたい逸材が含まれる種牡馬として……。これは初期のステイゴールドの特徴そのものでもある。

 勝ったブラックホールは、420キロ前後の小柄馬だが、パドックでもレースでも、馬体重より二回りくらい大きく映った。動きが大きいからだった。ゴールドシップというより、祖父ステイゴールドを思わせた。まだ3戦2勝、大物ではないかもしれない。だが、予定外の速い時計で追い切って、当日はケロリの好気配。体質そのものはステイゴールド系らしくタフで、丈夫だろう。母方も成長力にあふれるスカーレットインク(ダイワメジャー、同スカーレットなど)の牝系出身。終始気合をつけながらの追走で、それで最後まで伸び切っての完勝だから、今後も侮れない。

重賞レース回顧

最後まで伸び切って完勝したブラックホール(c)netkeiba.com


 2着サトノゴールドは新馬戦もそうだったが、若いというよりまだまだ幼い。ダッシュ一歩で最後方追走。それでこれだけ走るのだから、ブラックホールとはまた違ったタイプに成長するだろう。父と同じ芦毛馬。母も芦毛。芦毛を伝える遺伝子の結合型(産駒を全部芦毛にしたゼダーン、メンデス、ラナークなどと同様)の可能性を秘める配合であり、ぜひ、種牡馬になれるくらいに出世して欲しい。

 前回レコードで圧勝したゴルコンダ(父ヴィクトワールピサ)は、ごつい印象はなくスマートにも映る好馬体だが、不器用なタイプなのだろう。自分の形になるといいが、まだ後手を踏んでもまれたりすると、もろいかもしれない。落鉄の不利もあったとされるが、今回は能力を発揮できていない。広いコースで再注目したい。

 同厩のダーリントンホール(父New Approach)の方が器用な脚を使える渋いタイプだろう。内枠で馬群をさばけなかった不利(ロス)があまりに痛かった。これからのレース内容に注目したい。成長するのは間違いない。

 時計面では目立たないレースだったが、のちの活躍馬を送るレースらしく、公営のヨハネスボーイ(惜しい5着)を含め、このあとがさまざまな点で楽しみなレースだった。

水準を上回る1分57秒5の走破タイム、頼もしいエース級に/新潟記念


 夏のハンデ戦なので、この結果をストレートに秋の重賞路線に結び着けて展望することはできないが、最後にマッチレースに持ち込んだのは、4歳のユーキャンスマイル(父キングカメハメハ)と、4歳ジナンボー(父ディープインパクト)。

 水準を上回る1分57秒5の走破タイムの中身は、「前後半58秒6-58秒9」。紛れの生じにくい総合力を問われるバランスだったから、秋のビッグレースに向けての展望が広がることになった。

 最後に競り勝ったユーキャンスマイルは、昨秋の菊花賞3着馬。近年の菊花賞3000mはスタミナ勝負というより、古馬になっての可能性、総合力の有無を問われる部分が大きく、この秋注目のフィエールマンと0秒2差の能力を改めて示した点に価値がある。

 ここまで2000mに勝ち鞍はなかったが、2200mに2分10秒9(上がり34秒2)の快勝があり、距離は守備範囲だった。3000mも、3400mもクリアしている強みは大きく、長距離もこなせる頼もしいエース級に加わったとしていい。

重賞レース回顧

ゴール前で激しい叩き合いを繰り広げたユーキャンスマイルとジナンボー(撮影:下野雄規)


 2着ジナンボーは、3冠牝馬アパパネ(父キングカメハメハ)に、父ディープインパクト。期待の注目馬がいま本物になってくれたから、さらに上昇カーブを描くとき、この秋のビッグレースに欠くことのできない存在になるだろう。今回は前回のジューンS(3勝クラス)とは違って、すんなり行けたわけではない。内から抜けたユーキャンスマイルを最後にもう一回脚を使ってクビ差まで追い詰めている。平均バランスになる2000mがもっとも合うと思えた。

 1番人気で10着にとどまったのも4歳レイエンダ(父キングカメハメハ)だった。パドックの気配などこれ以上なしの好仕上がりと見えたが、今回はまったくいいところなしの凡走。これで通算【4-1-0-4】となってしまった。自在型の差し馬の成績というより、流れ(展開)に注文のつく逃げタイプのような成績である。不満足な状態で出走したことなどない馬なので、思われるよりはるかに自身の内面が繊細な馬なのだろう。

 だからといって、評価を下げていい馬ではない。陣営にとっても、みんなにとっても難しい存在となったが、消耗するほどレースをしていない。まだ4歳夏。たくましく成長して、やがて強敵相手のビッグレースで快走する馬になって欲しい。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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