スマートフォン版へ

難しい3歳秋の重賞日程

  • 2019年09月10日(火) 18時00分

有力3歳馬の出走を促す意図が、逆に厳しいローテを強いる状況に


 3シーズン目を迎えた地方競馬の『3歳秋のチャンピオンシップ』。ここのところの地方競馬の馬券発売が好調なこともあり、1年目から2年目、さらに2年目から3年目では、大幅に賞金アップしたレースがいくつもあり、必ずしもファイナルのダービーグランプリを意識せずとも、各レースごとに盛り上がりを見せている。

 また昨年まではホッカイドウ競馬に対象レースが設定されてなかったが、今年から王冠賞が加わったのはよかった。

 しかし今年、当初から気になっていたのが、開催日程の大幅な変更だ。ファイナルのダービーグランプリが時期を大幅に繰り上げたことにより、シリーズ全体で日程が繰り上がった。

 昨年、実際にダービーグランプリが実施されたのは12月10日だったが、これは結局根本的な解決を見なかった禁止薬物問題で開催休止があって延期されたため。当初の予定では11月18日だった。近年、11月の第3日曜日に設定されていたダービーグランプリが、今年は10月6日。いきなり6週も繰り上げられた。

 この日程変更は、11月初旬に行われるJBCに地方の有力3歳馬の出走を促すという意図があったようだ。昨年はJBCのいずれかのレースに出走した地方の3歳馬がダービーグランプリを勝つと200万円のボーナスが設定されていたが、今年は順序が逆になり、今年新設された『JBC競走出走奨励金』のひとつとして、ダービーグランプリ1着馬がJBCいずれかのレースに出走した場合、馬主に200万円が支給されることになった。

 もうひとつ、11月の水沢では日没の関係で15時台までしかレースができないが、昨年照明設備が完成した盛岡なら、秋でも17時以降にもレースが組めるようになったという事情もあっただろう。中央競馬終了後のほうが確実に馬券の売上げが期待できる。

 それで3歳秋のチャンピオンシップは、以下のような日程になった(左が今年、右が昨年の実施日)。

 門別・王冠賞 8/1(新規)
 大井・黒潮盃 8/14 ← 8/15
 笠松・岐阜金賞 8/29 ← 10/18
 高知・黒潮菊花賞 9/1 ← 10/14
 佐賀・ロータスクラウン賞 9/1 ← 10/1
 名古屋・秋の鞍 9/3 ← 9/26
 川崎・戸塚記念 9/4 ← 9/12
 園田・園田オータムトロフィー 9/5 ← 9/13
 金沢・サラブレッド大賞典 9/8 ← 9/2
 盛岡・不来方賞 9/16 ← 10/21
 西日本ダービー 9/16(高知) ← 10/23(金沢)
 ダービーグランプリ 10/6(盛岡) ← 11/18(12/10に延期して実施・水沢)

 8月を“3歳秋の…”というのはどうかとも思うが、秋の大一番へ向けてということであれば、まあわからなくもない。

 目立つのは、岐阜金賞、黒潮菊花賞、ロータスクラウン賞という、いずれも西日本のレースが10月から1カ月以上も繰り上がったこと。これは西日本ダービーへというローテーションを考えると仕方ないが、それにしても岐阜金賞からでも中17日。今年西日本ダービーの開催場となった高知では、黒潮菊花賞からほぼ中1週。昨年より1週遅らせたサラブレッド大賞典からは中7日で、使おうと思えばいわゆる連闘になる。なかなかに厳しい日程だ。

 それゆえ、西日本ダービーに出走予定となっている馬の中には、地元戦と使い分ける陣営が目立った。高知の黒潮皐月賞を勝ったアルネゴーは、黒潮菊花賞を使わず西日本ダービー狙い。名古屋のアンタエウスは、岐阜金賞にも秋の鞍も使わず、東海ダービー(6/11・9着)からの直行。シリーズには入っていない金沢・MRO金賞(7/30)を勝った兵庫のテツ、同2着笠松のフォアフロントは、地元戦を使わずに西日本ダービーとなる。

 さらに東海地区では、昨年は秋の鞍から岐阜金賞まで中2週あったので両レースを狙うことができたが、今年は順序が逆になって、なんと中4日。名古屋、笠松の有力3歳馬の陣営からは、「岐阜金賞か秋の鞍か、どちらかしか使えないし、西日本ダービーで高知まで遠征するのも難しい」という声が聞かれた。

 西日本ダービーからダービーグランプリへはほぼ中2週と、西日本地区の馬が盛岡まで遠征するにはこれまたなかなかに厳しいローテーション。一方で、ダービーグランプリからJBCへはほぼ中3週という余裕がある。

 岩手競馬がダービーグランプリを10月の第1日曜日にした理由はいくつかあったのだろうが、それによって西日本地区のローテーションがかなり窮屈なものになっているのは確かだ。

 ダービーグランプリを10月の第2日曜日にはできなかっただろうか。日曜日にダービーグランプリ、体育の日の月曜日にはマイルチャンピオンシップ南部杯で、岩手競馬を盛り上げる3連休にするということはできると思う。

 そもそも地区ごとに重賞体系のある地方競馬で、全国を通して日程調整するというのはかなり困難なことだとは思うが、西日本ダービー、ダービーグランプリは、来年以降、1週ずつ繰り下げることを検討されてもいいのではないか。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング