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種牡馬ハーツクライのポテンシャルの高さを再認識(村本浩平)

  • 2019年09月17日(火) 18時00分

種牡馬成績ではディープに水をあけられているが…


 今年の「赤本」における、「テーマ別」オススメ10頭コーナーの中で、「ノーザンファーム生産馬&育成馬限定!」という非常に有利な縛りで原稿を書かせてもらった自分。そのコラムの中で「ハーツクライ産駒の中に大物が揃っている」と書いただけでなく、文末には、

「北海道村本ファイターズのV2(たぶん)を脅かす存在、それはここで名前を出せなかったハーツクライ産駒かもしれません」

 との言葉でまとめさせてもらいました(今から赤本の160ページをチェックだ!)。

 と、その言葉が現実となったかのように、ノーザンファーム生産、育成のハーツクライ産駒の大物が頭角を現しつつあります。その馬の名前とはマイラプソディ。メイクデビュー中京では、スローの競馬を上がり34秒0の末脚で差しきると、5頭立てで行われた野路菊Sでも2着に5馬身差を付ける圧勝。ここでも上がり3ハロンは33秒4の脚を使っており、「瞬発力に長けたハーツクライ産駒」といった印象もあります。

 実は文末の文章を書いた際に、マイラプソディの存在が頭にあったのは事実でした。というよりも、ハーツクライ産駒の話を牧場スタッフとした際に、

「動きそうなハーツクライ産駒がいますよ」

 とその評判を聞いていたのです。ただ、合同撮影会には姿を見せず、そこまで深い取材もできなかったので、オススメ10頭に入れられなかったということがありました。

「そんなの後出しジャンケンじゃん!」

 と思ったそこのあなた。まさにその通りです(_ _ )/ハンセイ。赤本では巻末の方に「注目内国産馬」のコーナーがあり、須田さん、浅野さん、本誌担当のどなたか(笑)が印を打っているのですが、そこで「印をお願いします!」(表の上では無印)としておけば…。もしくは赤本コンテンツの「テガミ」の中で取り上げた方が良かったのでは…などなど後悔も残ります。

 しかしながら、マイラプソディの活躍を目にする度に、種牡馬ハーツクライのポテンシャルの高さを改めて感じずにはいられません。ここ数年はディープインパクト、キングカメハメハに続くリーディングサイアーの上位にランキングされ、日本ダービーを制したワンアンドオンリー、オークス馬となったヌーヴォレコルトなクラシック戦線での活躍馬も数多く輩出。にもかかわらず、現役時代のライバルでもあったディープインパクトに、種牡馬成績で大きくその差を付けられている理由は、

「春のクラシックシーズン期間内における、産駒の勝ち上がりの違い」

 なのかもしれません。種牡馬ディープインパクトの凄さは、その産駒成績がまざまざと証明していますが、その中身を紐解くと、

「マイル適性の高さと2歳戦における勝ち上がりの高さ」

 も兼ね備えていることが分かります。ディープインパクトのマイル適性の高さと、2歳戦の強さにの高さについては、「POGの達人コーナー」の6月25日に掲載させてもらった筆者のコラム(ディープインパクト後継種牡馬の特性)でも似たようなことを書いています。一方、ハーツクライは2歳サイアーランキングでは総合サイアーランキングほどの安定感は無く、現3歳世代となる2018年の総合2歳サイアーランキングでは、なんと11位となっています。

 やはりそれは、ハーツクライ産駒とディープインパクト産駒のマイル成績の違いが、マイルまでのレースが多い2歳戦の成績の違いとして現れているとも言えるでしょう。その一方で、マイルよりも距離が長くなっていくと、ハーツクライの産駒たちは一気に台頭を始めていきます。それは母父に入ったトニービンの影響である「長くいい脚を使える」という適性が、産駒にも反映されているからとも言えます。

 そう思うと、ハーツクライの産駒こそが、ディープインパクト産駒よりもクラシック向きであることは自明の理なのでしょうが、しかしながら、現在の日本ダービーとオークスが、

「クラシックディスタンスの適性ではなく、その時点において、同世代の中で最も東京競馬場の芝2400Mを速く走れる馬」

 が勝てるレースとなっている以上、ハーツクライ産駒にとって分が悪いのも事実です。しかしながら、この時期の2歳戦から能力の違いを見せつけ、しかも卓越した瞬発力を持っているマイラプソディならば、ディープインパクト産駒たちがひしめき合うその争いの中に割って入るどころか、突き抜けてしまうのではと期待も膨らみます。

 ちなみに自分がオススメ10頭で入れた、唯一のハーツクライ産駒であるシルヴェリオは、メイクデビュー阪神で4着に敗れているものの、牧場での評価の高さからしても、必ずや巻き返しを図ってくれるはず。その他にも楽しみな馬が揃った、現2歳世代のハーツクライ産駒たちが、来年のクラシックで上位独占を果たせば、これまで以上に配合される繁殖牝馬のレベルも上がってくるに違いありません。

 ひょっとしたらハーツクライ産駒の最高傑作と言えるような馬は、これから出てくるのでは…との想像も膨らんできます。今年で18歳となったハーツクライですが、1年でも長く、そして元気に種牡馬生活を送ってもらいたいと願うばかりです。

須田鷹雄+取材班が赤本紹介馬の近況や有力馬の最新情報、取材こぼれ話などを披露します!

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