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【セントライト記念回顧】日本ダービー2ケタ着順のワン、ツーという珍しい結果

  • 2019年09月17日(火) 18時00分

意識的に先行抜け出しの策が採れた自信は大きい


 日本ダービー15着のリオンリオン(父ルーラーシップ)と、同じく17着サトノルークス(父ディープインパクト)のワン、ツーというきわめて珍しい結果だった。

 リオンリオンの日本ダービーは、若い横山武史騎手で前半1000m通過57秒8という果敢すぎるペース。3番手で追走したサトノルークスも前半1000m通過(推定)59秒台中盤の厳しい流れだったから、あの結果はやむを得ないところがあった。今回は立て直しに成功したと同時に、きついレースの経験がパワーアップの糧となった部分もあるに違いない。スローの連続では強くなれない。

 今回の2200mのレースバランスは、渋馬場で「59秒8-(11秒9)-59秒8」=2分11秒5。紛れの生じる流れではない。完勝したリオンリオンは2400mでも勝っている。これで菊花賞に向けてかなり強気になれる。

重賞レース回顧

完勝したリオンリオンは菊花賞に向けてかなり強気になれる(撮影:下野雄規)


 レース後、横山典弘騎手も手がける松永幹夫調教師も「うなって走っていた」と奇しくも同じ形容のコメントになった。横山典弘騎手は、下級条件のイレこんでいる馬は別にして、気負っている馬でも本馬場に入っていきなり逆方向の1コーナー(中山)に行くことはしない。気負うリオンリオンを懸命になだめてスタンド前から4コーナーに向けて返し馬に入ると、うなる猛獣のようなすごい気迫だった。

 これだと、やはり逃げるしかなく、道中で折り合いをつけるのかと思えたが、好スタートから最初こそハナに立ったものの、外からきた伏兵を行かせ、好位3番手のインでピタリ折り合ってみせた。500万特別→青葉賞の2連勝と違って、意識的に先行抜け出しの策が採れた自信は大きい。

 1998年の菊花賞を、横山典弘騎手(当時30歳)のセイウンスカイは快レコードの3分03秒2で圧勝。日本ダービー馬スペシャルウィークを3馬身半も完封して勝ってみせた。その中身は主導権を握り、前後半の1500mを「1分31秒6-1分31秒6」だった。好タイムの予測される長距離戦は、スローで逃げるのも、飛ばすのも賢明ではないが、教本か、マシーンのような正確なバランスで、まったく同じ前後半時計で乗り切った独走のレコードだった。

 今回は好位で控えたが、本番の3000mではまたリオンリオンと自身のリズムを大切に、再び単騎逃げに持ち込む可能性の方が高い。「日本ダービー2ケタ着順→セントライト記念1着→菊花賞1着」は、2015年のキタサンブラック、1960年キタノオーザ。過去に2例ある。

 2着サトノルークスは、インを通って予定通りの好位差し。絶好調の川田将雅騎手のペース判断にも狂いはなかった。春に2戦連続して大敗した関東圏への遠征でキチンと答えを出したのは、精神面の成長もあるだろう。全姉タッチングスピーチ(京都記念2着)も、全兄ムーヴザワールド(2400mで連勝中)も、距離適性の幅は広い。流れに乗れる脚質から3000mは大丈夫だろう。菊花賞に出走して欲しい。

 3着ザダル(父トーセンラー)は、まだキャリア3戦だけの休み明けとあって、かなりカリカリしていた。陣営の「まだ脚元に不安があるので、ビシビシ追っての出走ではない」のコメント通り、完調にはあと一歩を感じさせた。それを考慮すればこの3着は価値がある。父トーセンラーはセントライト記念2着のあと、オルフェーヴルの菊花賞を3着している。牝系ファミリーはスピード色が濃いが、母の父は万能タイプに近いLemon Drop Kid(その父Kingmambo)。初遠征になる死角はあっても、距離3000mはこなせるだろう。

 菊花賞を展望するニシノデイジー(父ハービンジャー、祖母の父は前出セイウンスカイ)は、一気に突っ込んで5着(上がりは最速の35秒0)。ここまで早めに動いたレースでは結果もう一歩。日本ダービーで控えて(一応は)課題をクリアした経緯があるので、ステップのここでも控えるレースをした結果だった。

 身体つきはたくましくなっていた。しかし、本番の3000mでは今回や日本ダービーのような後方に下げる策は採らず、果敢な戦法がありえる。でないと勝機は乏しくなる。今回の位置取りを本番への死角とする必要はない。

 獲得賞金から菊花賞出走可能なメイショウテンゲン(父ディープインパクト)は、成長したと伝えられたが、細く映った日本ダービー時の454kgよりさらに減ってデビュー以来最少の446kg。数字通り細かった。このあとの回復がカギになる。

 注目したオルフェーヴルの3頭は残念ながら完敗。6着タガノディアマンテも皐月賞と同じ内容の同じ着順で、あまり成長していなかった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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