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【カメラマン痛恨の失敗作】「三冠馬誕生を喜ぶあまり、大外の気配を感じられず」/(2)高橋正和カメラマン 無料公開

  • 2019年09月22日(日) 18時02分
ゴールの瞬間――競馬の最高潮の一瞬を切り取るレース写真。勝負の迫力を表現することこそ、プロのカメラマンの腕の見せ所です。しかし、人気馬が勝つとも限らないのが競馬の難しさ。ファインダーからは見えないノーマークの馬が差し切った……などなど、プロ泣かせのレース展開も多々あります。

そこで今回、4名のカメラマンが週替わりで登場。普段は目にすることのない、痛恨の失敗作をご紹介いただきます。成功写真の陰にある、涙ぐましい努力の欠片たち。競馬の最前線の熱量を、ぜひ感じてください!

【ルール】
ご紹介いただく写真は、下記のテーマに沿った3本
(1) GIレースで失敗してしまった1枚
(2) 秋競馬のレースで失敗してしまった1枚
(3) 逆に、自分だけが撮れた会心の成功作を1枚

【今週登場するのは…】
netkeiba.comで南関東競馬、海外競馬をメインにレース写真を担当している高橋正和カメラマン


(1.GIの失敗作) カゼノコが勝った2014年のジャパンダートダービー(大井)


馬ラエティBOX

【失敗作】ハッピースプリントの三冠の夢見たが…


馬ラエティBOX

【実際のニュースでは】カメラマン仲間にもらったゴール前写真を掲載しました


 写真の失敗。皮算用していたリターンが得られないのだから確かにプロのカメラマンとしては死活問題だし、仕事先に提出できず信頼を失う恐怖などもあり、精神的にもよろしくない。

 しかし、複数の馬が同時にゴール、しかも内外離れてなんて撮れるわけない、なんて言っちゃいけないか。両者譲らない名勝負など勘弁して欲しい、というのが本音でもある。同業者の皆が上手く撮れているのに自分だけなどというと、もうそのまま帰って寝たい。

 さて自身の思い出に残る大ポカというと、今年の日本ダービーがあるが、あまりに鮮明且つ傷が癒えてもおらずリアルなためここでは避け、2014年のジャパンダートダービーを挙げる。

 地方馬ハッピースプリントがトーシンブリザード以来の三冠馬なるかというレースで、直線ソツなく抜け出し圧勝かというところで連写を開始。

 私は三冠馬誕生を喜ぶ一方、大外から来る気配すら感じず、ゴール直後ファインダー内を通過した黒い影にゾッ…とした。背筋を嫌な汗が流れ、腰痛がビリリと来た。こういうストレスは神経系統に異常を来すのだ。

 大外からカゼノコがハナ差で差しており、気付くと写真が1枚も無い事態に陥っていた。慌てて(同業の)武田明彦君に聞くと撮れているというので、仕事のフォローをお願いした次第だ。地方競馬が好きすぎての納得のミスということにしている。

 勝ち馬は今も追込み健在で時々大穴馬券になっているし、2着のハッピースプリントは今年再度南関に移籍し、久々の重賞制覇を期待されている。息の長い活躍はとても嬉しいし、あの日を忘れずにいられる。と言って別に失敗は減らないが。

(2.秋競馬での失敗作) ブルーメンブラットが勝った2008年のマイルCS


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【失敗作】秋の京都のGIは鬼門…マイルCSはここ10年で3回のミス


 秋競馬における失敗例は数限りない(どんだけ下手なんだ)。秋の京都のGIはその宝庫で、特にマイルCSはここ10年で3回のミス。関東から交通費掛けて緊張感半端なく臨んでいるのに。

 特に思い出深いのがスーパーホーネット。藤岡佑介騎手の手綱で大外一気! 次の香港マイルでもイケちゃうと思い描きながら撮ったら、内のブルーメンブラット(吉田豊騎手)に気づかなかった。

 その数年後、大外ぶっ飛んできたグランプリボスを撮ったときも同じパターン(2012年、勝ち馬はサダムパテック)。同じ矢作厩舎で、内で勝ってたのが武“豊”騎手というのも同じだ(名字が違うが)。

 こちらは、写真保存用HDDがクラッシュして失われた時点で無かったことになっている。次の香港を期待させる人馬に注目しているので、その意識が強すぎるのかも知れない。

(3.会心の成功作) サングレーザーが勝った2018年の札幌記念


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【会心作】はじめはマカヒキにフォーカスするも、一瞬の判断で狙い馬をチェンジ


 成功例についてはあまり記憶がない。人が失敗するレースは大抵私も失敗している。まあ才覚的に凡庸なのだ。

 唯一思い出せるのは昨年の札幌記念。直線が短いので、迷ってるとあっという間に馬が目の前に来ている恐ろしい競馬場だ。私も直線半ば、一瞬マカヒキの復活を喜んで撮り始めた。

 しかし、その背後にシュッと伸びる影に気付いて、思わずそちらを追った。直後ビジョンを見てやっちゃったと思ったが、結果勝ち馬サングレーザーが撮れていた。少しだが予定外の仕事が得られた。

 失敗と成功は紙一重と思うが、考えるより感覚的に撮れれば結果的にはいいように思う。私は左脳人間なので実はそれが不得手だ。

 レンズの望遠を短くすればいいかというと、確かに失敗は減ると思うが、そもそも小さく写るので使える写真点数が少なくなるし、馬を真横で捕らえるので追い速度が速くブレやすく、口径が小さいため解像度が低いなどのリスクを背負うことになる。そちらに移行することは逆に勇気がいるのだ。

 今年の秋競馬に際しては、誰もがシクる難しいレースをモノにし、大いに周囲の反感を買いたい。

(次回は9/29に公開します)

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