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【オールカマー・神戸新聞杯】人気馬の明暗が分かれた東西の前哨戦

  • 2019年09月23日(月) 18時00分

丸山騎手の好判断が光った完勝劇/オールカマー


 機先を制した5歳牡馬スティッフェリオ(父ステイゴールド)の完勝だった。前後半「61秒8-(12秒2)-58秒0」=2分12秒0は確かにスローペースに持ち込んでの逃げ切りだが、丸山元気騎手のすばらしかったところは、マイペースで進んだあと、3コーナー手前(残り800m)あたりから後続に脚を使わせるようにどんどんペースを上げたこと。後半4ハロンのラップは「11秒8-11秒2-11秒0-11秒8」=45秒8となった。

 2番手にいた石橋脩騎手のゴーフォザサミット(父ハーツクライ)が同じようにピッチをあげてくれたのも、結果、スティッフェリオの早めのスパートをつついてアシストする形になってくれた。これで重賞3勝目。左回り【0-0-0-2】の経験が乏しいのが心配だが、4歳以降13戦6勝。使って良化するタイプ。母の父MtotoはKジョージVI&QエリザベスSの勝ち馬。その父Bustedも同様。その父Crepelloは英ダービー馬。ドイツ血統としても脚光を浴びた伝統のBlandford系分枝であり(ヴェロックスの母の父の父系)、少し時計がかかるなら天皇賞(秋)でも侮れない存在になるだろう。

重賞レース回顧

後続を封じ込める見事な逃げで重賞3勝目を飾ったスティッフェリオ(撮影:下野雄規)


 差しタイプの後続はそれをみて残り800m手前あたりからスパート体勢に入ったが、残り4ハロン手前から脚を使う追撃は苦しい。その典型が、動いて勝ちに出なければならない2番人気のウインブライト(父ステイゴールド)と、1番人気のレイデオロ(父キングカメハメハ)だった。下級条件ならともかく、前が止まらない流れの重賞で、最後に坂のある中山で3コーナー手前からペースを上げる形は、肝心のゴール前にきて差す脚は鈍る。

 もちろん人気の2頭の凡走の原因はそれだけではない。レイデオロは十分にシャープな馬体に映ったが、ドバイで2秒0差の大敗、宝塚記念も1秒4差の大敗。今回は0秒4差なので大敗ではないが、相手関係とゴール寸前の失速からすると、大凡走だろう。宝塚記念では、直線の情けない動きにルメール騎手が叱責のムチを入れても反応しなかった。立て直した今回は、さすがにそうではなかったが、内と外と両脇から差された負け方はチャンピオンらしくない。秋のビッグレースを前に、かかえる問題は思われるより深刻になった。

 ウインブライトは、見た目には不安のある仕上がりではなかった。だが、今回は美浦に2カ月間滞在して入念に乗り込んだが、GI馬となったがゆえに慎重になりすぎたか、結果的にきびしい追い切りが少なかった。もっとたくましく成長するはずだが、良績の乏しい休養明けも重なり、息切れの失速。最後はあきらめざるを得なかった。距離2200mが?という見方もあったが、先頭馬の2000m通過は2分00秒2。香港のGIクイーンエリザベスII世Cを2000m1分58秒8のレコード勝ちした馬の、スタミナが切れる中身ではない。

 ロングスパートが効いて2着したのは3番人気のミッキースワロー(父トーセンホマレボシ)。上がり33秒4は最速だった。3歳秋のセントライト記念(上がり33秒4)ではもっと切れた印象があったが、当時は直線だけの勝負で、今回の方がずっと中身は濃い。スローなので七夕賞のように動きたかったが、レイデオロ、ウインブライトをマークしていたので仕方がなかったか。ひと回りのスケールアップを認めたい。

上位3頭のさらなる成長に期待/神戸新聞杯


 サ−トゥルナーリア(父ロードカナロア)の独走だった。高ぶっていたところに本馬場入場時の大歓声が重なり、レース前から尋常ではなかった日本ダービーとはレースでの落ち着きが違った。超スローの中身は「1分16秒9-1分09秒9」=2分26秒8。レース上がりは驚異の「44秒1-32秒3」。馬なりのまま、あまりにもすごいスピード能力を見せつけてしまったので、同じ父を持つアーモンドアイのようなスーパーホースの可能性がやっぱりあるのか、あるいは本質スピード系なのかの判断は持ち越されることになったが、2000mの天皇賞(秋)の最有力馬の1頭は間違いない。

 これで、天皇賞(秋)→ジャパンCの路線では、とくに主戦ルメールの有力馬が重なることになるが、大挙して短期免許で来日する「デットーリ、ムーア、スミヨン、マーフィー、ビュイック……」などによって解決されるので心配することはない。しかし、ルメール騎手が騎乗するのはどの馬だろう。

重賞レース回顧

サートゥルナーリアは古馬との初対決になる天皇賞(秋)でも有力候補になるであろう


 完敗の2着だったヴェロックス(父ジャスタウェイ)は、日本ダービーの1、2着馬、神戸新聞杯の勝ち馬がいない菊花賞の最有力馬となった。崩れないが、勝負どころの反応が思わしくない死角はあるが、ドイツ牝系の母方のファミリーは、マンハッタンカフェ、ブエナビスタ…などと同じ。まだまだ良くなる可能性があり、秘める底力は十分だろう。

 ワールドプレミア(父ディープインパクト)の牝系も、ヴェロックスとは異なるドイツ育ちの牝系。今回はイレ込みがあまりにもきつく、後方に控えて3着確保に徹するしかなかった。あの状態で伸びたから立派だが、気性面での成長が待たれる。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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