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今季の北米ダート中距離路線を振り返りながらBCクラシックを展望

  • 2019年10月02日(水) 12時00分

全幅の信頼をおける軸馬不在の混戦


 9月28日に東海岸のベルモントパークで行われたG1ジョッキークラブゴールドC(d10F)、西海岸のサンタアニタで行われたG1オウサムウアゲインS(d9F)をもって、11月2日に行われる北米ダート10F路線の最高峰G1BCクラシック(d10F)へ向けた主要な前哨戦がほぼ終了した。

 勢力分布を短く表せば、「全幅の信頼をおける軸馬不在の混戦」となろうか。

 このコラムは今週と来週の2回に分けて、今季の北米ダート中距離路線を振り返りつつ、BCクラシックの展望をお届けしたい。

 今週はまず、今季ここまでの古馬戦線から検証したい。シーズン当初にこの戦線を支えることが期待されていたのが、18年のG1トラヴァーズS(d10F)勝ち馬カソリックボーイ(牡4、父モアザンレディ)、18年のG1ウッドウォードS(d9F)勝ち馬ヨシダ(牡5、父ハーツクライ)、18年のG1ペンシルヴェニアダービー(d9F)勝ち馬マッキンジー(牡4、父ストリートセンス)らであったが、いずれも期待に充分応えているとは言えないのが、今季ここまでの彼等の成績である。

 昨年はG1ベルモントダービー(芝10F)も勝っている「二刀流」のカソリックボーイの、今季初戦は5月にピムリコで行われたG2ディキシーS(芝8.5F)で、ここを快勝して6度目の重賞制覇。次走はダートに戻り、ベルモントパークのG2サバーバンH(d10F)を使われてプリザーヴェイショニストの2着。その後は一頓挫あって使えず、ブリーダーズCはぶっつけ本番になるのだが、陣営はクラシックではなく、芝のG1BCマイル(芝8F)に向かう可能性を示唆している。

 ヨシダは今季ここまで5戦し、G1ホイットニーS(d9F)がマッキンジーの2着、G1ウッドウォードS(d9F)がプリザーヴェイショニストの3着など、悪くない競馬をしているものの、未勝利という歯がゆいシーズンを送っている。

 そんな中、辛うじて合格点の成績を残しているのがマッキンジーだ。今季ここまで6戦し、5月にチャーチルダウンズのG2アリシバS(d8.5F)、8月にサラトガのG1ホイットニーS(d9F)を制している。敗れた4戦も2着には入っており、つまりは軸馬としての役割はきちっと果たしているのが、例えば6月にベルモントパークで行われたG1メトロポリタンH(d8F)などは、陣営がシーズン当初から前半の最大目標としていたレースで、こういう一戦を取りこぼす(2着)あたりに、頼りなさを感じてしまうのだ。

 9月29日のG1オウサムアゲインSでも、マッキンジーは圧倒的1番人気に推されながら、重賞未勝利馬モンゴリアングルーム(セン4、父ハイテイル)の逃げを捉えきれず2着に敗れた。相撲で言えば、彼は西の横綱ではあるのだが、平幕に簡単に押し出され、座布団が舞っている状態である。

 そのG1オウサムアゲインSで、2番人気に推されていたのが、デルマーのG1パシフィッククラシックS(d10F)を5.1/4馬身差で快勝しての参戦だったハイアーパワー(牡4)だった。ところが同馬は、発馬後1完歩目で大きく躓き、危うく落馬は免れたものの、後方からの競馬という不本意な展開になって、勝ち馬から7.1/2馬身差の3着に敗れた。エクスキューズのある負けではあるが、本番で大きな期待を寄せられる馬かどうかは疑問だ。

 ここまで何度か名前が出ているように、今年になって力をつけた古馬がプリザーヴェイショニスト(牡6、父アーチ)である。7月に重賞初挑戦だったベルモントパークのG2サバーバンHを4.1/2馬身差で制すると、次走はサラトガのG1ホイットニーSに挑み、ここは4着に敗退。だが8月31日にサラトガで行われたG1ウッドウォードS(d9F)を制し、G1初制覇を果たした。

 今年のBCクラシックでは、この馬が東海岸の古馬勢を代表することになるのかと、この段階では思わせたのだが、そうは問屋が卸さなかった。9月29日に行なわれたG1ジョッキークラブゴールドCで、同馬はオッズ2.8倍の1番人気に推されたのだが、勝ち馬から5馬身遅れた4着に敗退。BCクラシックで人気の重責を担うには、物足りなさを感じさせる内容だった。その後陣営は、BCを回避する可能性に言及している。

 そのG1ジョッキークラブゴールドCで、1着入線後に2着降着となったヴィーノロッソ(牡4、父カーリン)は、5月にG1ゴールドカップアットサンタアニタS(d10F)を勝った実績がある馬で、馬場適性も加味すれば有力馬の一角には入ってくる馬だろう。

 古馬ダート中距離路線の牡馬に、一昨年のガンランナーや昨年のアクセレレイトのような超ド級の大物がいない一方、牝馬ダート路線には、今季に入って7戦し、3つのG1を含めて7連勝と無敵の快進撃を続けている、ミッドナイトビズー(牝4、父ミッドナイトルート)という女王がいる。G1BCディスタフ(d9F)に出ても、ミッドナイトビズーには勝てないので、8月24日にサラトガで行われたG1パーソナルエンスンS(d9F)でミッドナイトビズーの2着だったイレイト(牝5、父メダグリアドーロ)の陣営は、牡馬相手のG1BCクラシック参戦を視野に入れていると言われている。果たして本当に出て来るのか、今後の動向が注目される。

 北米ダート中距離路線の回顧、次週は3歳編をお届けする予定だ。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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