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【外国人騎手の本当の狙い時】佐藤哲三が解説! スミヨン騎手、ビュイック騎手、シュタルケ騎手編

  • 2019年10月15日(火) 18時02分
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▲(左から)シュタルケ騎手、スミヨン騎手、ビュイック騎手


名手の中の名手・デットーリ騎手、7年ぶりに短期免許を取得して来日するスミヨン騎手…今秋来日する短期免許の外国人ジョッキーは超豪華。「外国人騎手にはいい馬が集まる」=「買い」は、競馬ファンの間で通説になっていますが、はたして本当の狙い時はどういう条件なのか? さらに、世界の名手たちは具体的にどう巧いのか? 佐藤哲三元騎手が詳しく解説します。

(取材・構成=不破由妃子)

※全2回。後編のデットーリ騎手、ムーア騎手、マーフィー騎手は、来日時期に合わせて11月頭に公開予定です。


クリストフ・スミヨン騎手(仏)は「短い距離より1600m〜2400mで」


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▲7年ぶりに短期免許を取得して来日するスミヨン騎手 (撮影:高橋正和)


 現役時代、スミヨンは一緒に乗ったことがあるのでよくわかるのですが、彼は行きっぷりのいい馬、もっといえば、掛かり気味に行くくらいの馬に乗せるとめちゃくちゃ巧いと思います。

 その根底にあるのは、おそらく彼の“折り合い”に対する感覚。スミヨンの折り合わせる技術について、日本のジョッキーの多くが「そんなに上手いか?」というイメージを持っていると思います。なぜなら、曖昧だから。

 僕はもともと、折り合いなんて曖昧でいいじゃないかと思ってるんですよね。終始きっちり折り合わなくても、たとえば「あと20m走ったら折り合えるだろう」……それでいいと思うんです。

 要するに、無理に抑えて1ハロン12秒5で行くより、折り合いは曖昧でも12秒2で行ったほうが距離的には得。今の競馬は、前に行ったほうが絶対に有利ですから、距離的に得する乗り方ができるというのはとても大きいと思います。

 実際、エピファネイアで勝ったジャパンCを見ても、終始折り合っているわけじゃない。その曖昧な折り合いがむしろ遊びにつながって、後続を突き放したあの最後の脚につながった。僕はそう見ています。

 もちろん、馬の気持ちはコントロールできているし、抑えようと思ったらビシッと抑えられる技術を持った上での、さらに高度な技術です。日本のジョッキーのなかでも数人しかできない手法だと思いますね。

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▲エピファネイアで勝ったジャパンC (撮影:下野雄規)


 エピファネイアのジャパンCでいうと、もうひとつ、僕がさすがだなと思った技術があります。それは、道中から4コーナーの隊列の妙です。

 スミヨンがどういう感覚で馬の視野を考えているかはわからないけれど、馬の目線を真正面に固定してはダメというのが僕の持論。前の馬の直後につけて、目線を真正面に限定してしまうと、外に出したときに突然視野が開けるから、馬は一瞬躊躇してしまうんです。

 その点、ジャパンCのスミヨンは馬の広い視野を上手く使って、斜め前と斜め後ろに馬を置くかたちで道中を運びました。どちらも内目の枠だったこともありますが、ブエナビスタの天皇賞(秋)のときもそうです。そうすることで、馬自身が自然とブレーキングを掛けるし、抜け出すときも馬と馬のあいだを突くことで、視界が変わることによる躊躇がない。

 つまり、“自分と騎乗馬”だけではなく、周りの馬のことも上手く使っているということですね。先述した曖昧な折り合いでブレーキを掛け過ぎない、タメすぎない、さらに馬の視野を上手く使うことで、ほかの人より先に動き出せる態勢が作れている。ここがスミヨンの強さなのかなと思います。

 道中の遊びを終いの脚につなげるという技術は、短い距離より1600m〜2400mで生きると僕は思います。だから、重箱の隅を突くとすれば、1200mや1400mといった短距離に彼の弱点はあるのでは…と想像します。たとえそうだとしても、多くの引き出しを持っている彼のこと、すぐに対応してくるでしょうけどね。

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