優れた能力を秘める牝馬続出の近年の流れ通りの決着
桜花賞1600m、オークス2400mのちょうど中間距離で、ここまで桜花賞馬は【7-2-1-8】。オークス馬は【8−1−2−8】。ほとんど互角の結果が残っていたが、今年は重馬場に近い稍重で人気の先行馬が引っ張り、前後半の1000m「58秒3-61秒6」=1分59秒9(上がり36秒4)。
今年が24回目。19番目タイの遅い時計の、非常にタフなレースになったため、どちらかというとオークスでの力関係が反映される結果となった。良馬場の2000mよりはるかにスタミナも問われた結果といえる。
高い総合力を示したクロノジェネシス
快勝したクロノジェネシス(父バゴ)は、阪神JF2着、桜花賞3着、オークス3着など、GIで惜敗の厳しいレースを展開してきたが、秋のビッグレースを目標にオーバーホールして再鍛錬。今回は452kg(最少だったオークスは432kg)まで、身体が回復したと同時に明らかに成長していた。秋はこの秋華賞だけでなく、エリザベス女王杯をも展望した陣営の強気で、かつ周到な秋の展望がいきなりGI制覇に結び着いた。
デビュー以来、鞍上とのコンビに一度も変更がなかったのは、クロノジェネシス(北村友一)と、3着したシゲルピンクダイヤ(和田竜二)の2頭だけ。騎手変更にはさまざまな事情があるが、クロノジェネシスの場合はこの方針(姿勢)が大正解だった。今回は、位置取り、スパートのタイミングなど、残念なレースを経験してきたからこその人馬の総合力の結集だろう。種牡馬バゴ産駒のGI勝ち馬はここまで10年菊花賞のビッグウィークのみ。そのため一発屋のイメージがあるが、クロノジェネシスはGI【1-1-2-0】。高い総合力を示した今回のレース内容から、女王杯の2200mも文句なく守備範囲に入る。
オークス2着のカレンブーケドール(父ディープインパクト)は、紫苑Sの3着はやや物足りなかったが、狙いの本番で真価発揮。勝ち馬には完敗でも、オークスをクビ差2着の底力をフルに発揮してみせた。関西への遠征が初めてだった点にも価値があり、最近、ペース判断に再三冴えをみせる津村明秀騎手の好騎乗が光った。
稍重以上にタフな芝コンディションだったため、注目馬を5頭も出走させたディープインパクト産駒の多くに結果が出なかったが、なかで能力全開はカレンブーケドールだけ。この後の活躍に限定条件がつかなくなった。
3着シゲルピンクダイヤ(父ダイワメジャー)は、早めに動いたオークス12着でやや距離不安があったため、持ち味全開に徹した和田騎手の好判断だった。上がり35秒6は最速(ただ1頭だけ35秒台)。ここまで崩れたのは初遠征、初の左回りのオークス2400mだけ。今後もマイル〜2000mならペースに合わせたレースができる。
桜花賞馬、オークス馬不在の秋華賞は、3歳牝馬の勢力図にかなりの変化が見られても不思議ないが、4着シャドウディーヴァ(父ハーツクライ)も、前半に競り込まれる苦しい形が応えて5着にとどまったビーチサンバ(父クロフネ)も、そろって春のクラシック好走、善戦組だった。優れた能力を秘める牝馬続出の近年の流れ通り、この3歳世代のトップグループの層も厚いことを改めて示した。
1番人気ダノンファンタジー(父ディープインパクト)の失速は案外の印象を残したが、ローズSのレコード勝ちが示すスピード能力こそが真価(前回の切れ味上がり33秒1)のこの馬にとり、芝コンディションも、後半5ハロン連続「12秒台」のラップが連続したタフな流れも合わないレースだった。レコード勝ちの反動というより、今回は本質マイラー型の弱みが出てしまった。
コントラチェック(父ディープインパクト)は芝コンディション不向きに加え、ハナを切って自分のリズムに乗らないと好走の可能性が乏しくなりそうに思わせてしまう若さが残りすぎていた。これで2戦連続大敗。上のバウンスシャッセと異なり、スピード系のマイラーなのかもしれない。
好馬体の新星エスポワール(父オルフェーヴル)は、好位追走の形が取れなかったのはこのハイペースなので不利ではなかったが、きびしい流れのレース経験がない弱みが出てしまった。長期休養中の大器アドミラブル(父ディープインパクト)の半妹。完敗とはいえダノンファンタジーと並んでの入線でもあり、これを糧に巻き返したい。全体時計は平凡でもレースレベルの高いGIだった。