スマートフォン版へ

今年最後の1歳馬セール「オータムセール2019」を終えて

  • 2019年10月17日(木) 18時00分

購買者の旺盛な意欲に支えられ、想定以上の売り上げに


 日高軽種馬農協主催の1歳馬セールとしては今年最後となる「オータムセール」が10月15日、16日の2日間にわたり、新ひだか町静内の北海道市場にて開催された。

 やや肌寒い気温ながら、深まり行く秋空の下、両日とも晴天に恵まれ、順調に日程を消化できた。2日間と、昨年(3日間)よりも1日開催日が少なかったのは、上々頭数の減少によるものだ。先月、新たにセプテンバーセールを開催し、492頭が上場され、363頭が落札、合計15億9786万円(税抜き14億7950万円)を売り上げたことは、以前当コラムでも触れた通りである。⇒【今年新たに創設された「セプテンバーセール」が北海道市場にて開催】

 ちょうどその分だけ、今回のオータムセールでは、新規の1歳馬が少なくなった。初日15日が新規1歳馬200頭(牡81頭、牝119頭)、2日目16日がセレクト、セレクション、サマーなどの市場を疾病や怪我で欠場した馬や主取り馬232頭(牡109頭、牝123頭)という内訳である。

 結果は既報の通り、初日が144頭(牡62頭、牝82頭)の落札で、売却率72%、前年初日と比較して2.43%の微減であった。この日の売り上げは税込4億6354万円(税抜き4億2140万円)。平均価格は321万9028円(税抜き292万6389円)。

 台風19号の影響により、この日も東京競馬場ではレースが行なわれていたことで、中央の関係者の来場が少なかったようにも思う。また台風による交通機関の混乱により、来場できなくなった購買者もいたはずで、落札馬の平均価格も前年比29万5526円(税抜き32万7828円)の減少であった。

 購買者の1人は「もうあまり良い馬が残っていない印象ですね。新規の1歳馬が出てくるのである程度期待していたのですが、案外掘り出し物が少ないと思います」と浮かない表情でコメントしていた。

 それを裏付けるように、初日15日は、最高価格馬が牡牝ともに1000万円には届かず、牡は201番ピサノロマンの2018(鹿毛、父トランセンド、母の父コマンダーインチーフ)の990万円(税抜き900万円)、また牝馬では166番バウンシーチューンの2018(鹿毛、父スクリーンヒーロー、母の父ステイゴールド)の682万円(税抜き620万円)がそれぞれ最高落札馬であった。

生産地便り

201番(ピサノロマンの2018)落札場面


生産地便り

201番(ピサノロマンの2018)立ち姿


生産地便り

166番(バウンシーチューンの2018)落札場面


生産地便り

166番(バウンシーチューンの2018)立ち姿


 明けて2日目。この日も天候は良く、前日よりも気温が少し上がって、過ごしやすい日になった。2日目は、一度過去にセールをくぐってきている1歳馬たちが登場するということで、前日の結果から、さらに価格が下がるのではないかと懸念する声もあったが、いざ蓋を開いてみると、市場のムードは前日よりも確実に良くなり、次々に声がかかって、大半の馬が売れて行くようなセリになった。

 前記の購買者は「今日は良い馬が多いですね。これはという馬の価格が思ったよりも下がらないのであてが外れました」とまた渋い表情であった。

 馬の作りは平均すると明らかに初日と比較しても上昇しており、夏からの成長分を感じさせる上場馬が少なくなかった。

 消費税10%もなんのその、価格こそオータムセールならではの低めに抑えられたものの、ここで1歳馬を確保したいという購買者の旺盛な意欲に支えられ、数だけは次から次に売れて行く印象が強かった。

 2日目には2000万円の落札馬が登場した。332番エミネントシチーの2018(牝栗毛、父ジャスタウェイ、母の父ブライアンズタイム)が2200万円(税抜き2000万円)で野田善己氏に落札され、これがオータムを通じての最高価格馬であった。販売申込者はWing Farm、種牡馬になったエスポワールシチーの半妹で、販売希望価格2000万円で上場されると、一声で落札された。

生産地便り

332番(エミネントシチーの2018)落札場面


生産地便り

332番(エミネントシチーの2018)立ち姿


 牡馬では、428番フォーエバーダンスの2018(鹿毛、父ロードカナロア、母の父チチカステナンゴ)が1485万円(税抜き1350万円)で、松本好雄氏に落札されたのが最高であった。販売申込者は(有)秋田牧場。このセールで唯一のロードカナロア産駒ということで注目を集めていた。

生産地便り

428番(フォーエバーダンスの2018)落札場面


生産地便り

428番(フォーエバーダンスの2018)立ち姿


 2日目は232頭中176頭(牡88頭、牝88頭)が落札され、売却率は前年比5.35%増の75.86%に達した。また売り上げは5億6023万円(税抜き5億930万円)で、平均価格は318万3125円(税抜き289万3750円)であった。

 トータルでは、2日間で432頭中320頭(牡150頭、牝170頭)が落札、10億2377万円(税抜き9億3070万円)の売り上げで、売却率は74.07%と健闘した。ただ平均価格は前年比10%近い減となり、税抜きで31万3740円の減少であった。

 これで、日高軽種馬農協主催による一連の1歳、2歳市場は全日程を終えたことになるが、年間を通じての総売り上げは118億1145万8000円(税抜き109億1930万円)となり、一昨年の記録を塗り替える好成績を収めたことになった。

 日高軽種馬農協の木村貢組合長は「オータムセールに関しては当初やや数字が落ちるだろうと予想していましたが、売却率、売り上げ総額ともに想定以上の数字が出て、大変驚いております。やはり地方競馬の馬券売り上げ好調により、馬主さんの購買意欲が活発であること、そして、庭先よりも、市場で馬を買い求めたいという考え方が定着してきた結果だろうと考えています。年間を通じても、これだけの数字ですから、95点は付けたいと思います」

 と話し「ただ、来年の課題として、サマーセール、セプテンバーセールは、私どもとしては3日ずつくらいの日程に収めたいのが理想なのですが、そこは生産者とまた協議を重ねて行きたいと思います」とコメントしていた。

 年間を通じてひじょうに良く売れた市場であったと言えるものの、現実的にはセレクションからサマー、セプテンバー、そしてオータムへと進むにつれて落札平均価格は確実に下がって行く。購買者にとっては、安く買える市場がベストでも、生産者としては、できるだけ自分の生産馬は早めに、そして高く売りたい。それには、できることならセレクション、それが無理でもせめてサマーセールでは売ってしまいたい、という事情がある。

 しかし、主催者である日高軽種馬農協としては、なるべく市場ごとの頭数のばらつきを解消したいわけで、そのあたりの調整が来年に向けての大きな課題となって来そうだ。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング