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馬が暴走した場合、途中からペースを落としていくのは難しいのか?

  • 2019年10月22日(火) 18時01分
太論

▲“折り合い”にまつわるユーザーからの質問に答えます!


「馬が暴走した場合、途中から徐々にペースを落としていくのは難しい?」。今回は、競馬ファンなら誰もが興味があるであろう“折り合い”にまつわる質問からスタート。手綱を通して“競走馬の馬力”を体感してきた小牧騎手が、自身の経験を通してその難しさを語ります。(取材・文:不破由妃子)


折り合いを欠くのは、走る馬ならではの難しさ


──今回は、馬の暴走についてこんな質問から。「小牧さんが乗られたレースではないのですが、8月31日の糸魚川特別で、小牧さんも中間に調教をつけていたラシェーラ号が制御不能になったのか、暴走気味の逃げになりました。このように意図せず掛かってハミを噛んでしまった場合、途中から徐々にペースを落としていくのはなかなか難しいのでしょうか? さすがにペースが早過ぎたことは、騎乗していた津村騎手もわかっていたと思います」。

小牧 ああ、笹田厩舎の馬でしょ?コントロールできるかどうかは馬にもよるし、その掛かり具合にもよるよね。カーッとなって行ってしまったら、バテるまで止まらん馬もいるやろうし。

──ラシェーラでいうと、騎乗した津村さんも「上手くコントロールして乗ることができませんでした」と素直に認めてらっしゃいましたね。

小牧 そうなんや。じゃあ本当にコントロールできんかったんやろうね。馬が本気で引っ掛かったら、人間の力ではどうしようもないよ。なんせ競走馬の脚力は、一馬力どころじゃないからね。でも、それを制御せなアカンのがジョッキーやねん。

──本気で掛かる前に対処するということですか?

小牧 まぁそうやね。ルメールとか外国人ジョッキーは力でグッと抑えるやん。やっぱりああやって力で抑えなアカンねんな。だから、それができずに暴走を許してしまったということは、そのレースはジョッキーとして失敗や。僕も何度も経験があるよ、そういう失敗は。思い出そうと思ったら、なんぼでもある。

──たまに「引っ張りすぎて腕がパンパンや」とかおっしゃっているレースがありますね。

小牧 そうそう。橋口(弘次郎)厩舎の馬とか、パワーのある馬がようけいたからね。リーチザクラウンとか、いつも暴走気味やったし。でも、パワーがあるというのは、それだけ能力が高いということでもある。有り余るパワーを制御しようとするから折り合いを欠くわけで、力の足りん馬の場合、追い通しのことはあっても、折り合いを欠くことはあんまりないから。だから難しいねん。ラシェーラもそうやけど、走る馬ならではの難しさやから。そういう馬に乗ると、勉強になることも多いけどね。

──そういえば、スマイルジャックからはいろいろ学んだとおっしゃってましたよね。あの馬も折り合いが難しい馬で。

小牧 うん。あの馬には、ものすごく勉強させてもらったわ。途中からはずっとマイルを使っていたけど、なんせ菊花賞に出たんやからね。途中で動いて惨敗して(16着)乗せ替えられたけど(苦笑)。でも、ダービーは3コーナーからびっくりするくらい折り合いがついたんですわ。あの馬からすると、もうほんとに奇跡といっていいくらい。直線では勝てるかもしれないと本気で思った。

──そう思った矢先に、ディープスカイが外から飛んできて…。

小牧 そうそう。やっぱりダービーはそんなに甘いもんやなかった(苦笑)。

──続いての質問は、馬の鬣(たてがみ)について。「最近、馬の鬣が切られる事件がありましたが、普段馬と接するときに(調教・厩舎・レース前後)鬣を触ることはありますか?馬にとって、鬣とはどのようなものなのでしょうか?早く事件が解決し、再発しないことを祈ります」

小牧 もちろんしょっちゅう触るよ。レース中に邪魔になることがあるからね。長い場合はちょっと切ってもらいたいなと思うことも。追っているときに、たまに絡まってしまうことがあるもん。

──昔は編み込んでいる馬もいましたよね。

小牧 いたね。今はもうあんまりおらんけど。だいたいみんなキレイに切ってくれているから。

──「馬にとって、鬣とはどのようなものなのでしょうか」ということですが。

小牧 おそらく人間の毛と一緒で、その部分を守るものちゃうかな。髪の毛が頭を守っているのと同じで、鬣は馬の首を守ってるんちゃうかと思うけどね。毛ということでいえば、尾っぽにも「虫を払う」というすごく大事な役割があるんやで。尾っぽがなかったら、虫がたかって大変なことになるから。あの事件を知ったとき、お守りにするつもりで持って行ったんかなぁと思った。いけないことやけど、よっぽどその馬が好きやったのかもしれんね。

太論

▲「スマイルジャックにはものすごく勉強させてもらったわ」

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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。その後もローズキングダムとのコンビで朝日杯FSを制するなど、今や大舞台には欠かせないジョッキーとして活躍中。

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