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前売り1番人気はリスグラシュー、コックスプレートの出走馬が決定

  • 2019年10月23日(水) 12時00分

日本馬最大の敵はコーフィールドSを制した良血馬


 26日(土曜日)にメルボルン近郊のムーニーヴァレイ競馬場で行われるG1コックスプレート(芝2040m)へ向けた最終登録のステージが、22日(火曜日)の現地時間午前8時30分にあり、出走する14頭が確定した。

 ブックメーカー各社が、3倍台のオッズで前売り1番人気に推すのが、日本から参戦するリスグラシュー(牝5、父ハーツクライ)だ。

 1週前のG1コーフィールドC(芝2400m)で、メールドグラース(牡4、父ルーラーシップ)が鮮やかな勝ち方を見せたのを受けて、にわかに上がった人気では決してない。同馬の参戦が確定した段階から、ずっと前売りマーケットをリードしているのが同馬である。

 日本馬ゆえ、ここで改めて解説するまでもなかろうが、結果とともに内容も高く評価されたのが、6月23日に阪神競馬場で行われたG1宝塚記念(芝2200m)だった。キセキ(牡5、父ルーラーシップ)をはじめとした並み居る牡馬勢を3馬身突き放した強さもさることながら、それまでの同馬が見せたことがなかった「2番手追走」という積極的なポジショニングは、あたかも直線の短いムーニーヴァレイを意識したかのような競馬ぶりで、コックスプレートへ向けてのシミュレーションを完遂して見せたのには、正直に言って驚かされた。

 これまで2度の香港遠征では、いずれも持っている力を100%出し切れたわけではなかったが、経験は糧となっているはずで、そろそろアウェイの壁を突破してもおかしくはないはずだ。

 最大の敵は、10月12日に行なわれたG1コーフィールドS(芝2000m)を勝っての参戦となるケープオブグッドホープ(牡3、父ガリレオ)と見ている。

 G1・7勝馬ハイランドリールの全弟という良血馬で、そのわりにはタタソールズ10月1歳市場にて24万ギニー(当時のレートで約3863万円)という、常識的な価格でクールモアに購入されてエイダン・オブライエン厩舎に入厩した。今年8月まで10戦し、エプソムのLRブルーリバンドトライアル(芝10F17y)を含む2勝、G2スーパーレイティヴS(芝7F)2着、G2ロイヤルロッジS(芝8F)3着、G1仏ダービー(芝2100m)4着などの成績を残した。

 その後、豪州人によるシンジケートが購入し(クールモアグループも依然として権利の一部を保持)デヴィッド・ヘイズ、ベン・ヘイズ、トム・ダバーニグが共同運営する厩舎に移籍。現地で初めて迎えた実戦がG1コーフィールドSだった。つまりは、初物尽くしであった中、後方待機から直線で素晴らしい瞬発力を発揮して差し切り、豪州競馬への高い適性を示した。前走と同じ競馬をしては、ここでは届かぬ恐れがあり、前半の展開と位置取りがポイントになりそうだ。

 ケープオブグッドホープの古巣であるエイダン・オブライエン厩舎からの遠征馬となるのがマジックワンド(牝4、父ガリレオ)だ。今季ここまで8戦を消化しているが、このうち3戦をアメリカで走り、1戦をドバイで走っているという、グローブトロッターである。転戦を重ねつつ、1月のG1ペガサスワールドCターフ(芝9.5F)が2着、6月のG1プリティポリーS(芝10F)が2着、8月のG1アーリントンミリオン(芝10F)が2着、9月のG1愛チャンピオンS(芝10F)が2着と、勝ちきれないまでも確実に善戦を続けている。マジカルに2.1/4馬身差の2着だった前走のパフォーマンスを再現すれば、ここでも勝ち負けになるはずだ。

 地元勢にあって、昨季のキャンペーンが終わった段階で早くも、今季春の目標を「ここ」と明言していたのが、フレミントンのG1オーストラリアンギニーズ(芝1600m)を制し、パターン競走のシステムが導入されて以降では初めてとなる、タスマニア調教馬によるG1制覇を成し遂げたミスティックジャーニー(牝4、父ニーズファーザー)だ。

 その後、新設された500万ドル競走のオールスターマイル(芝1600m)でも勝利を収めた同馬は、冬休みをはさんで9月14日にフレミントンで行われたG1マカイビーディーヴァS(芝1600m)で戦線に復帰。2着となった後、駒を進めたのが10月5日に同じくフレミントンで行われたG1ターンブルS(芝2000m)だった。同馬が1600mを超える距離を走るのはそれが初めてで、すなわち、コックスプレートに向けた試金石となる一戦だったのだが、最後方から追い込むも届かず、勝ち馬から1.3/4馬身はなれた5着に敗退した。悪い競馬ではなかったが、距離についてメドが立ったとも言えず、評価が分かれるところである。

 もう1頭、評価が難しいのがアヴィリオス(セン5、父ピヴォタル)だ。

 英国産馬で、仏国で競走馬としてデビュー。7戦2勝、G2ニエル賞(芝2400m)でクラックスマンの2着などの実績を残した後、昨季から豪州に在籍している。移籍後いきなり3つの重賞を含めて4連勝を飾った後、昨年のこのレースでウィンクスに7.3/4馬身離された4着に敗れて連勝がストップ。だが秋には、G1ランヴェットS(芝2000m)、タンクレットS(芝2400m)と2つのG1を制し、豪州中距離路線の最前線に躍り出た。

 迎えた今季、3戦目となったG1ジョージメインS(芝1600m)を制し、3度目のG1制覇を果たすと、前走G1コーフィールドSは勝ち馬ケープオブグッドホープから1.3/4馬身差の4着となっている。

 ところが、19日(土曜日)にムーニーヴァレイに輸送して行った追い切り後に、鼻出血を発症。22日の出馬登録の前に、フレミントン競馬場で裁決委員立ち会いのもとで1000mの調教を行ない、その後の獣医検査で異常がないことが確認された上で、コックスプレート出走へのゴーサインは出たが、万全の状態にあるとは思えぬ情勢だ。

 日本から参戦するもう1頭のクルーガー(牡7、父キングカメハメハ)は、前売りオッズ15〜17倍の6〜8番人気と、現地ファンの人気はそれほど高くはない。半年前のシドニー遠征では、オッズ41倍だったG1ドンカスターマイル(芝1600m)が4着、オッズ51倍だったG1クイーンエリザベスS(芝2000m)が2着と、下馬評を遥かに上回る結果を残した同馬である。豪州競馬への適性が高いことは言を俟たず、ここも馬券圏内に入る可能性はおおいにありそうだ。

 コックスプレートの最終結論は、週末にネットケイバで発表させていただく予定になっているので、ぜひご参照いただきたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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