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次代へ語り継がれる一戦に

  • 2019年10月26日(土) 12時00分

龍王の遺伝子が新時代の幕開けを告げる


 令和になって最初の天皇賞は、GI馬7頭が出走した昨秋を上回る豪華なメンバーが揃った。ここで思い出すのが、一年前の天皇賞のスタートの瞬間だ。1番人気のスワーヴリチャードがまさかの大出遅れ、外の馬に寄せられて接触し後方に置かれてしまったのだ。結局、直線ムチを入れられても反応がなく10着と大敗に終わってしまった。

 一方、スタートに課題のあった一年前のダービー馬レイデオロは互角にスタートを切り好位の6番手、これまでよりも前のポジションに収まり、やや遅い流れにぴったり合致した戦いになって長い直線でいい脚をくり出し優勝していた。

 日本ダービー馬が王者の走りと称えられたが、手綱を取ったルメール騎手の存在を、改めて大きくしていた。これが天皇賞初勝利だったルメール騎手は、平成最後の天皇賞を春フィエールマンでも勝ち、今度はアーモンドアイで3連覇を目指す。三冠牝馬でジャパンC、ドバイターフを勝ってGI5勝の絶対女王にとり、前走安田記念の3着が気になるところだが、敗因がはっきりしているので、今度は古馬ナンバーワンの座を確定してくれるのではないか。

 プロ野球の野村克也氏の言葉に「負けに理あり、勝ちに理なし」がある。勝負の世界に君臨した知将の言葉は、当然、競馬でも生きてくる。敗因がはっきりしていれば、力があるものなら克服するのも可能だということ。アーモンドアイならと他ならぬルメール騎手自身が一番確信している筈だ。

 アーモンドアイは、父がロードカナロア。現役時代、世界にお披露目するまたとない機会と、それまで日本から14頭が挑み世界の厚い壁にはねかえされてきた国際G1香港スプリントに遠征し、4ヶ国12頭の強豪の中、待望の勝利を収め、翌年も連覇を達成した日本を代表する名スプリンターだった。

 キングカメハメハの直子で、5代血統表中にサンデーサイレンスの父ヘイローの血を持たない血統で、日本でも世界でも歓迎される存在。初年度産駒からアーモンドアイが出て、2年目産駒からは皐月賞馬サートゥルナーリアが登場している。神戸新聞杯の圧勝から天皇賞ではアーモンドアイのライバルと見られているが、ロードカナロアは母系の血をしっかり出している種牡馬なので、距離の融通は利く。GI戦線に新風を吹き込むのは間違いない。

 ディープインパクト、ステイゴールド、キングカメハメハが世を去って、次の時代への過渡期に入った今、この天皇賞は、語り継がれる一戦となるだろう。

 どっちのロードカナロア産駒かは、いずれの馬でもタイトルを取っているルメール騎手にかかっている。「彼を知り己を知れば、百戦してあやうからず」で、勝つ極意をつかんでいる筈だから。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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