【天皇賞・秋】断然人気2頭の比較は難しいが、秘める底力に注目
ここまでに示した2頭の2000mの能力はほとんど同じ
すでにGIを5勝(うち2勝はエース級の牡馬相手)。断然の人気を集める4歳牝馬アーモンドアイと、同じロードカナロア産駒の3歳牡馬サートゥルナーリアの比較は難しい。ほぼ完成の域に達しているアーモンドアイに対し、日本ダービーは馬場入場時の1番人気馬に対するあまりの大歓声に動転し、尋常ではない精神状態に陥って4着のサートゥルナーリアには、まだ全容を現していない魅力がある。
3歳サートゥルナーリアの2000mの最高時計は、皐月賞の1分58秒1。中位から差した前後半のバランスは《60秒3-57秒8》と推定される。上がり34秒1だった。
一方、アーモンドアイの最高記録は秋華賞快勝の1分58秒5。自身の中身は前後半の1000m《61秒2-57秒3》が推定タイム。上がりは33秒6だった。
コースも、相手も、時期も異なるが、ここまでに示した2頭の2000mの能力はほとんど同じだろう。明確な優劣はない。今度はともに初の東京2000m。問われるのはスピード能力を中心にした総合力(秘める底力)になる。
サートゥルナーリアが独走した神戸新聞杯2400mは、自身のバランス《1分17秒2-1分09秒6》=2分26秒8だった。ペースが上がったのは後半800mだけなので、勝ったこの馬の上がりは32秒3。それもほぼ馬なりだった。
対してアーモンドアイのジャパンC2400mは、自身《1分12秒2-1分08秒4》の推定前後半で、2分20秒6の大レコード。上がりは後半の1200mを高速の1分08秒4で乗り切りながらも「34秒1」だった。
ただ、この2つはあまりにもペースが違う。全体時計が6秒2も異なるので、サートゥルナーリアが4着だった日本ダービーを比較の対象にすると、サートゥルナーリアの2分23秒1の中身は推定《1分12秒8-1分10秒3》前後になる。ロスがあってとても全能力を出し切ったとはいえないが、上がりは奇しくもアーモンドアイのジャパンCとそっくりおなじ「34秒1」だった。
かなり乱暴な比較だが、2400mで示された総合力は馬場コンディションの差を考慮してもなお、現在までの時点では、4歳牝馬アーモンドアイのほうが3歳サートゥルナーリアをだいぶ上回っている可能性が高い。
ただし、今回は2000m。サートゥルナーリアは、おそらく内枠から先行策に出るはずのアーモンドアイを射程に入れて進み、交わすことができるだろうか。
切れ味というなら、アーモンドアイは、3歳春の桜花賞も、2分23秒8のオークスも上がり33秒2だった。スタートで外のロジクライが内によれたため、他馬と接触のロスがありながらも厳しい展開を伸びた安田記念の上がりは32秒4。
ここまで9戦すべて、先行したジャパンCを含め、自身のレースバランスは後半のほうが断然速いアーモンドアイは、一度も他馬に交わされたことがない。同じ位置取りか、あるいは先行するとき、現時点の能力上位はアーモンドアイとしたい。体質から暑さに弱いとされるこの牝馬の敗戦は、6月と8月である。
もし、割って入るとするなら、昨春の大阪杯2000mが再現できた際のスワーヴリチャード。あるいは、意外や一定ペースの単騎逃げになったときのアエロリットか。