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例年よりも注目馬多数の「ジェイエス秋季繁殖馬セール」が北海道市場にて開催

  • 2019年10月30日(水) 18時00分

まさしく多種多彩、さまざまな繁殖牝馬が上場


 ノーザンファームの繁殖牝馬セールに続き、その翌日の10月23日(火)、北海道市場にて(株)ジェイエス主催の「繁殖馬セール」が開催された。

 上場頭数は218頭(受胎馬190頭、空胎馬28頭)、うち141頭(受胎馬128頭、空胎馬13頭)が落札され、売却率は64.68%(受胎馬67.37%、空胎馬46.43%)、売却総額は7億2063万2000円(税込)、平均価格は511万865円であった。

 昨年の数字(203頭上場、150頭落札、73.89%、7億5579万4800円)にはわずか及ばなかったものの、血統の更新を考えている生産者や馬主など数多くの関係者が集まり、終日熱い取引が続いた。

 今年は前日のノーザンファーム繁殖牝馬セールが開催され、国内唯一の存在ではなくなったとはいえ、当セールは40年近い歴史を有し、秋のこの時期と年明け1月の年二回、開催されている。

 今回はノーザンファームからの上場馬こそいなかったが、栄進堂やダーレー・ジャパン、グランド牧場、社台コーポレーション白老ファーム、社台ファーム、社台ブラッドメアなど、大手から二桁の繁殖牝馬が上場され、注目を集めた。とりわけ栄進堂は32頭もの上場頭数(欠場3頭)に上り、うちエイシンヒカリ受胎馬が18頭と最多であった。

生産地便り

(株)小笹商店に高値で落札された、132番ブルーロータス立ち姿


 さて、当セールで取引された繁殖牝馬の産駒の中からは、活躍馬が多数出ており、2015年秋の取引馬オメガフレグランスからは昨年暮れの東京大賞典と今年の帝王賞を制したオメガパフューム(12戦6勝)が出ているし、2012年秋の取引馬ティックルピンクからは昨年のJBCレディスクラシック優勝馬アンジュデジール(19戦6勝)も出ている。

 さらにオジュウチョウサンの母シャドウシルエット(2009年冬)、グリムの母ブランシュネージュ、プリンシアコメータの母ベルモントフェリス(2014年秋)等々、数多くの重賞馬の母が当セールで新しい牧場へトレードされ、新天地で繁殖生活を続けている。

 上場頭数が多いため、セリは午前10時半よりスタートした。価格帯はピンキリで、繁殖牝馬の場合はひじょうに幅が広い。1000万円を軽く超えて激しい競り合いになる馬がいるかと思うと、10万円台、20万円台の馬も出てくる。まさしく多種多彩、さまざまな繁殖牝馬が次々に上場してくるのがこのセールの大きな特徴だ。

 1000万円超えの落札馬は15頭。最高落札価格馬は、166番プライマリーコード(8歳芦毛、父クロフネ、母インディスユニゾン、母の父サンデーサイレンス)の4180万円(税抜き3800万円)であった。販売者は(株)栄進堂、落札者は(株)社台ブラッドメア。エイシンヒカリを受胎しており、最終種付日は3月22日。

生産地便り

最高価格馬の166番プライマリーコード落札場面


 本馬は1勝馬ながら、全姉クロノロジストの産駒にノームコア(ヴィクトリアマイルなど5勝)、クロノジェネシス(秋華賞など4勝)が出ており、一気に血統的魅力が増していた。

生産地便り

最高価格馬の166番プライマリーコード立ち姿


 次点は38番ヴァイスゴルト(7歳栗毛、父ダンスインザダーク、母ゴールデンサッシュ、母の父ディクタス)の2915万円(税抜き2650万円)。

 本馬は4戦のみの成績ながら、半兄にステイゴールド、半姉にレクレドールなどのいる名血で、スクリーンヒーローを受胎している。最終種付日は4月14日。販売者は(有)社台コーポレーション白老ファーム、落札者は前川勝春氏。

生産地便り

38番ヴァイスゴルト落札場面


生産地便り

38番ヴァイスゴルト立ち姿


 三番目は、136番キュリオスティー(8歳鹿毛、父ディープインパクト、母キュー、母の父フレンチデピュティ)の2860万円(税抜き2600万円)。ノヴェリストを受胎しており最終種付日は3月26日。

 本馬は中央2勝、母のキューは北米G2勝馬(7勝)、半兄にブレイクランアウト(共同通信杯)がいる。販売者は(有)社台コーポレーション白老ファーム、落札者は(有)矢野牧場。

生産地便り

136番キュリオスティー落札場面


 セールを振り返って、主催者の(株)ジェイエス・服部健太郎市場長は「上場頭数の違いもあり、ばらつきがあるので毎年の比較は難しいですが、良い馬は高く売れたと思います。受胎馬が多いのは秋のセールの特徴でもあり、高く評価されるのは嬉しい限りです。

 繁殖馬セールが牝馬の流通を目的として指して開設され、40年近く経ちますが、多くの方々に認知されてきましたし、馬主さんにもひじょうに魅力のあるセールになっていていると思います。

 上場馬の質と数がいつの時代も課題ですが、好調な1歳市場の結果からも、多くの皆さまが次の新しい血を入れ替えるためにこのセリを利用して頂いておりますし、幅広い価格帯の繁殖牝馬から多くの活躍馬が出ている点が魅力だと言えます。

 消費税10%に関しては影響があったかどうかは現時点では何とも言えませんが、次の冬季セールに向けて、より多くの上場馬を確保するべく努めてまいりたいと思います」とコメントしていた。

 1歳市場同様に、良質馬は高く評価されるというのがサラブレッド市場であり、今年も関係者のひじょうに旺盛な購買意欲に支えられていたと言えるだろう。

 今年は特に、本馬自身が重賞勝ち馬だったり、産駒に重賞馬がいるというような繁殖牝馬がずいぶん出てきたので、例年よりも注目馬が数多かった印象がある。この好景気は今後いつまで続くだろうか。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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