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亡き父の名を更に高めてくれる活躍を見せるディープインパクト産駒

  • 2019年11月06日(水) 12時00分

まだデビューしていない欧州拠点のディープインパクト産駒が複数いる


 いささか旧聞に属する話題で恐縮だが、10月23日に英国のケンプトン競馬場で、超良血のディープインパクト産駒がデビュー勝ちを果たしている。

 オールウェザー8F(=約1609m)のノーヴィスで、経験馬相手に後方から見事な差し切り勝ちを果たしたサトノジャパン(牡2、父ディープインパクト)が、その馬である。

 母ドゥバウィハイツ(父ドゥバウィ)は現役時代、ハリウッドパークのG1ゲイムリーS(芝9F)、サンタアニタのG1イエローリボンS(芝10F)を含む3重賞を制した活躍馬だった。ドゥバウィハイツの半弟に、G1仏二千ギニー(芝1600m)やG1ラフォレ賞(芝1400m)を制したメイクビリーヴがいて、ドゥバウィハイツの叔母にG1スプリントC(芝6F)勝ち馬タンテローズがいるという、極めて活気ある優秀なファミリーを背景にもつ。

 ドゥバウィハイツが2011年のファシグティプトン・ノヴェンバーセールに上場されたところ、吉田照哉氏が160万ドル(当時のレートで約1憶2664万円)で購買。2012年から社台ファームで繁殖生活を送っており、2015年に生まれた3番仔が、GIIフィリーズレビュー(芝1400m)勝ち馬リバティハイツ(父キングカメハメハ)だ。サトノジャパンは、ドゥバウィハイツの5番仔にあたる。

 2018年のJRHAセレクトセール1歳部門に上場されたところ、(株)サトミホースカンパニーがセッション7番目の高値となる1億8千万円で購買。同年10月3日に日本を出国して渡英。ニューマーケットの名調教師サー・マイケル・スタウト厩舎の一員となり、馴致、育成を受けていた。

 5月4日という遅生まれだったこともあり、2歳春の段階ではやや小柄で非力との評価だったが、夏を越して馬体に実が入り調教のペースがアップ。調教ではライアン・ムーア騎乗することもあったが、10月後半に入ってムーアが渡豪したため、23日のデビュー戦ではジェイスン・ワトソンが騎乗していた。

 いかにもディープインパクトらしい切れ味を発揮してデビュー勝ちを果たしたサトノジャパンに、ブックメーカー各社は来年のG1英ダービー(芝12F6y)に向けた前売りで、34〜51倍のオッズを提示している。前述したような遅生まれで、これからの大きな成長が見込めるだけに、来春のクラシックが非常に楽しみである。

 ヨーロッパにおける来春の3歳クラシックを目指すディープインパクト産駒は、実はサトノジャパンだけではない。

 例えば、G1千ギニー(芝8F)へ向けた前売りでオッズ25倍前後の8〜9番人気、G1英オークス(芝12FF6y)へ向けた前売りでオッズ21〜25倍の3〜5番人気に推されているのが、エイダン・オブライエン厩舎のファンシーブルー(牝2、父ディープインパクト)だ。

 クールモアが、連覇を果たしたG1BCターフ(芝12F)を含めて6つのG1を制したハイチャパラルの全妹で、G3パークイクスプレスS(芝8F)4着などの成績を残したチェンチコヴァ(父サドラーズウェルズ)を日本へ送り、ディープインパクトを交配。ディープインパクトを受胎した状態で帰国したチェンチコヴァが、17年2月2日にアイルランドで産んだのがファンシーブルーだ。

 エイダン・オブライエン厩舎から9月13日にデビュー。ナースのメイドン(芝7F)を制して緒戦勝ちを飾ると、10月13日にカラで行われたLRスタフォーズタウンスタッドS(芝8F)も勝って、2戦2勝で2歳シーズンを終えている。

 フランスにも、2歳シーズンを1戦1勝の成績で終えた、アンドレ・ファーブル厩舎のヒダカ(牝2、父ディープインパクト)がいる。

 こちらは、ヴェルトハイマー兄弟が、アルゼンチンの最優秀2歳牝馬サファリクイーンの3番仔で、G1マルセルブーサック賞(芝1600m)4着などの成績を残したロイヤルマニア(父イルーシヴクオリティ)を日本に送り、ディープインパクトを交配。ディープインパクトを受胎した状態で帰国したロイヤルマニアが、17年1月14日にフランスで産んだのがヒダカだ。

 8月20日にドーヴィルで行われたメイドン(芝1600m)でデビューし、ここで見事な緒戦勝ちを果たしている。

 アンドレ・ファーブル厩舎には、既に日本の競馬ファンにもお馴染みになったサヴァラン(牝2、父ディープインパクト)もいる。牡馬の精鋭を破ったG1サンクルー大賞(芝2400m)を含む3つのG1を制したサラフィナ(父リフューズトゥベンド)の4番仔で、1歳秋に渡仏。松島正昭氏と吉田照哉氏の共同所有馬として、8月6日にドーヴィルで行われたメイドン(芝1500m)でデビュー。ここで緒戦勝ちを飾ると、続いて出走したパリロンシャンのG3オマール賞(芝1600m)も制し、無敗の重賞制覇を果たした。凱旋門賞当日に行なわれたG1マルセルブーサック賞(芝1600m)では、極端に悪化した馬場に持ち味を活かせず7着に敗れたが、敗因が明らかだけに落胆の必要はない。依然として、来春のG1フランス千ギニー(芝1600m)の有力候補と目されている。

 ここまで記した馬たち以外にも、今年の2歳世代には、まだデビューしていない欧州拠点のディープインパクト産駒が複数いる。亡き父の名を更に高めてくれる活躍を見せるディープインパクト産駒が、来春のヨーロッパに出現することを期待したい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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