スマートフォン版へ

外国馬ゼロのジャパンカップについて

  • 2019年11月14日(木) 12時00分
 今年のジャパンカップに外国馬が1頭も出走しないことが明らかになった。創設39年目にして初めてのことである。

 かねてより、日本の検疫の厳しさと、芝コースの高速化が外国馬の関係者に嫌われていると指摘されてきた。特に、昨年アーモンドアイが記録した2分20秒6のレコードが出るような高速馬場が、普段は同じ距離で10秒ほど時計のかかる馬場で競馬をしているヨーロッパの関係者の参戦意欲を削いでいる。

 最後に馬券に絡んだ外国馬は、ディープインパクトが勝った2006年に3着になったウィジャボード。昨年は、外国馬の出走が史上最少タイの2頭だった。今年のゼロは、驚きではなかった。

 どうすれば、外国馬の出走数を増やすことができるのか。あるいは、そう考えるのではなく、すべてのGIが国際レースになったのだから、国際招待レースのあり方を見直すべきなのか。

 かつてジャパンカップの翌週に阪神(同週に東京で行われた年もあった)で行われていたワールドスーパージョッキーシリーズが2015年、夏の札幌に「引っ越し」をし、ワールドオールスタージョッキーズとして開催され、盛り上がりを見せている。

 以前は、ジャパンカップが行われるのに合わせて国際色を濃くしようとしていたわけだ。が、今は普段から短期免許で来日している外国人騎手が何人もいることに加え、クリストフ・ルメール騎手とミルコ・デムーロ騎手が日本の騎手になるなど、国際色が珍しいものではなくなっている(それは競馬界に限ったことではないのだが)。

 そろそろジャパンカップは国際招待レースの看板を下ろすべきなのか。この時期に芝2400メートルで実施している限り、アゴアシ付きで1着賞金が3億円と高額でも、外国馬の関係者にとって魅力的ではなくなったことは確かである。

 ジャパンカップの条件や施行時期をどうするかは、ジャパンカップ単体の問題ではない。

「世界に通用する馬づくり」をスローガンとし、「本場・欧米に追いつき、追い越せ」を合言葉にジャパンカップが創設されたのは、今から38年前、1981年のことだった。

 それにともない、11月末に行われていた天皇賞・秋の施行時期がひと月早められた。さらに、1度天皇賞を勝った馬は出走できないという「勝抜制度」を廃止(同年春の天皇賞から)。そして、1984年から天皇賞・秋の距離を3200メートルから2000メートルに短縮した。

 それにより、10月末(11月頭の年も)に2000メートルの天皇賞・秋-11月末に2400メートルのジャパンカップ-12月末に2500メートルの有馬記念という3つのビッグレースが行われることになり、チャンピオンディスタンス付近で強い馬たちのローテーションとなった。

 日本の馬にとっては、この3つのレースそれぞれと、この並びは、今も十分機能している。

 10月初めの凱旋門賞や、11月初めのブリーダーズカップに出走した馬たちを呼び込むことのできる時期にジャパンカップがあるわけだが、出ようとする馬がいないのだから、それらの馬の都合を考える必要はなくなったのではないか。仮に、あと5秒や6秒時計のかかる馬場にしたとしても、この状況が変わるとは思えない。

 どうしても国際招待レースをつづけるというのなら、野元賢一氏が昨年11月18日付のコラムに書いていたように、大阪杯と宝塚記念の間に、芝2400メートルあたりで強い古馬が出られるレースがないので、ジャパンカップを引っ越しさせるのもありだと、私も思う。あるいは、ジャパンカップと同じか近い条件のレースを新設するのもありだろう。

 今、5月は毎週東京でGIが組まれているので隙間がない状態だが、ゴールデンウィークのどこかに、東京芝2400メートルの国際招待レースを新設すれば、天皇賞・春のメンバーがさらに寂しくなるという問題が出てくるかもしれないが、大阪杯をGIに格上げしたのと同様の効果――強い日本馬が海外に出て行くことを抑止することは少なくともできる。それで外国馬が何頭も出走してくればよりいいのだろうが、
ひょっとしたら、ほかのGIと同じ普通の国際競走でもいいのかもしれない。

 この稿に、何年か置きに同じテーマのことを書いているので読み直してみると、凱旋門賞やブリーダーズカップに出た馬を呼び込むことへのこだわりや、香港の国際諸競走への評価や対抗心などの変化から、書くことが少しずつ変わっていてほっとした。

 議論というのは、私が世の中で嫌っていることのトップテンに入ることなのだが、時代とともに評価が変わるものこそ、議論しつづけることが大切なのか。

このコラムの通知を受け取りますか?

お気に入り

このコラムの通知を受け取りますか?

お気に入り

すでにお気に入りに登録しています。

登録済

作家。1964年札幌生まれ。ノンフィクションや小説、エッセイなどを、Number、週刊競馬ブック、優駿ほかに寄稿。好きなアスリートは武豊と小林誠司。馬券は単複と馬連がほとんど。ワンフィンガーのビールで卒倒する下戸。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』など多数。『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』で2011年度JRA賞馬事文化賞、小説「下総御料牧場の春」で第26回さきがけ文学賞選奨を受賞。netkeiba.com初出の小説『絆〜走れ奇跡の子馬〜』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリー『ダービーパラドックス』。

関連サイト:島田明宏Web事務所

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング