心機一転し、距離適正をつかむ
マイル戦は、様々な距離のレースの基本になるという考え方がある。ここから、これから先の可能性を見ることができるというのだ。確かにそういう見方もできるが、馬にはそれぞれに距離適性がある。それをどう見極めるか、これがかかわる者の重要な仕事なのだが、距離適性は各馬の体つき、筋肉の質、気性によって異なってくるので一定ではなく、時の経過に伴って変化していくのだ。そこをどうとらえるか、その選択と決断こそ未来に顔を向けることになっていく。心機を新たに、将来に賭けつづける、そこには過ぎたるを悔いずの心構えもある。
とにかく、年を重ねるごとに血統からくる肉体面が強く出てくるようになるので、長距離が得意になったり、短距離の方がレースがしやすくなったりする。この点は看過してはならない。ここ2年のマイルチャンピオンシップでは3歳馬が勝っているが、その2頭にははっきり共通点があった。
2017年のペルシアンナイトは、皐月賞2着、ダービー7着で春は線が細かったが、マイルCSでは筋肉がついて馬体重がダービー時より12キロ増え488キロまでになっていた。そして昨年これを破ったステルヴィオは、皐月賞4着、ダービー8着で春を終えていたが、毎日王冠2着を経て勝ったときは、ダービー時より体重が16キロ増えていた。
天高く、馬肥える秋ではないが、筋肉量が増えマイラーの体形になった馬はガッシリしてくるので分かりやすいが、そういう馬でも3歳の春は、トモ(後肢)を中心に馬体全体に筋肉が付き切っていない。それでも全身を使ってゆったり大きなフォームで走れるのでスタミナのロスを最小限に抑えて走れていたから、皐月賞、ダービーでもそれなりの成績を残せていたのだ。
マイルCSは、なん回も出走する馬が多いレースだが、最近では2013年、14年の皐月賞馬ロゴタイプ、イスラボニータがいた。ロゴタイプは4歳時が7着、5歳時が9着と不振だったが、6歳時安田記念で皐月賞以来の勝利を上げると、翌年も2着と好走し、東京は相性がよかった。この馬も、背腰、トモがしっかりしてきて、明らかにコロッとしたマイルの体形になっていた。イスラボニータも、両マイルGIに5回出走し勝ってはいなかったがその存在は示していた。ダービーでも2着に入っていた逸材だったが、フジキセキ産駒らしく、年を重ねて20キロ近く馬体は成長し、6歳の暮、阪神C1400mでコースレコードで有終の美を飾るまでに変身していた。
いずれのケースも、心機一転し距離適正をつかんでいた。これは今年も生きてくる筈だが、もう一点、ここまでのマイル戦での勝率の高さをつけ加えておきたい。これも勝敗に大きく影響している。