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【マイルCS】インディチャンプの快挙に池添騎手の冴えた騎乗

  • 2019年11月18日(月) 18時00分

2着以下の評価は慎重に


 春の安田記念を制した4歳牡馬インディチャンプ(父ステイゴールド)の、春秋のマイルGI制覇が決まった。同一年の春秋マイルGI制覇は、2015年のモーリスにつづき史上7頭目の快挙だった。

 騎乗した池添謙一騎手は、03年、04年に連覇したデュランダル、11年のエイシンアポロンと合わせマイルCS史上最多の4勝騎手となった。

 その池添騎手の騎乗は冴えていた。素早く好位を確保すると、ムリなく流れに乗って終始4、5番手。途中から1番人気のダノンプレミアム(父ディープインパクト)をマークするように進み、スパートしたのは残り200m標識の手前になってから。池添騎手本人がコメントしたように、安田記念までずっと騎乗していた福永祐一騎手の「インディチャンプの癖や特徴のアドバイス」を的確に生かし、追い出しを待ち、残り1ハロンからスパートしたのは安田記念とそっくり同じだった。

 直線に向いて勝機を察知したときの池添騎手は、とくにマイル戦だと、17年のレーヌミノルの桜花賞や、シンハライトの16年のチューリップ賞もそうだったが、いきなりエンジン全開をうながすのではなく、全力スパートに入るのは最後の1ハロン。必ずラップの落ちる最後の最後に勝負を決める流儀がある。今回のインディチャンプはまさにそういうタイプだった。彼を配した陣営の読み勝ちでもあった。

重賞レース回顧

持ち前の勝負強さを発揮した池添謙一騎手



 12月の香港マイルに向かう可能性が高い。前出のモーリス(父スクリーンヒーロー)は、安田記念→マイルCS連勝のあと香港マイルも勝っている。挑戦に踏み切って欲しい気がする。というのは、現在の日本の競馬と世界の競馬はきわめてむずかしい状況に陥っている。日本馬は世界のビッグレースに積極的に挑戦を続けている。同時に、海外の騎手は短期免許で争うように日本にくる。ところが、招待レースなのに外国馬0頭の前代未聞のジャパンCだけでなく、山のようにあるパートI国日本の国際レースは、海外から完全にそっぽを向かれ、馬は1頭も遠征して来なくなっている。

 多くの課題のうち、最大の問題は突き進む「高速馬場への傾斜」だとされるが、とてもそういう理由だけとは思えない。ふつうは楽しい招待レースにさえ、大切なトップホースは遠征させたくないのである。各国との交流(対戦)の姿勢は、実際のホースマンが打開の道を切り開いていくしかない。遠征の連続がきっと将来への指針となるだろう。

 レースは予測されていたようにスローの展開。もともと京都の1600mはバランスの取れた平均ペースになるが、前半3ハロン「35秒3」は最近10年ではもっとも遅く、過去20年にさかのぼっても2番目。半マイル「47秒2」も過去20年で2番目タイの非常に緩いペースだった。

 勝ったインディチャンプだけが光りすぎたので、2着以下はレースレベルを考えるとあまり高い評価はできない。レーティングも伸びないだろう。

 1番人気のダノンプレミアムは、好位抜け出しのこの馬のパターン通りのレース運びで2着なので、少しの落ち度もない。レース間隔は詰まっていたが、パドックなどレース前のチャカつきはいつもより軽かった。緩いペースも3走前のマイラーズCの超スロー「48秒5-44秒1」=1分32秒6(自身の上がり32秒2)で楽勝しているので、合わないはずはないが、今回は能力を全開しての2着ではないように映った。川田騎手には「楽な流れに迎合しすぎたかもしれない」、そんな悔いがあるのではないかと思えた。

 ベストの距離なのに、もう少しで3着ペルシアンナイト(父ハービンジャー)に差されるところだった危ない2着は、天皇賞(秋)のゴール前と同じだった。まだ4歳、キャリア10戦だけ。次走はもっと強気に出るだろう。

 その5歳ペルシアンナイトは、2着だった昨年とピタリ同じ1分33秒3。上がり33秒7も昨年の33秒9とほとんど同じだった。2017年に勝ったときが稍重で1分33秒8(自身の上がり33秒9)。3年連続して同じ内容は珍しい。ニキーヤ(祖母)の一族は非常にタフなので、ひょっとすると来年も格好の能力の目安となってくれるかもしれない。

 押し出される形でハナを切ったマイスタイル(父ハーツクライ)は、たしかに恵まれた展開だったが、4歳春から田中勝春騎手とコンビで【3-3-1-6】の好成績。負けたとはいえ、GIで4着(10番人気)はすばらしい。前週に3勝もした田中勝春騎手に活気がもどっている。まだまだ活躍できるだろう。勝春騎手は、今週から来日する予定のランフランコ・デットーリと同じ48歳である。

 2番人気のダノンキングリー(父ディープインパクト)は、初の関西遠征でも馬体の変調はなく絶好の気配に映った。4コーナーでも手応え十分。「直線に向いたときは、はじけるだけだと思っていた(横山典弘騎手)」。ところが、初めての京都だったためか、今回が7戦目となるもっとも浅い戦歴が経験不足となったのか、まったく脚を使えなかった。大跳びのフットワークに最内の芝も有利ではなかったろう。

 直線の脚が目立ったのは、6着の3歳馬カテドラル(父ハーツクライ)。最後は前が狭くなって十分に追えない態勢になりながら、上がり33秒4は最速だった。とくに東京コースに変わって注目したい。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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