スマートフォン版へ

世界の来季種付け料の動向について(前編)

  • 2019年11月20日(水) 12時00分

北米供用種牡馬で最も高額となったのは…


 11月に入り、2020年の種付け料が北半球各地の種馬場から発表になっている。このコラムでは今回と次回の2度に分けて、来季の種付け料の動向をご紹介したい。

 まず今週は、北米編から。

 2020年、種付け料を公示している北米供用種牡馬で最も高額となったのは、2019年に続いて、クレイボーン・ファームで繋養されているウォーフロント(父ダンジグ)となった。年が明けると18歳となる同馬の種付け料は、前年と同額の25万ドル(Stands and Nurses)と発表された。

 蛇足ながら、カッコ内の“Stands and Nurses”についてご説明させていただくと、日本供用のほとんどの種牡馬にも付随している、「受胎確認後」とか「生後」などと同じカテゴリーにある、支払い条件である。

「生後」を意味する“Live Foal”とかなり近いが、生まれただけではなく、生まれた子が立ち上がり、母親のミルクを飲み始めたら、その段階で支払いが確定するのが”Stands and Nurses”だ。Live Foalでなければ、立ち上がってミルクを飲めるわけがないから、種牡馬によっては支払い条件として“Live Foal”と“Stands and Nurses”を併記している場合もある。

 この場合、“LFSN”と省略して記すことも多い。すなわち、種付け料の横にLFSNと併記されていたら、「元気な子供が生まれたら、種付け料を払ってね」というのが条件である。

 閑話休題。現役時代は13戦し、当時はG2で、その後G1に昇格したAGヴァンダーヴィルトS(d6F)を含む4勝を挙げたのがウォーフロントだ。07年に種牡馬入り。

 初年度産駒からG1マリブS(d7F)やG1パットオブライエンS(AW7F)を制したザファクター、G1デルマーオークス(芝9F)を制したサマーソワリー、G1メイカーズ46マイル(芝8F)を制したデータリンクらが出現。これを皮切りに続々と活躍馬が誕生した。

 ことに、2年目以降も、G1クイーンアンS(芝8F)やG1インターナショナルS(芝10F56y)を制したデクラレーションオヴウォー、G1デューハーストS(芝7F)を制し2歳牡馬チャンピオンとなったエアフォースブルーやユーエスネイヴィーフラッグ、G1チーヴァリーパークS(芝6F)を勝ち2歳牝馬チャンピオンとなったブレイヴアナなど、芝でのA級馬が続々と登場。

 クールモアグループがサポートするようになり、市場での価値も高騰した。

 初年度は1万2500ドルだった種付け料が、12年には6万ドル、14年に15万ドル、16年に20万ドル、そして17年に25万ドルに上昇。19年も、G1アーカンソーダービー(d9F)やG1サンタアニタスプリントCS(d6F)を制したオマハビーチや、G1プリークネスS(d9.5F)を制したウォーオヴウィルらが出て、20年も北米最高価格を維持することになった。

 ただし、である。北米にも種付け料を公示せず、“Private”とのみ発表されている種牡馬が何頭かいて、そのうちの1頭であるアメリカンフェイローだ。

 ご存知、15年の北米3冠馬アメリカンフェイローは、16年にアシュフォードスタッドで種牡馬入りし、今年初年度産駒がデビュー。G2BCジュヴェナイルターフスプリント(芝5F)をはじめ3頭の重賞勝ち馬が出現。

 ファーストクロップサイヤーランキングで首位に立ち、2歳リーディングでも2位に食い込んでいる(11月15日現在)。場合によっては、アメリカンフェイローの実勢価格が、ウォーフロントの上を行く可能性は否定できない。

 種付け料が公示されている種牡馬の第2位は、20万ドルで3頭が横並びとなっている。

 1頭は14年から16年まで3年連続全米リーディングとなったタピットだ。ゲインズウェイで供用されている同馬の種付け料は、15年に30万ドルまで上昇した後、19年に22万5千ドルに減額され、20年は更に下がって20万ドルと公表されている。

 一方、前年の15万ドルから20年は20万ドルに増額されるのが、レーンズエンドで供用されているクオリティロードだ。19年は、G1ペガサスワールドC(d9F)を制したシティオヴライト、G1サンタアニタオークス(d8.5F)などを制したベラフィーナ、G1サンタアニタダービー(d9F)などを制したロードスター、G1アラバマS(d10F)などを制したダンバーロードらが登場。産駒の活躍を受け、20万ドルの大台に乗ることになった。

 更に、ダーレー・アメリカのメダグリアドーロが、19年と同額の20万ドルと公表されている。

 欧州供用種牡馬の2020年種付け料については、来週のこのコラムでご紹介したい。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング