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外国馬を呼び込む必要って…ありますか?

  • 2019年11月23日(土) 12時00分

外国馬不在は、実は歓迎すべきことかも


 今週はジャパンC。といっても、39回目にして初めて、外国馬不在のレースになってしまいました。これを“由々しき事態”と捉えている人はどのくらいいるのでしょうか?

 まず、日本の馬主さんからすれば、外国馬に賞金を持って行かれる可能性がなくなったわけですから、むしろこれは“歓迎すべきこと”かもしれません。

 次に、馬券を買う側のファンにとっては、日本馬だけの力量比較をすればいいので、ふだんのレースと同じように予想を組み立てられます。馬券は買いやすくなったと言えるでしょう。

 そして主催者のJRAは…。馬主さんにもファンにも“いいこと”なら、わざわざジャパンCの改革に取り組む必要はない、と考えても不思議ではないと思います。

 このところ、海外競馬のビッグイベントといえば、馬の性別、年齢や競走の距離など、条件をさまざまに変えながら、いくつもの重賞を1日または2日間に集中開催するスタイルが主流になっています。

 外国馬に数多く参戦してもらうため、日本でもこれを取り入れたらどうか?というご意見もあるようです。でも、そうするには、前哨戦やトライアル競走の日程も、集中開催に向けて揃えなくてはなりません。当然ながら、重賞が集中する週とそうでない週との“格差”は大きくなるでしょう。

 去年、複数のG1競走を同日に開催するJBCが京都で行われましたが、クラシック以外の2競走の馬券売上は今ひとつでした。そういうところからしても、日本でブリーダーズCやドバイワールドC、香港国際競走のようなイベントを開催するのは難しそうです。

 もう1つ、外国馬来日に立ち塞がる“壁”になっているのが、日本特有の“高速馬場”と言われています。

 単純に、スピードが出過ぎると故障馬が多くなる、とは言えないとのこと。日本馬の能力が上がり、主催者が走りやすい馬場を丁寧に整備しているからこそ、速い馬がより速く走れるわけです。

 ファンの側からすると、タイムが大きな手がかりになりますから、高速馬場のほうが予想しやすいのではありませんか?

 海外にも、日本の高速馬場に対応できる馬はいるはず。しかし、日本馬がロンシャン競馬場(馬場の作りが日本とまるで違うところ)で行われる凱旋門賞制覇を“悲願”としているのと同じように、是が非でもジャパンCを勝ちたいと思っている外国勢は、はたしてどれほどいるでしょうか?

 最近はジャパンCに限らず、国内で開催される国際競走に外国馬が参戦することは少なくなっています。要するに、ジャパンCだけを改革すればそれで済むという問題ではないような気がします。そもそも、何としてでも外国馬を呼び込む必要はあるのか?議論はそこから始めなければならないと思うのですが…。

テレビ東京「ウイニング競馬」の実況を担当するフリーアナウンサー。中央だけでなく、地方、ばんえい、さらに海外にも精通する競馬通。著書には「矢野吉彦の世界競馬案内」など。

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