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2020年ロイヤルアスコット開催、賞金の大幅増額へ

  • 2019年12月11日(水) 12時00分

名誉と賞金の差が埋まりつつある


 2020年のロイヤルアスコット(6月16日〜20日)で、2つのミリオンポンド競走が施行されることになった。主催するアスコット競馬場から、3日に発表があったものだ。

 今年は75万ポンド(約1億600万円)だった芝10F路線のG1プリンスオブウェールズSと、60万ポンド(約8500万円)だった芝6FのG1ダイアモンドジュビリーSの総賞金が、2020年はいずれも100万ポンド(約1億4100万円)に増額されることになったのだ。

 後の国王エドワード7世が皇太子(Prince of Wales)だった1862年に創設され、150年以上の伝統を誇るのがプリンスオブウェールズSだ。パターン競走のシステムが導入された1971年にはG2の格付けに甘んじたが、10F路線の重要性が見直されるにつれて出走馬の水準が上がり、2000年にG1に昇格。昇格元年の同競走をドバイミレニアムが制したのを皮切りに、勝ち馬のリストには名馬の名がずらりと並ぶ。

 2019年も、1着クリスタルオーシャン、2着マジカル、3着ヴァルトガイストと、ワールドランキング(11月10日現在)の首位タイに名を連ねる2頭と、芝の「I」カテゴリーで世界2位タイにランクされている1頭という、極めてレベルの高い馬たちが上位を占めている。

 一方、1868年に創設されたオールエイジドSが前身となっているのがダイアモンドジュビリーSだ。1926年にコーク&オレリーSに改称された後、エリザベス女王の即位50年を迎えた2002年に、これを祝うべくゴールデンジュビリー(50周年の意)Sに改称。さらに、即位60年を迎えた2012年にダイアモンドジュビリー(60周年の意)Sに改称され、今日に至る。

 パターン競走の制度が導入された1971年、当時のオーク&オレリーSはG3の格付けだったが、1998年にG2に、2002年にG1に昇格している。2003年には豪州から遠征してきたショワジールが、2005年には香港から遠征してきたケープオブグッドホープが、そして2012年には豪州から遠征してきた歴史的名馬ブラックキャビアが優勝するなど、ロイヤルアスコットのG1でも国際色が最も強いレースとなっている。

 プリンスオブウェールズSもダイアモンドジュビリーSも、権威と言う点では既に充分すぎるものを築いていたが、賞金の面でも、それぞれの路線の最高峰に位置付けされるに相応しい額が付されることになった。

 2020年のロイヤルアスコットは更に、1レースあたりの総賞金の最低額が、前年の9万ポンドから9万5千ポンド(約1340万円)に増額される他、2日目に組まれた3歳馬の長距離戦G2クイーンズヴァーズ(芝14F34y)の総賞金が、2019年の22万5千ポンドから25万ポンド(約3625万円)に増額され、5日間を通じた賞金総額は、2019年の733万ポンドから、2020年は809万5千ポンド(約11億4000万円)と、10%以上も増額されることになった。

 王室主催のロイヤルアスコットは、そこに出走馬がいるだけで、馬主や調教師にとって名誉とされる開催だが、賞金が多いに越したことはなく、2020年は日本から複数の馬が参戦することを期待したい。

 アスコット競馬場は更に、2020年を通じたアスコット開催の総賞金が、統括団体であるBHAの主催となるブリティッシュ・チャンピオン・デイを除いて、1440万ポンド(約20億8800万円)になることも発表。2019年が1358万1千ポンドだったから、6%もの増額となる。もう少し遡れば、2010年の総賞金は870万ポンドだったから、この10年でアスコット競馬場の賞金水準は65%も上昇したことになる。

 日本の賞金とは依然として比ぶべくもないが、イギリスの競馬と言えば「権威はあるが、賞金は安い」という通り相場が、徐々にではあるが改善されつつあるのは、英国贔屓の筆者としては同慶の至りである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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