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「有馬記念は本当にアーモンドアイ1強なのか!? 日刊紙記者が出走有力馬をさまざまな角度から徹底討論!」 山河浩×高木翔平×坂本達洋(前編)

  • 2019年12月16日(月) 18時00分
有馬座談会

取材ベースの安定感ある予想で定評のあるスポーツ報知・坂本達洋記者(左)と穴党が揃う東京スポーツでも屈指の穴馬ハンター・山河浩記者(中)、スポニチの期待を背負う“持ってる男”高木翔平記者(右)


アーモンドアイの有馬記念参戦で、大いに沸く競馬界。これまで圧倒的な力を見せつけてきたアーモンドアイだけに、ここでも人気を集めることは必至。しかし不安要素がないかといえば、そうではなさそうだ。今回は日刊紙3紙の記者にご登場いただき、有馬記念への展望をうかがった。前編の今回は、有力牝馬2頭について。(取材・文・構成=緒方きしん)


歴史的名牝が有馬記念に緊急参戦!



スポーツ報知・坂本達洋(以下、坂本) 歴史的名牝、アーモンドアイ参戦。この数週間で、今年の有馬記念の位置付けが大きく変わってきました。

東京スポーツ・山河浩(以下、山河) 今年は非常に「使い分け」のうまくいっていた一年だった。それがこの年の瀬に、いきなり有力馬が集結することになったからね。ついこの間までは1番人気であろうリスグラシューの取捨選択に頭を悩ませていたのが、今はアーモンドアイの取捨選択に頭を悩ませることになった(苦笑)。

スポーツニッポン・高木翔平(以下、高木) 正直な話、どの陣営も「アーモンドアイが出てくるなんて聞いてないよ!」と言いたいところでしょう。ここを目標にしていた陣営も多かっただけに…。現場でも「今年は凄いメンバーだから」と弱気な発言をよく耳にします。秋口なんて、今年の有馬記念は随分と寂しいメンバーになると思っていたのですが。

山河 GI馬を数えていけば凄いレースだなとは思うけど、結局のところ『アーモンドアイ1強』というレースでもあるよね? どの馬もレベルは高いけど、アーモンドアイが絶対的中心になるという点においては揺るぎないと思う。

坂本 そうした絶対的中心の参戦で、展開面にも影響は出るはずです。中団に付けたアーモンドアイの決め手を封じるため、先行勢は2周目の3角過ぎから早めのスパートするでしょう。前崩れとなって決め手勝負の馬が台頭したり、後続から伏兵が突っ込んだり…というパターンを意識して予想を組み立てたいですね。

有馬座談会

アーモンドアイ1強の気配濃厚だが、馬券的にはここが切りどきと腕を撫す東スポ・山河記者



馬券的には切り時だが、不安要素をアッサリ跳ね返す可能性も



山河 ただし、見方によっては「一番危険な人気馬」と呼べないこともない。むしろ不安要素はいくらでもあげられるし、馬券的に考えると切り時かな?

高木 アーモンドアイが負けるなら、ここでしょうね。大きな不利があった安田記念は別として、真正面からアーモンドアイに勝利できる可能性がある、数少ないレースになるのではないでしょうか。

坂本 2500mという初距離、中山競馬場という初コース。試したことのない条件が揃っているんですよね。広い東京競馬場であれば結構な不利があってもリカバリーできる脚があると思うんですが、小回りの中山では少しのミスを挽回できないままゴールということも十分あり得ます。この頭数になれば、なおさらです。

山河 そうはいっても、距離が原因で負けるということは考えていないかな。昨年のオークスやジャパンCを見ても、少なくとも2400mは問題ない。今年マイルから中距離を主戦場にしていたのは、あくまで他馬との使い分け。だからこそ、アーモンドアイが負ける理由を探すなら、「中山適性がなかった」「状態がイマイチだった」のどちらかに絞って良いと思う。

坂本 状態面がカギになると思います。10月-12月で2戦使おうと臨んだであろうこのシーズン、香港カップを回避したタイミングで残されていた選択肢は非常に限られたものでした。これほどの注目馬ですから、さすがに秋1戦では終われない…ということで挑むのであれば、そのあたりに怖さが潜んでいそうです。あとは一度ピーク近くにまで仕上げていた陣営が、どううまく大一番へ持って行けるかでしょう。

山河 ポジティブに考えるなら、開催が危ぶまれていた香港国際競走を緊急回避したことを考えた調整をしている可能性もあるという点。ましてや超一流の国枝調教師だし、回避の理由だって脚部不安ではなく熱発でしょ。中山適性については…一流の牝馬って、じつはなかなか中山競馬場を走る機会に恵まれないんだよね。だから、過去に有馬記念を好走した牝馬って初中山競馬場という馬が意外と多い。ジェンティルドンナとか、ダイワスカーレットとか。まぁ、彼女たちは自分でレースを作るタイプの馬だから、アーモンドアイとは別タイプではあるけれど。

高木 ここしばらく左回りが続いていたのも気になります。ただし、この馬に関していえば、状態さえ整っていればそうした条件面は関係ない次元の馬かもしれません。僕はアーモンドアイが出るレースで、ずっと理由を探しては逆らい続けて、その度にやられ続けてきました(笑)。この馬は条件不問のスーパーホースなんだと、ようやく諦めがつき始めています。

有馬座談会

状態面に加え、未経験の条件が重なるため、アーモンドアイ絶対視には警鐘を鳴らすスポーツ報知・坂本記者



GI連勝中のリスグラシューにも隠れた不安要素あり!?



山河 リスグラシューも強い。勢いと実績があるし小回りも得意、先行抜け出しもできる、状態面も心配なし。ハーツクライ産駒というのも、何か大きなことをやってくれそうだと思わせてくれる。

坂本 レーン騎手を手配できたのが大きいです! 矢作調教師の勝負気配がヒシヒシと伝わってきます。春3戦で休養を挟んで秋1戦という臨戦過程も良い。何より、有馬記念を目標にしてきたという強みもあります。

高木 マイナス点をあげるなら海外帰り1戦目の牝馬ということですが…リスグラシューの場合、香港帰りで宝塚記念を制覇していますから、そのあたりも不安要素がないんですよね。海外遠征に実績のある矢作調教師が管理しているのも心強いです。

坂本 この馬もアーモンドアイ同様に初めての中山競馬場ですね。ただ、オーストラリアで直線が200mにも満たない超小回りのムーニーバレー競馬場を克服して快勝しているから、文句のつけようがなさそうです。

山河 ただ、危険なのはそうした『いろいろできてしまうこと』なのかもしれない。前走小回りの競馬場で、後方にポジションをとって3角からマクっていく競馬で強い勝ち方をしてしまった。有馬記念では宝塚記念のような前目につけての競馬がいいと思うんだけど、前走が強い勝ち方だったからこそ、陣営がその競馬に固執してしまうと…大きく負けてしまう危険性もあると思う。

高木 あとは、どれくらい強い馬に勝ってきたのか? という点が気になります。GI連勝も、今回の有馬記念と比べてどれほどのメンバーだったかは一考の余地ありです。単純計算になってしまいますが、ダノンプレミアムを物差しにした場合、春の金鯱賞で0.2秒差をつけられて完敗したリスグラシューと、天皇賞秋で0.5秒突き放したアーモンドアイ。この観点だとかなり実力差がある可能性もあります。

 不安要素がありながらも能力は絶対的なアーモンドアイ。その牙城を崩す馬はいるのだろうか? 後編では「3歳勢力」「古馬勢力」から魅力ある馬をピックアップしていく。

有馬座談会

スポニチの“持ってる男”高木記者は、これまでアーモンドアイに逆らい続けてきたが、その強さを何度も見せつけられ、さすがに今回は脱帽



今年の有馬記念は波乱か? テッパンか? ユーザーアンケート実施中! さらに今年の注目馬、穴馬、好走ポイントなどを倉本匠馬が展開面から解説。予想の参考にぜひ!

高回収率をたたき出す馬券のプロたちは、どのような視点で重賞レースにアプローチをしているのか。ときに冷静に、ときに大胆に直球勝負で攻める予想家たちの熱き見解は必見。 関連サイト:ウマい馬券

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