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氷点下のなか行われた「ばんえいオークス」

  • 2019年12月11日(水) 18時00分

寒さの厳しい時期だからこそ、熱いイベントを


 12月8日(日)に帯広競馬場を訪れた。この日、香港のシャティン競馬場ではG1競走が4つ組まれ、日本馬がそのうち3レースを制するという大活躍であった。阪神では阪神JFが行なわれ、レシステンシアが2歳女王に輝き、また、中山のカペラステークス(GIII)では、コパノキッキングに騎乗した藤田菜七子騎手が、日本人女性騎手としては初めてとなる中央での重賞制覇を成し遂げ、大いに湧いた。

 そんな中、午後7時5分に発走時刻を迎えたのが「第44回ばんえいオークス」である。

 その名の通り、こちらも、3歳牝馬の頂上決戦であり、年間8レース実施されるBG1競走のうちのひとつだ。3歳牝馬の一線級が揃い、1着賞金150万円をかけて行なわれる。

 正式には「ソメスサドル杯ばんえいオークス」である。ソメスサドル(株)より馬主、調教師、騎手、厩務員に記念品が提供されており、他にも日本馬事協会会長賞、農業法人鎌田きのこ(株)からも記念品が贈られる。また主催者である帯広市より生産者賞として、1着35万円、2着20万円、3着10万円が交付される。

生産地便り

一早く第二障害を下りるジェイカトレア号


 馬場水分2.3%。斤量670キロの条件で、定刻通りにスタートした。レースは圧倒的1番人気(1.5倍)に支持されたジェイカトレアが一早く第2障害を越え先行すると、そのまま他馬の追撃を退け、1分57秒6のタイムで優勝した。2着には6番人気のクイーンヴォラ(渡来心騎手)、3着には9番人気アアモンドラッシュ(松田道明騎手)が入った。

生産地便り

ばんえいオークスを制したジェイカトレア号


 優勝したジェイカトレアは、父トカチタカラ、母コウエイヒカル、母の父ブラックジョージという血統の3歳牝馬で、藤野俊一騎手が騎乗。平田義弘厩舎の管理馬で馬主は小森唯永氏。生産者は足寄郡陸別町・岡明美氏。今年2月に行なわれた黒ユリ賞に続き、これで2つ目の重賞タイトルを獲得した。通算成績は46戦9勝、2着5回、3着4回。獲得賞金は422万5000円。

生産地便り

表彰式に並ぶ馬主、調教師、騎手


生産地便り

ばんえいオークス、口取りの様子


 この日の帯広競馬場は、例年よりも(たぶん、だが)寒く、ばんえいオークスの発走時刻の頃には、おそらく氷点下6度か7度に達していたのではなかろうか。これだけ寒いと、さすがに外での観戦は厳しく、私も完全防寒スタイルで出かけたが、じっとしていると足もとから冷気が上がってきてブルブル震えるほどであった。

生産地便り

ジェイカトレア号を勝利に導いた藤野俊一騎手


 これくらい寒くなると、いくらオークスデーとはいえ、戸外での催しはやや辛い。何とかオークスを盛り上げるようなイベントが欲しいところだが、これではあまりにも寒過ぎて、外での実施は難しくなる。レースが始まっても、多くのファンは暖房の効いたスタンド内にとどまり、エキサイトゾーンまで下りてきて間近で観戦する人は少なかった。

 しかし、寒さが増してくるこの時期から来春3月のばんえい記念までが、本格的なばんえい競馬のシーズンになる。現に前述したBG1に格付けさけている8レースのうち8月に行なわれるばんえいグランプリ以外の7レースが、12月〜3月に集中しているのだ。

 オークスのみならず、ダービーも同じ12月である。今年は暮れも押し迫った12月29日に行なわれる。年末年始の休みに入る29日であれば、十勝地方に帰省している人々などが来場してくれる余地もあり、それなりの盛り上がりが期待できるかもしれないが、こと今回のオークスに関しては、やや盛り上がりの乏しい淡々とした中でのレースになったような気がする。寒さの厳しい時期なので、華やいだ雰囲気を演出することが難しいとはいえ、何か来場者をグッと惹きつけるような魅力のあるイベントが欲しいと思う。

 この日の入場者数は1494人、売り上げは1億6356万9200円。因みに、翌9日(月)は、入場者数は621人、売り上げが1億7401万6800円であった。

 皮肉にも月曜日の方が人は少ないのに、馬券は多く売れているのは、もちろんネット発売主体に起因するわけだが、せっかく入場してくれた1494人に、中央競馬の発売(言うまでもなく、帯広競馬場は2階で中央の馬券を発売しており、それを目当てに来場するファンも数多い)が終わってからもそのまま競馬場に居残ってもらえるようなアイデアが欲しいと思う。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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