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名牝の時代と10大ニュース

  • 2019年12月26日(木) 12時00分
 有馬記念でリスグラシューが見せた強さは衝撃的だった。2着との着差が5馬身、タイム差は0.8秒もあった。

 有馬記念を勝った牝馬は、過去に、1959年ガーネツト、1960年スターロツチ、1971年トウメイ、2008年ダイワスカーレット、そして2014年ジェンティルドンナと5頭いたのだが、もちろん、リスグラシューの5馬身が、牝馬がつけた最大着差である。

 とはいえ、過去の女傑たちもなかなか強烈で、ガーネツトは4馬身、スターロツチは1馬身3/4、トウメイは1馬身半、ダイワスカーレットは1馬身3/4、ジェンティルドンナは3/4馬身と、どの馬もチョイ勝ちではなく、牡馬勢を圧倒している。

 びっしり併せて首の上げ下げになると牡馬の圧力がモノを言うが、そういう形にならなかったとき、牝馬の瞬発力が生きてくる、ということか。

 アーモンドアイがゴール前で沈んだのはショックだったが、そのぶん、リスグラシューには「いいものを見せてもらった」という感じがする。

 実は先週、別のある牝馬も、個人的に嬉しい走りを見せてくれた。

 有馬記念の前日、12月21日の土曜日、阪神芝1800mで行われた2歳新馬戦で、トウケイミラがデビューし、8着となった。11代母が、明治時代にオーストラリアから輸入された名牝ミラという、私が追いかけている馬なのだ。8着とはいえ、最後までバテていなかったし、直線でスムーズだったら掲示板ぐらいはあったかもしれない。今後に期待が持てる一戦だった。

 牝馬というと、最近、時間の感覚がおかしくなったのか、ウオッカが世を去ったのが今年のことのような気が、なぜかしない。現役引退後はアイルランドで繁殖牝馬になったので、ずいぶん前に遠くに行ってしまったように感じていたからだろうか。

 さて、矢野吉彦さんが先週のコラムで「2019私の競馬10大ニュース」を発表していたが、かぶらないよう、「私が思う2019年の競馬10大ニュース」をランク付けするとしたら、どうなるだろうか。

10位「オジュウチョウサン二刀流継続」
 中山グランドジャンプはさすがの強さ。ステイヤーズステークスは勝ったかと思わせる6着と健闘。

9位「降級制度廃止とクラス名変更」
 そのほかリステッド競走の実施など、新時代の競馬がスタート。

8位「クリソベリル無敗のダート王に」
 昨年のルヴァンスレーヴにつづき3歳馬がチャンピオンズカップを圧勝。米国三冠に挑戦したマスターフェンサーなど、ダート界でニューヒーローが躍動。

7位「ジャパンカップ外国馬ゼロ」
 その代わり、外国人騎手は豪華。JRA・GIにおける彼らの強さも相変わらず。

6位「ノーザンファームGI最多勝記録更新」
 有馬記念まで平地GI23レースのうち19勝という独占ぶり。

5位「武豊騎手3元号GI制覇」
 昭和、平成、令和にまたがる偉大な記録を、菊花賞制覇で達成。

4位「日本馬海外で活躍」
 アーモンドアイがドバイターフ、ウインブライトが香港カップ、グローリーヴェイズが香港ヴァーズ、アドマイヤマーズが香港マイルを制覇。

3位「藤田菜七子騎手重賞初制覇」
 12月8日、カペラステークスをコパノキッキングで優勝。JRAの女性騎手として史上初のJRA重賞制覇。

2位「ディープインパクトら名馬の死」
 ディープインパクト、キングカメハメハという日本の種牡馬のツートップ、名牝ウオッカなど、名馬が世を去った。

1位「リスグラシューら名牝の時代」
 リスグラシューとアーモンドアイという2頭の歴史的名牝が王座を争った。

 といったところか。

 ホープフルステークスを勝った馬が初めて2歳王者になったりすれば、それもトップ10に入ってくるかもしれない。

 今年も一年間ありがとうございました。よいお年をお迎えください。

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作家。1964年札幌生まれ。Number、優駿、うまレターほかに寄稿。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』(2011年度JRA賞馬事文化賞受賞作)など多数。netkeiba初出の小説『絆〜走れ奇跡の子馬〜』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリーシリーズ第6弾『ブリーダーズ・ロマン』。プロフィールイラストはよしだみほ画伯。バナーのポートレート撮影は桂伸也カメラマン。

関連サイト:島田明宏Web事務所

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