高い完成度ゆえに春への課題も
断然の1番人気に応えたコントレイル(父ディープインパクト)の完勝だった。パドックでも落ち着き十分、ひときわ目立つ好馬体、好気配を示し、レースでの位置取りも理想的。隊列が決まってからは、まったく危なげなかった。
レース全体のバランスは、前後半「60秒9-60秒5」=2分01秒4。14年から中山コースの重賞になったホープフルS(最初はGII)の勝ち時計は、不思議なことに、これで6年連続して「2分01秒台」となった。昨年までの平均が2分01秒6なので、今年の2分01秒4は目立つものではないが、初コース、初距離、最終週の少々タフな芝コンディションをこなしたことで、満点の内容としていい。
コントレイルのように、クラシックに強く結びつく2歳11月の東京スポーツ杯1800mを勝ったディープインパクト産駒は、過去、2011年ディープブリランテ、2017年ワグネリアンの2頭。2頭ともに翌年の日本ダービー馬となっている。ただ、ディープブリランテは東スポ杯のあと休養し、復帰後3連敗のあと、宿願の日本ダービーを制した。ワグネリアンも東スポ杯のあと休んで、3歳時に2連敗のあと、最大目標の日本ダービーを勝っている。今年のコントレイルは、東スポ杯を1分44秒5のJRA2歳レコードのあと、ホープフルSを快勝し無敗の3連勝となった。このあとは、昨年のこのレースを勝ち、ぶっつけで皐月賞を制したサートゥルナーリアと同じローテーションを展望する。
早々と2歳重賞を勝ち、まして連勝するほど完成度が高いと、3歳春のクラシックを勝つのは容易ではないとされるが、大丈夫だろうか。前身のラジオNIKKEI杯2歳S(阪神)当時を含め、2歳12月のこの2000m重賞を制したディープインパクト産駒は過去に4頭いる。その皐月賞成績は「3着、不、不、不」。日本ダービーは「不、不、不、不」という信じがたい記録がある。コントレイルはそういうタイプでも、その程度の器ではないはずだが…。入念なオーバーホールで再鍛錬したい。
矢作調教師は「もっと身体を充実させ、スケールアップしたい」と、これからの大きな成長に期待している。コントレイルはすでに、ディープインパクトの最良の後継馬をも予感させる3戦3勝のGI馬となったが、ディープインパクトと良く似たタイプで、弾むようなバネが身上だとすると、あまり重厚にならない方が良く(最近ではワグネリアン型)、キズナ型ならもっと迫力のパワーを前面に出すタイプに育つことになるが、はたして皐月賞のころはどんなタイプになっているのだろう。
さらなる成長と飛躍が期待されるコントレイル(撮影:下野雄規)
2着に押し上げたヴェルトライゼンデは、いかにもステイゴールド系だった父ドリームジャーニー(430キロ前後)と違い、がっちり体形のパワー優先型のイメージを与えていたが、今回はシャープな体形に映った。萩Sの当時より、胴も少し伸びた印象がある。
スタートはあまり良くなかったが、O.マーフィー騎手は1コーナーまでに中位のインを確保し、好位のコントレイルをピタッとマークするレースに持ち込んだ。直線、追い出すと最後にちょっとフットワークが小さくなり、余力のあったコントレイルとの差は詰まらなかったが、上がりは勝ち馬と同じ最速タイの35秒8。軽いスピード系ではないので、これから一戦ごとに成長カーブを描いてくれるだろう。
3着ワーケア(父ハーツクライ)は、スタート直後の位置取り争いで挟まれて下がり、道中も動きにくいポケットに入ってしまった。直線は外に回って追撃したが、鋭く追い込むという形にはならず、上がり35秒9は1着、2着馬とほとんど同じ。
力強い腰のあたりが目立つパワフルな体型だが、今回はちょっと寸詰まりに映ったあたり、上位陣の中ではもっとも成長途上の若さを感じさせる身体だった。それだけにこれから大きく変わる可能性を秘めている。
ラインベック(父ディープインパクト)は、ずいぶん静かでおとなしい気配だった。流れに乗って、勝ち馬と0秒8差。全兄モクレレも、全兄ジナンボーも、途中の故障は別にしても遅咲きタイプだが、この弟もなんとなく与える印象が同じ。やがてそのうちに…のタイプか。でも、前走のコントレイルとの差1秒5は半分に詰まった。
スケール豊かな好馬体のオーソリティ(父オルフェーヴル)は、今回も馬っ気を出すシーンが何度もあった。古馬になってもずっと変わらず、それでもトップホースに大成したホウヨウボーイ(有馬記念、秋の天皇賞など)に比べればかわいいもので、大きくレースに影響するほどではないが、幼い印象を与えてしまった。スタート直後にワーケアとともに不利を受け、本意ではない位置取りから一気にスパートする形になったが、最後までバテてはいない。祖母シーザリオ。春シーズンになって一気に変わる可能性がある。