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【中山金杯】幸先のいい重賞制覇

  • 2020年01月07日(火) 18時00分

ベテランホースが独占した案外なレース


 勝ったのは、直前の7Rで落馬事故に巻き込まれて負傷した三浦皇成騎手から乗り替わった、M.デムーロ騎手の6歳セン馬トリオンフ(父タートルボウル)。上位5着までを6-7歳のベテランホースが独占することになった。

 同時に、実績が評価され前回より負担重量増となった馬が2013年以降8連勝となり、ハンデ戦なのに、軽ハンデの快走がほとんどなくなり(最近10年、軽ハンデ馬の連対は54キロの2着が1頭だけ)、最近10年、うち8回の勝ち馬が3番人気以内という非常におとなしい中山金杯が続いている。

 昨年、乗り馬に恵まれずジョッキーランキング8位の91勝(重賞3勝)にとどまり、しばらく関東圏で騎乗することを明らかにしていたM.デムーロ騎手には、思いがけない突然の有力馬への騎乗だった。これに気を良くして積極騎乗になったことはいうまでもなく、先行馬が少なかったとはいえ、前後半「60秒2-59秒3」=1分59秒5の先行タイプ向きの流れに乗り、4コーナー先頭から幸先のいい重賞制覇となった。

重賞レース回顧

休養明け2戦目で重賞3勝目を飾ったトリオンフ(撮影:下野雄規)


 暮れの12月29日のGI東京大賞典をお手馬のオメガパフュームで連覇を決め、ちょっと不振だった2019年を最後にうまくまとめたあたりから、流れが向いてきたのかもしれない。トリオンフの勝利を喜ぶと同時に、デムーロはいきなり不運な落馬負傷の三浦皇成騎手(大塚海渡騎手)に気遣いを示していた。

 かつて、3連単も、3連複もなかった当時、金杯といえばなぜか縁起のいい「ゾロ目」という不思議なジンクスがあったが、その伝統だけは生きていた(買うファンは少ないが)。最近10年で4回目のゾロ目の決着となった。

 トリオンフの父タートルボウル(その父Dyhim Diamond)は、フランスで種牡馬となった初年度の産駒から2頭のマイル戦GI馬を送って期待されていたが、日本では5世代の産駒(最終世代は現2歳)を送っただけで2017年に15歳で早世している。JRA重賞勝ち馬はトリオンフ(GIII3勝)、タイセイビジョン(GII1勝、朝日杯FS2着)の2頭だけなので、近年の種牡馬界では成功したとはいえないが、3歳タイセイビジョン(祖母はユートピアの半妹)の今後の活躍、さらにはセン馬としてこれからも長く活躍するはずのトリオンフにより、タートルボウルの名前はこれからも再三登場する。タフなダート巧者も送っている。

 6歳ウインイクシード(父マンハッタンカフェ)は、巧みに好位で流れに乗り、4コーナーを回るあたりでは今年の中山金杯も松岡正海騎手のウイン○○か、と思わせたが、あと一歩及ばず惜しい2着。しかし、松岡騎手は、近年だけで中山金杯2勝、2着3回。京都金杯も2012年に勝っている。年の初めはいつも以上に気合が入る男なのかもしれない。

 3着テリトーリアル(父テオフィロ)、4着ノーブルマーズ(父ジャングルポケット)、5着マイネルハニー(父マツリダゴッホ)まで、みんな6-7歳馬。それぞれうまく内枠を利したこともあるが、今年の活躍を期待された4歳ザダル(父トーセンラー)、5歳ギベオン(父ディープインパクト)など若いグループは案外の結果だった。

 たまたまのことと思われるが、上位5着までに今季の上昇が期待される「4-5歳馬」が1頭も入らなかったのは今年69回の歴史の中、史上初めてのことだった。

 1番人気のクレッシェンドラヴ(父ステイゴールド)は、もともとダッシュの良くない馬だけに、恵まれた枠順のように映った内の3番枠が厳しかった。少頭数のレースでは勝った記録はあるが(1勝)、多頭数の内枠では勝ったことがない死角が出てしまった。最後だけ突っ込んで上がり34秒9。脚を余す結果になっている。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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