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母シャンパンドーロは270万ドルの高馬、ヴェルズネイ

  • 2020年01月15日(水) 12時00分
●アントルドゥメール(牝 美浦・菊沢隆徳 父ノヴェリスト、母サンテミリオン)

 母サンテミリオンはゼンノロブロイが送り出した唯一のJRA・GIホース。のちに牝馬三冠を達成するアパパネと同着でオークス(GI)を制した。2代母モテックはフロール賞(仏G3・芝2100m)を、3代母Sudakaはクレオパトル賞(仏G3・芝2100m)を勝っている名牝系で、配合構成も好ましい。繁殖牝馬としては現在のところ、JRAでデビューした2頭(サンジュリアン、フロンサック)はいずれも未勝利で終わっている。

 本馬の父はノヴェリスト。現役時代にキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(英G1・芝12f)を5馬身差でレコード勝ち(2分24秒60)したドイツ血統の名馬で、種牡馬としてはラストドラフト(19年京成杯-GIII)を出している。

「ノヴェリスト×ゼンノロブロイ」の組み合わせは、JRAでは6頭出走して2頭勝ち上がっている。ヨーロッパ血統とアメリカ血統が互いに足りないものを補うのか悪くない成績だ。芝向きの中距離タイプ。

●ウェルシー(牝 美浦・斎藤誠 父ハーツクライ、母タミーン)

 母タミーンはイギリスで芝12ハロンのリステッドレースで2着となった。ファミリーは20世紀を代表する名繁殖牝馬Fall Aspenにさかのぼり、2代母Najahはリディアテシオ賞(伊G2・芝2000m)を、3代母Mehthaafは愛1000ギニー(G1・芝8f)を、4代母Elle Seuleはアスタルテ賞(仏G2・芝1600m)を勝つなど代々優れた資質を発揮しつづけている。

 本馬の4分の3兄ドリームインパクト(父ディープインパクト)は3歳夏にずれ込んだデビュー戦を経験馬相手に勝ち上がり、3戦目の瓢湖特別(1勝クラス)で2着となった。素質は上々だ。

 本馬の父はハーツクライ。本馬と同じく母方にMonsunを持つハーツクライ産駒にはシュヴァルツリーゼ(19年弥生賞-GII・2着)がいる。芝向きの中長距離タイプで開花は遅めだろう。

●ヴェルズネイ(牝 美浦・堀宣行 父ディープインパクト、母シャンパンドーロ)

 母シャンパンドーロは現役時代、アメリカでエイコーンS(米G1・ダ8f)、テストS(米G1・ダ7f)を制した一流馬。米三冠レースのひとつベルモントS(G1・ダ12f)を制したRuler on Iceの半姉でもある。2013年の米ファシグティプトンノベンバーセールで社台ファームが270万ドルで落札した。

 繁殖成績もまずまずで、初仔のフォギーナイト(父Tapit)はダート路線で活躍し、現在7戦4勝。いずれオープンクラスに出世しそうだ。

 本馬の全兄キスラーは現在4戦1勝。こちらも復帰すれば上を目指せるだろう。「ディープインパクト×Medaglia d'Oro」の組み合わせは、これといった大物は出ていないものの、これまでに9頭出走してJRAでは6頭が勝ち上がっている。芝向きの中距離タイプ。

●スズカワッペン(牝 美浦・小島茂之 父ワールドエース、母スズカワキア)

 母スズカワキアは未勝利馬だが、スズカドリーム(03年京成杯-GIII)の半妹で、2代母ワキアオブスズカはサイレンススズカ(98年宝塚記念-GIなど重賞5勝)とラスカルスズカ(00年天皇賞・春-GI・2着)の半姉にあたる良血。

 父ワールドエースはディープインパクト産駒で、現役時代にマイラーズC(GII)ときさらぎ賞(GIII)を勝ち、皐月賞(GI)で2着と健闘した。現3歳の初年度産駒からオータムレッド(19年アルテミスS-GIII・5着)などJRAで9頭の勝ち馬を出し、繁殖牝馬の質を考えれば上出来のスタートを切っている。

 父はディープインパクト産駒としては珍しくヨーロッパ色の強い血統構成なので、Mr.Prospector 3×4でアメリカ血統主体の母は配合相手として悪くないと思われる。芝向きの中距離タイプ。

●パステルリリー(牝 栗東・杉山晴紀 父ロードカナロア、母レディパステル)

 母レディパステルは、オークス(GI)、中山牝馬S(GIII)、府中牝馬S(GIII)を勝った名牝。

 現役を引退後、ヨーロッパで繁殖生活に入り、ロードバロック(JRA3勝/父Rock of Gibraltar)、ロードロックスター(09年京都新聞杯-GII・3着/父Rock of Gibraltar)を産んだあと日本に帰還した。そしてディープインパクトとの交配でロードアクレイム(12年神戸新聞杯-GII・2着)を産んだ。

 本馬の父はロードカナロア。母が19歳時に出産した仔で、サンデーサイレンスを持たないことが血統上の特徴。父はスタミナ型の繁殖牝馬から中距離向きの大物を出しているので、そうなることを期待したい。

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68年生まれ。血統専門誌『週刊競馬通信』の編集長を務めたあと97年からフリー。現在は血統関係を中心に雑誌・ネットで執筆活動を展開中。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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