姫路競馬場でのトークショー後に真相を直撃

　先月30日、7年半ぶりに再開された姫路競馬場を訪れ、15年ぶりに復活した重賞・白鷺賞を観戦。さらに、実況アナを引退されたばかりの吉田勝彦さんと2人でトークショーにも出演し、充実した1日を過ごしました。

　実は今回のトークショーは、「私が姫路に来るのなら何かできないか？」と、吉田さん直々に主催者に働きかけてくださった結果、実現したものなのです。

　一応、2人の「スペシャルトークショー」と銘打っていたにもかかわらず、実際は吉田さんの“独演会”に(きっとそうなるだろうな、そうなったほうがいいな、とは思っていました)。そこで披露された“ネタ”は、私はもう何度も伺っていた“古典”でしたが、お集まりいただいたファンのみなさんにとっては、初めて耳にする話がけっこうあったはずです。

　ただその中でも、ビクトリートウザイが64kgのトップハンデ(他馬とは8〜10kg差)を背負いながら勝ったレースで、「来るなら来い!」という名実況を残したという“古典中の古典”は、みなさん惚れ惚れとしながら聞き入っていました。

　なにしろそれを語る吉田さんの口調は“立て板に水”。私たちのすぐ後ろに広がる馬場を、ビクトリートウザイや当時の出走馬たちが今まさに走っているような心持ちにさせてくれましたからね。これぞ“吉田節”です。

　吉田さんも、放送席からファンの背中に向けて実況するとか、私との1対1の席でその話をするのではなく、大勢のファンが自分のほうに視線を集めて熱心に耳を傾けていただいている、という状況でしたので、気分が高揚されたのかもしれません。私が言うのもおこがましいですが、今回のトークショーはメチャメチャ楽しかったですよ。

　当日の姫路競馬場は入場無料。つまり、お集まりいただいたファンのみなさんは、タダであのステージを見られたわけです。これはおトクだったと思います。今後、吉田さんをメインにしたトークショーを開催するときには、入場料を頂戴しないともったいないんじゃないですか？(なんちゃって)。

　ところで、吉田さんは先月9日の園田競馬第6レースを最後に、64年あまりに及ぶ競馬実況の仕事を退かれました。「引退を決意された理由は？」。当日の記者会見でそう質問された時の吉田さんの答えが今イチはっきりしなかったので、トークショー後のお酒の席で単刀直入に伺ってみました。

　で、真相は「仲間うちとの食事中に『そろそろやめようか』と語ったのが主催者に伝わり、それからまもなく、引退の日が決まってしもうたんや。まだ喋っていてもええかな、とも思うてたけどな。でも、今考えると、このタイミングでよかったんや」とのことです。

　常々、渥美清さんの「ボクサーはいいよな、最後はタオルを投げてくれる人がいるから」という言葉を口にされていた吉田さん。「ここがゴールです」、だったんでしょうね。