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もう一度食べたかったプルコギライス

  • 2020年02月04日(火) 18時00分

突然の閉店、挨拶できないままの人と人との別れのよう…


 園田・姫路の実況ひとすじ、吉田勝彦アナウンサーが競馬実況を引退したことは、1月14日付の本コラムでお伝えした。レース実況最後の日となったのが1月9日のこと。その日は第1レースから園田競馬場を訪れ、馬券もさっぱりだったので場内を散策していたら、吉田さんの引退とはまた別に寂しい物を発見してしまった。それが、これ。

閉店のお知らせ、園田競馬場にて


 ここ数年、地方競馬の馬券の売上が右肩上がりとなっているのはご存知のとおり。発表されている2019年度(4月〜12月)の地方競馬全体の売上は前年同期比115.4%で、1日平均でも115.2%。主催者ごとの売上を見ても、総売得額でも1日平均でも100%を割っているところはひとつもない。

 ところがその売上と反比例するかのように、年を追うごとに地方競馬で寂しくなっているのが、場内の飲食店だ。

 地方競馬でも売上全体に占めるネット(電話)投票の割合が75%を超え、さらにネットも含む場外発売の割合は95%近くにもなっている。競馬場の来場者が減れば、場内の飲食店がやっていけないのは当然のこと。

 冒頭写真の閉店のお知らせは、園田競馬場の正門を入ってすぐ右の食堂街にあった『ポニー』さんと『三木屋』さん。この2店舗が閉店したことによって、この食堂街はついに完全なシャッター街となってしまった(念のため、パドック奥の食堂街は5店舗が営業している)。

シャッターを閉じたままになってしまった正門横の食堂街


 スタンドの向こうで盛り上がっている競馬とはあまりにも対照的で、なんとも寂しい光景ではないか。

 こうしたお店を切り盛りしていたのは、ほとんどもれなく高齢の方。儲かる儲からないは別にして、日々の楽しみとして、また働く楽しみとしてお店を続けていたのだろうと思われる。『ポニー』さんや『三木屋』さんがどうだったか、今となってはわからないが、(園田競馬場に限らず)地方競馬では、高齢や健康を理由に続けていけなくなるお店も少なくない。

 たとえ常設の食堂が少なくなっても、たくさんのファンの来場が見込める日はテントやキッチンカーで臨時の店舗を集めて対応する。今はもうそういう時代だ。

 ただ、あの競馬場に行ったらあのお店のあれを食べようと心に決め、久しぶりにその競馬場に着いて、冒頭のようなお知らせの貼り紙を見るのは、なんとも寂しい。挨拶できないままの人と人との別れのようではある。

 お店のおじちゃんおばちゃんと顔見知りだったりすると、実際に挨拶できないままの別れとなってしまうのだが。

『三木屋』さんの、元気モリモリ!プルコギライス。また食べたかったなあ。

500円でボリューム満点(だった)三木屋のプルコギライス

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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