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久々にフェブラリーSへの期待

  • 2020年02月11日(火) 18時00分

地方馬3頭の楽しみな挑戦


 フェブラリーSの登録馬が発表になり、地方から3頭の登録があった。中央在籍時の2018年にこのレースを制しているノンコノユメは言うまでもなく、ミューチャリー、モジアナフレイバーにはともにJpnIで3着があり、楽しみな挑戦となりそうだ。

 今回のフェブラリーSには24頭の登録があり、出走決定順ではノンコノユメ(大井)が3番目、モジアナフレイバー(大井)が13番目、ミューチャリー(船橋)が15番目。17番目以下からレーティング(上位5位)で優先出走となる馬はなく、順調なら3頭とも出走となりそうだ。

 岩手のメイセイオペラがフェブラリーSを制したのが1999年のこと。あれから20年以上が経過したが、芝も含め、JRA・GIを制する2頭目の地方馬は出ていない。

 ただ当時は今ほど中央と地方で能力差はなく、地方馬が出走可能になった1995年以降、2002年までフェブラリーSには毎年のように最大3頭が出走。勝てずとも好走はたびたびあった。

 1996年にはアマゾンオペラ(船橋)が5着。前述のとおり1999年に制したメイセイオペラは、翌2000年にも直線で一旦は単独先頭に立つ見せ場をつくって4着。2002年にはトーシンブリザード(船橋)がアグネスデジタルに1馬身差の2着、などがあった。

 2003年に地方馬の出走が途切れたが、2004年には笠松のミツアキタービンが残り200mあたりで先頭に立とうかという場面があり、勝ったアドマイヤドンにコンマ2秒差の4着と健闘した。その後、地方馬の好走はしばらく途絶えたが、2011年にはM.デムーロ騎手を背にフリオーソ(船橋)が、逃げ切ったトランセンドに1馬身半差の2着と迫った。

 中央馬との能力格差が広がったのはそのあとからだろう。地方馬の出走自体が少なくなり、2012年に1頭、2015年に2頭、2018年に1頭の出走があったが、いずれも二桁着順だった。

 ちなみにチャンピオンズCには、前身のジャパンCダートも含め、過去にのべ9頭の地方馬が出走しているが掲示板は一度もなく、2002年トーホウエンペラーの6着が最高の着順で、2008年のフリオーソ(7着)以降、地方馬の出走は途絶えている。

 かつてフェブラリーSには地方枠が設けられていたが、GIにはふさわしくない実績の馬が出走してくることが疑問視され、近年では地方馬も賞金やレーティングによって中央馬と同じ基準で出走決定順が決められるようになった。そうであればこそ今年出走する3頭には上位争いの期待がかかる。

 ノンコノユメは、大井に移籍して再び輝きを取り戻した。6戦して地方重賞を1勝したのみだが、移籍初戦となった昨年の帝王賞がオメガパフュームの3着で、昨年末の東京大賞典では同じくオメガパフュームに1馬身差に迫る2着と一流馬相手に好走を続けている。

 中央時代にはゲート入りでテンションが上ってしまい出遅れることが多かったノンコノユメが、地方で安定して成績を残せるようになったのには理由がある。中央では禁止されている、いわゆる“尾持ち”ができるからだ。ゲートの後ろから調教師や厩務員が馬の尾を引っ張っていて、ゲートが開くのと同時に放す。ノンコノユメは、これで互角のスタートが切れるようになり、好位や中団からレースを進めることができる。そして自慢の末脚は健在だ。

 モジアナフレイバーは、ダートグレード初挑戦となった2018年3歳時の東京大賞典こそ差のある9着だったが、昨年は帝王賞5着、マイルチャンピオンシップ南部杯4着、そして東京大賞典3着。単に着順を上げたというだけでなく、レースぶりもよくなっている。

 大井以外では南部杯で一度盛岡を使われただけ。昨年浦和のJBCも、今年の川崎記念も使われなかったのは、広いコースでこそ、ということがあるようだ。それゆえフェブラリーSという選択になったのだろう。ドバイワールドC当日に行われるGIIのゴドルフィンマイルにも選出されている。

 ミューチャリーは、昨年羽田盃を圧勝したあと御神本騎手が「毎回一生懸命走ってくれているんですが、馬場状態や展開次第のところもある」と話していたように、勝つ時は強いが危うさもあるというタイプ。今年初戦の川崎記念は、同期の東京ダービー馬ヒカリオーソ(2着)にも先着される4着だったが、そこがカベではない。

 今回のフェブラリーSで、ちょっとした異変と言ってもいいのが、中央のチャンピオン級の馬たちの回避が相次いだこと。今年サウジアラビアで新設された超高額賞金のサウジCがフェブラリーSの翌週という日程で、ゴールドドリーム、クリソベリルが遠征予定。またオメガパフュームはやはり左回りはよくないのだろう、休養中で登録がなかった。

 サウジCがドバイワールドCのように定着すれば、今後はフェブラリーSのメンバーが手薄になりかねず問題となりそうだが、それは今回の本題ではないので、また別に機会があれば触れることにする。

 とにかく今回のフェブラリーSでは、久しぶりに地方馬がJRA・GIで好走できる可能性がおおいにあり、しかもそれが1頭だけではないということでも楽しみになる。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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