スマートフォン版へ

4年連続重賞勝利、宮下瞳騎手

  • 2020年02月18日(火) 18時00分

42歳、2児の母“あっぱれ!”


 先週13日、名古屋で行われた梅見月杯を勝ったのはポルタディソーニ(牝6)。見事な逃げ切りだった。

 そのポルタディソーニの主戦をつとめるのが宮下瞳騎手。2017年の3歳時に中央1勝から名古屋・瀬戸口悟厩舎に移籍して以来、怪我などで2度だけ乗替りがあったが、それ以外はずっと宮下騎手が手綱をとっている。

 ポルタディソーニの初重賞制覇は、2017年9月の秋の鞍。さらに2018年2月には前述のとおり一度目の梅見月杯を、2019年7月には名港盃を制し、そして今回、二度目の梅見月杯で重賞4勝目。いずれも鞍上は宮下騎手だった。

 制した重賞4つは、いずれも牡馬相手のもの。牝馬ながら3歳から6歳まで毎年重賞1勝ずつという息の長いコンスタントな活躍はすばらしい。名古屋移籍後はここまで37戦14勝という成績を残している。

 今回の勝利で何より“あっぱれ!”だったのは、宮下騎手の思い切った騎乗ぶりだ。

 戦前は、昨年のこのレースを逃げ切って6馬身差で圧勝していた兵庫の快速馬マイタイザンが、今回も逃げるだろうと見られていた。しかし宮下騎手に迷いはなかった。

 1番の馬が取消しとなって、2番のポルタディソーニは最内枠。対してマイタイザンは8番。「(この日の)馬場状態が先行有利なので、スタート次第では行ってしまおうかという考えはありました」とレース後に話していた宮下騎手。名古屋1900mは2コーナーポケットからのスタートで、3コーナーまでやや距離はあるが、そこまでにハナを取りきってしまえ、そんな気迫が伝わってくる逃げだった。

 対してマイタイザンは、鞍上の杉浦健太騎手がムチを2発ほど入れても行ききれず。昨年のこのレース以来、勝ち星がなかったため、本来の調子ではなかったということもあったかもしれない。

ポルタディソーニとのコンビで梅見月杯を制覇した宮下瞳騎手(c)netkeiba.com、撮影:谷口浩


 たしかにポルタディソーニは、昨年の名港盃こそ逃げ切りだったが、2、3番手から4コーナーあたりで前をとらえて、というのが勝ちパターン。それをマイタイザン相手の逃げ切りは、宮下騎手のまさに好判断、好騎乗だった。

 宮下騎手は2016年8月、2人のお子さんの出産を経て5年ぶりに騎手として復帰。それ以前には2002年4月にアラブ系重賞のクリスタルカップをヘイセイチェッカーで制しており、これで重賞は通算5勝目。同じ名古屋の木之前葵騎手による、日本における女性騎手の重賞最多勝記録に並んだことになる。

 17日に表彰式が行われたNARグランプリ2019で優秀女性騎手賞を受賞したのは、昨年67勝を挙げた木之前騎手。ただ宮下騎手も昨年は49勝に加え、ポルタディソーニによる重賞1勝という成績を残していた。

 ちなみにNARグランプリの優秀女性騎手賞の規定には、<(前略)勝利回数、収得賞金額、勝率、重賞競走成績等を総合的に評価して特に優秀と認められた者があった場合に選定します。なお、勝利回数及び収得賞金額については、所属場における順位も評価の要素に加えています。>とあり、具体的な数字は示されていない。

 “最優秀”ではなく“優秀”女性騎手賞なので、過去には複数の女性騎手が同時受賞することもめずらしくなく、2006年には3名(宮下瞳、山本茜、別府真衣)が受賞ということもあった。当時であれば、50勝前後の勝利数に加えて重賞勝ちがあれば、ほぼ間違いなく選出されていたであろう。しかし近年では優秀な成績を残す女性騎手が当り前にいるため、そのハードルが高くなっているようで、2016年以降、優秀女性騎手賞は1人ずつの受賞となっている。

 2月17日現在、宮下騎手は通算830勝。日本における女性騎手の通算最多勝記録を更新し続けているのはご存知のとおり。今年はここまで121戦17勝で、そのうち地元名古屋では16勝、名古屋リーディングでは、なんと3位。勝率14.0%というのもすばらしい。

 42歳、2児の母は、ますます元気だ。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング