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期待を背負って南関東クラシックへ、ブラヴール

  • 2020年03月03日(火) 18時00分

チャームアスリープ最後の産駒


 2月27日に大井競馬場で行われたクラシックトライアル(1800m)を制したのは、船橋・佐藤賢二厩舎のブラヴール。この勝利で、4月29日の羽田盃、6月3日の東京ダービーの優先出走権を獲得した。

クラシックトライアルを制したブラヴール(c)netkeiba.com、撮影:高橋正和


 ブラヴールの血統は、父セレン、母チャームアスリープ。ともに、ブラヴールと同じ佐藤賢二厩舎からデビューし、南関東で活躍した。

 2005年7月にデビューしたチャームアスリープの2歳時はデビュー戦を勝ったのみだったが、3歳になって急成長。浦和の桜花賞、東京プリンセス賞を、ともに1番人気で勝利。そして臨んだのが、この年から統一GIIに格上げされた関東オークス。前年の全日本2歳優駿を制し1番人気に支持されていたJRAのグレイスティアラが直線単独先頭に立って押し切ろうかというところ、ゴール寸前で差し切り、史上初の南関東牝馬三冠達成となった。

 一方、父のセレンは、チャームアスリープと同じ新冠・村田牧場で、その2年後に誕生した。2歳時は2戦、3歳時にもわずか4戦に出走したのみで南関東クラシックには縁がなかった。しかし2009年の4歳秋、重賞初挑戦となった東京記念でルースリンドの2着に好走すると、京成盃グランドマイラーズで重賞初勝利。続く勝島王冠も制した。そしてダートグレード初挑戦となった東京大賞典は、サクセスブロッケン、ヴァーミリアンによるハナ差の名勝負。セレンはこれにコンマ3秒差の4着と好走して見せた。

 ブラヴールのオーナーは山口圭子さん。チャームアスリープ、セレンは、その夫である山口美樹さんの名義で走った。セレンは2010年の5歳時にも5月の大井記念ではボンネビルレコードを2馬身差でしりぞけて勝利。しかしその年の秋、美樹さんが急逝。名義が圭子さんに変わって出走した東京記念では、前年の覇者ルースリンドに4馬身差をつけて快勝。南関東重賞4勝目を挙げた。

 そのセレンを種牡馬にして、チャームアスリープと結びつけたのは圭子さん。セレンは初年度の2015年には2頭の牝馬に種付けをしているが、その1頭がチャームアスリープ。そして誕生した牡馬はレーヴと名付けられ、父・母と同じく佐藤賢二厩舎からデビュー。4歳の現在まで14戦1勝という成績を残している。

 そしてチャームアスリープにとっては7頭目の産駒で、セレンにとっては2世代目の産駒が、レーヴの全弟ブラヴールとなる。セレンの産駒は、この年もほかに1頭の産駒がいるだけだ。

 チャームアスリープはブラヴールを生んだその年にはエスポワールシチーを付けるが不受胎。そして翌2018年の種付けシーズン直前の2月、残念ながら牧場での事故で亡くなった。ブラヴールはチャームアスリープにとって最後の産駒ということになる。

 オーナーの愛情によって、わずかな確率のところから誕生したのがブラヴール。ここまで5戦して2勝、2着3回と、まだ底を見せていない。母は南関東牝馬の三冠を制したが、父セレンには出走が叶わなかった南関東クラシックの舞台へ挑むことになる。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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