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ラストランを終えて―武士沢騎手が語る相棒「マルターズアポジー」

  • 2020年03月15日(日) 18時02分
ノンフィクション

武士沢友治騎手が語るマルターズアポジーとは(撮影:佐々木祥恵)


2015年2月の新馬戦(1着)から31戦目のチャレンジC(2018年・GIII・7着)まで、1度も他馬にハナを譲ったことのない個性派逃げ馬マルターズアポジー。近走はハナを切れなかったりと不本意な競馬が続いていたが、ラストランとなった中山記念(GII・6着)では久々にこの馬らしい逃走劇が見られた。40戦のうち22戦に騎乗し、重賞3勝すべての手綱を取った武士沢友治騎手に、相棒マルターズアポジーについてじっくり語ってもらった。

(取材・文=佐々木祥恵)

怖がりな性格と爆発的な力が生んだ“アポジーの逃げ”


――マルターズアポジーの最初の印象はどうでしたか?

武士沢 大人しいはずだったんですよ(笑)。でも急にテンションが上がって制御がきかなくなる時があって…。最初の頃でしたけど、ゲート練習に行った時とかに急に我を忘れるみたいになるんですよね。大人しいとこから急激にテンションが上がるので、最初はえっ? という感じで、ちょっと怖さはありましたね。

――なぜそうなるのでしょうね?

武士沢 ゲート入りなど普段と少し違う雰囲気になった時にそういう面を出した感じですね。

――でも普段は大人しいんですね?

武士沢 何もされなければ普通でした。ただ調教で走らなきゃという場面ではその前から嫌がっていたり…。まあ馬は皆そういう傾向にあるのですけど、アポジーもそういう面は要所要所で見せていました。

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ラストラン前、トレセンでのひとコマ(撮影:佐々木祥恵)


――そんな中でデビュー戦を迎えましたが、逃げは作戦だったのですか?

武士沢 爆発的な走り方をするなという感じはありましたし、ゲートを出て抑えようと思っても行ってしまうなという感じがありありでしたから。実際、スタートして一歩目はさほど速くはなかったのですが、二の脚が他の馬と全く違いましたね。

――4コーナーでは外に膨れながらも、逃げ切り勝ちを収めました。

武士沢 まあ新馬でしたし、ハナに立ったら物見はするし、4コーナーでも外に逃げました。でも外に逃げるくらい、余裕があったということだと思います。最後まで全く楽でしたし、セーフティーリードで勝てましたから、やはり爆発的な力を持っていたということだったと思います。

――人気もなかったですね?

武士沢 普通に考えたら2000mは少し長いかなという、根本的には短距離が合いそうな血統ですからね。でもそれが逆に功を奏したというか、レースの巡り合わせというかタイミングもあったのかなと思います。

――その後、デビュー時と変わったなと思う点は?

武士沢 2勝目は吉田隼人騎手で勝って、その後のプリンシパルS(村田騎手が騎乗・OP・17着)はカン性が強過ぎて激情的に逃げてしまった感じがありました。ラジオNIKKEI賞(GIII・3着)ではわりと収まって走ってくれていましたけど、1番変わったのは翌年の1000万(いわき特別・田辺騎手)や1600万(秋風S・田辺騎手)で連勝した後でしょうか。僕が乗った福島記念(GIII)で優勝した時には雰囲気が変わったなと思いました。

――どのように変わったのですか?

武士沢 引っ掛かって逃げているように見えても、最後は残れるという感覚を持ちました。以前より力をつけていたのだと思いますね。それにあのレースの時は、行きっぷりも全盛期だったと思いますし、他の馬が逃げたくても逃げられないというレースができていました。それを考えると、福島記念がターニングポイントだったように思います。

――怖がりの馬が逃げ馬になるケースがあると聞きますが、アポジーはどうでしたか?

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