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BTC育成調教技術者養成研修第37期生、16名から7名に

  • 2020年03月12日(木) 18時00分

BTC受講生に感じる「若者気質の変化」


 依然として収束する気配のない新型コロナウイルスだが、馬産地では、あらゆることが例年通りのスケジュールで進んでいる。

 先日、BTC坂路にて、JRAブリーズアップセールに上場予定の育成馬の調教を見る機会があった。今年のブリーズアップセールは、来る4月28日(火)、中山競馬場にて開催予定だ。とはいえ、プロ野球の開幕が先送りになり、大相撲も現在、無観客での興業を続けている。また昨日は、ついに春の選抜高校野球も、中止という苦渋の決断が下された。

 そんな中、ブリーズアップセールは無事に開催できるのだろうか、と素朴な疑問を口にしたところ、JRA日高育成牧場の現場スタッフからは「おそらく予定通りに開催することになるはずです」と言葉が返ってきた。あるいは、新型コロナウイルス流行に配慮して、一部入場制限などの措置がとられたりする可能性もなくはないが、今年デビュー予定の2歳馬のセールなのでそうそう先延ばしはできず、形式を変えてでもこの4月28日に実施する方針のようである。

 さて、本題。そのJRA育成馬の坂路調教にBTC育成調教技術者養成研修第37期生が、JRA職員とともに騎乗し、坂路を駆け上がってくる姿が見られた。

生産地便り

職員とともに騎乗し、坂路を駆け上がってくる研修生


 今期37期生は、昨春BTCに入講し、1年近くの訓練を経て、来月晴れて修了式を迎えることになっている。昨春の開講式に参列したのは16名。しかしその後、37期生は退学者が相次ぎ、現在在籍しているのは7名にとどまる。性別は、男子2名、女子5名という内訳だ。

 なぜ、37期生に限って、ここまで数が激減してしまったのか、についてはまた改めて触れる機会を設けるつもりだが、せっかく春に夢と希望に胸を膨らませ入講しながら、結果的に多くの研修生が図らずも途中で挫折してしまったのは、それぞれ個別の事情があるにしても、かいつまんで表現すれば、「若者気質の変化」が最も大きな原因であろう。

 最も多いのは高校を卒業したての18歳の入講で、馬に触れた経験のない若者たちだ。

 そんな若者たちが、1年間ここで騎乗を中心とした訓練を積み、1年後にそれぞれ民間の育成牧場へと就職して行く。1年間を通して、こなす「鞍数」は400を超える。最初は、おっかなびっくりで騎乗していた彼らも、半年も過ぎれば、騎乗姿も徐々に洗練されてくる。秋から冬にかけては、JRA日高育成牧場に通い未調教の1歳馬の初期調教にも携わる。ロンジング、ドライビングなどを経験し、次は実際にそれらの1歳馬に騎乗する機会が与えられるのだ。

 そうして、普段乗り慣れた訓練馬(多くは現役上がりの元競走馬)とは違う「生きた教材」ともいうべき1歳馬と向き合い、騎乗することによって、さらに多くを学ぶことになる。意のままにならない1歳馬と格闘しながら、少しずつ経験値を上げて行き、やがて坂路調教にも騎乗することになるのである。

 先日見学したJRA育成馬の中に、そんな彼らの騎乗する姿があった。彼らは、来月14日に予定されているJRA育成馬展示会に参加し、比較展示を手伝った後に、騎乗供覧でも、実際に育成馬に跨り、走りを披露することになっている。16名中9名が途中で退学するというかつてない危機的状況の中、残った37期生7名は、よくぞ今日まで辛抱し、研修を続けてくれたものと逆に感心してしまう。

生産地便り

JRA育成馬に騎乗する研修生


 それにしても、いったいどこに問題があったのだろうか。研修方針、研修内容は、たぶんそう変わっていないはずだから、後は、研修生がそれに耐えられるかどうか、の問題であろう。37期生16名は、「希望者全員合格」で入講してきた若者たちだったので、あるいは、そのあたりに何らかの事情があるのかもしれない。

 なお今春入講予定の第38期生は、21名いるという。30名を超える志願者の中から適性などを考慮し選抜した21名と聞いた。どんな若者たちがいるのかとても興味深い。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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