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【スプリングS】いつか来た道をよみがえらせる

  • 2020年03月21日(土) 12時00分

先に待っているものは大きいかもしれない


 彼岸の中日をすぎると、陽春という名にふさわしいのどかな日が時折訪れるようになる。その中でも菜の花の明るい黄色には、安らかな興奮を覚える。その一面の菜の花、よく見ると薄緑色の葉の中に黄色の花がとけこんでいて、その二色が織り成す明るさに心がときめくのだ。この時期によみがえるいつか来た道。あふれる思いをぶつけたい。

 やがて迎えるクラシックシーズンも、こんな気分でいられたらいい。それに向けての戦いも大詰め、もうすぐ顔ぶれが揃う。

 中山内回りの1800米は、基本的には内枠の先行馬有利だが、それを承知でどう戦うかがスプリングSの見どころ。皐月賞に向け、ここが叩き台の格上組の2頭、ヴェルトライゼンデとサクセッション、どちらも順調に春を迎えた。

 ヴェルトライゼンデは、池江厩舎で池添騎手、いつか来た道をよみがえらせる。父ドリームジャーニーはこのコンビで、宝塚記念、有馬記念を勝っているし、この両者にとり、三冠馬オルフェーヴルの存在が大きい。取りこぼしの多かったオルフェーヴルを調教で修正し、栄光のキッカケになったのがこのスプリングSだった。東日本大震災の影響で阪神開催だった2011年のこと。

 池添騎手と池江調教師のコンビはオルフェーヴルで、GI6勝を含む重賞9勝をあげているが、久々に大きなチャンスがめぐってきたと言えそうだ。一面の菜の花に心がときめくようなもの。コントレイルを本番で逆転するキッカケをつくってほしい。

 もう一頭のサクセッションは、メンバー唯一の3勝馬。マイルしか経験していないが、スピードと反応の良さがいいところと国枝調教師は意欲を燃やしている。名牝アーモンドアイを擁する師は、弥生賞ディープインパクト記念をサトノフラッグで勝っている。その勢いは確かなものがある。

 使うごとに体も増え成長を感じるが、昨秋のデイリー杯2歳Sで前に行きすぎて唯一の敗戦を喫したのを反省し、前走のジュニアCでは道中我慢して、いい反応で脚を伸ばしていた。今回の走りでこの先、皐月賞かNHKマイルCかが決まる。

 器用さがあって安定感のあるヴェルトライゼンデ、さらなる成長が期待できるサクセッション、この2頭を追うのがここで権利を得たい面だが、常連ディープインパクト産駒からファルコニアが目につく。2連勝で勢いに乗り、中山が合いそうだ。母カンビーナはアメリカンオークス馬で、素質は高い。

 黄色く明るい菜の花の花言葉は「小さな幸せ」。ここでつかむのは小さな幸せだが、その先に待っているものは大きいかもしれない。今週のテーマはいつか来た道で。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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