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地方血統の活躍

  • 2020年03月24日(火) 18時00分

日本のダート競馬の成熟が見て取れる


 この3月後半は地方競馬ゆかりの血統の馬たちの活躍が目立っている。

 まずは15日(日)の佐賀・はがくれ大賞典。断然人気はグレイトパールで、このレース3連覇のかかる兵庫のエイシンニシパと一騎打ちかという人気だったが、勝ったのは単勝16.5倍の4番人気、8歳のキングプライド(牡・父サウスヴィグラス)だった。

 キングプライドは、かつての佐賀S2重賞まで含めるとたくさん重賞を勝っていることになるが、3歳時には九州ダービー栄城賞を制し、今回の勝利が2018年5月の佐賀スプリングカップ以来の重賞タイトルとなった。

 母のアイディアルクインは大井でデビューし、東京プリンセス賞2着のあと、東京ダービーにも出走して5着。佐賀に移籍後は荒尾・九州王冠、佐賀・九州大賞典という牡馬相手の大レースを制した。

 その産駒、つまりキングプライドのきょうだいもやはり佐賀での活躍が目立ち、5歳上のネオアサティス(牡・父アサティス)は2009年の佐賀・九州ジュニアチャンピオンを制し、3歳上のガルホーム(牡・父ケイムホーム)が2011年の荒尾・九州ジュニアグランプリを制した。また4歳下のアブソルートクイン(牝・父カネヒキリ)は昨年のロジータ記念4着など南関東で活躍している。

 18日(水)の大井・京浜盃を勝ったブラヴールは、3月3日付けの本コラムでも取り上げた。

 失礼を承知で言うならば、正直、クラシックで勝ち負けは難しいと思い、その前に取り上げたのだった。そう思ったのは僕だけではなかったようで、京浜盃は単勝26.7倍の8番人気。しかし4コーナー8番手から外に持ち出して豪快に突き抜けた。「想像以上に馬が成長していた」(本橋孝太騎手)と、関係者にもこれまでとは見違えるほどのレースぶりだった。

 父セレン、母チャームアスリープは、ともに南関東での活躍馬。厩舎も馬主も同じ。詳しくは3月3日付けの本欄をご覧いただきたい。もちろん次走は南関東一冠目の大井・羽田盃(4月29日)となる。

 19日(木)の笠松・マーチカップを制したニューホープは、言わずとしれたフリオーソ産駒。これで重賞4勝目となった。

 フリオーソは2016年デビューの初年度産駒から、佐賀・西日本ダービーなどを制した高知のフリビオンをはじめ重賞勝ち馬を多数送り出し注目された。ニューホープはその3世代目の産駒で、同じ現4歳世代では、昨年の大井・東京ダービーを制し、今年1月のJpnI・川崎記念でチュウワウィザードの2着だったヒカリオーソもいる。

 現3歳世代にも、ハイタッチガール(金沢プリンセスカップなど重賞2勝)、トキノノゾミ(佐賀・たんぽぽ賞)とすでに重賞勝ち馬が2頭。その4世代目までの産駒がデビューした2019年の地方サイアーランキングでは5位にまで躍進している。

 22日(日)、高知の3歳馬による土佐春花賞を勝ったのは3番人気のリワードアヴァロン。これまで、金の鞍賞、土佐水木特別(準重賞)、ともに2着に負かされていたレインズパワー相手に逃げ切り、重賞初制覇となった。

 父は中央1000万条件(現2勝クラス)から高知に移籍し、全国を駆け巡って大活躍したグランシュヴァリエ。中央とのダート交流重賞に挑戦すること、じつに28戦。その中には、5歳時のマイルチャンピオン南部杯3着、6歳時のJBCクラシック(大井)4着など、JpnIでも上位に入着。地方重賞は地元の高知県知事賞(2回)など4勝を挙げた。

 リワードアヴァロンは、グランシュヴァリエの初年度産駒として血統登録されたわずか4頭の中から出た活躍馬。5月3日の黒潮皐月賞から6月14日の高知優駿へ、しばらくは地元戦を使われるとのこと。

 そして25日(水)に行われる浦和・桜花賞にも地方血統の期待馬が出走する。トライアルの浦和・ユングフラウ賞で7番人気ながら2着に入って出走権を獲得したアクアリーブル(父・パイロ)だ。

 母アスカリーブルは、デビューした園田で4連勝のあと、大井を経由して転入した船橋・川島正行厩舎では、JpnIIの川崎・関東オークスや、牡馬相手の大井・黒潮盃など3歳時に重賞5勝を挙げた。アクアリーブルは、その初年度産駒。

 今回の桜花賞出走馬の父を見ると、トランセンド、サウスヴィグラス、ノーザンリバー、スマートファルコン、フリオーソ、メイショウボーラーと、フルゲート11頭のうち6頭の父が日本のダートグレード競走の勝ち馬となっている。

 かつてであれば、日本のダートではいくら活躍しても、種牡馬として日の目を見ることはほとんどなかった。しかしここ10年ほどで、日本のダートでの活躍馬が種牡馬となり、ダート競馬の血統のかなりの割合を占めるようになってきた。日本のダート競馬の成熟が見て取れる。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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