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五輪延期の余波が引退馬にも

  • 2020年03月26日(木) 12時00分
 新型コロナウイルス感染拡大のため、東京五輪が1年程度延期されることになった。それに伴い、本稿がアップされる3月26日に福島県のJヴィレッジからスタートする予定だった聖火リレーも延期されることになった。

 福島県南相馬市と相馬市で毎年7月に行われている世界最大級の馬の祭「相馬野馬追」の騎馬武者たちも、聖火リレーのイベントに参加する予定になっていたのだが、中止になった。

 予定では、聖火リレー初日である3月26日の到着地は、南相馬市の雲雀ヶ原祭場地になっていた。騎馬武者たちの聖地でもあるそこで、聖火到着を祝うセレブレーションが行われることになっていたのだ。

 聖火ランナーが到着する前に、南相馬市役所で出陣式を行い、ランナーが走るルートを騎馬武者が進軍し、口上を述べることなども計画されていたが、それは、安倍晋三首相が五輪延期容認を表明した3月23日の時点で中止が決定。無観客の雲雀ヶ原祭場地で、騎馬武者たちが参道の両側に整列して聖火ランナーを迎えることになっていた。

 しかし、それも3月24日、東京五輪そのものの延期が正式決定したことにより、なくなってしまった。

 ご存じの方も多いだろうが、相馬野馬追に参加する500頭ほどの馬の、おそらく9割ほどは元競走馬だ。

 実は、本稿でもたびたび紹介している小高郷の騎馬武者の蒔田保夫さんから、セレブレーションを取材に来てはどうかと誘いを受けて、迷っていた。来月20日〆切の競馬ミステリー第4弾の原稿の進み具合によって、行くかどうか決めようと思っていた矢先の延期発表だった。

 騎馬武者の準備というのは、人だけではなく、馬も「出陣」の態勢を整えなければならないので、手間がかかる。相馬野馬追に参加する馬の半数ほどは相双地区で繋養されている馬たちなのだが、残りの半数ほどは、ほかの地区の乗馬クラブなどから、野馬追の時期だけレンタルしている。

 今回は、北郷から5頭、中ノ郷から5頭、小高郷から5頭の計20頭が出陣を予定していた。それらはみな、地元で繋養されている馬だったという。その点では、急きょ中止になったとはいえ、騎馬武者たちの負担が少なく済んで、よかった。

 騎馬武者は馬の数と同じ20人で、それぞれに付く世話人が20人。3つの騎馬会からひとりずつの代表世話人の3人。甲冑武者が5人、螺役(かいやく)が8人という計56人が参加する予定だった。

 蒔田さんは世話人として、陣羽織姿で参加する予定だったという。

「残念ですけど、致し方ないですよね。現時点では何も聞いていませんが、来年、またやるのではないかと思います。やるのなら、ぜひ参加したいですね」

 不完全な形で今年強行するよりはよかった、と思っているようだ。仕切り直して、来年、完全な形で、相馬野馬追の存在と魅力を、聖火リレーを通じて世界に発信してほしい。

 さて、プロ野球は、本来は休止を予定していた今夏の五輪予定期間中にも公式戦を実施する方針だという。

 JRAの北海道開催はどうするのだろう。当初は函館で6週のあと札幌で7週の予定だったが、マラソンの会場が札幌になったことで、札幌3週、函館6週、札幌4週に変更された。それをまた元に戻すと、すでに航空券やホテルなどを押さえた人が困るし、混乱するだろうから、このまま行くのか。

 五輪延期とは関係ないが、引退馬のネタをもうひとつ。エアグルーヴの半姉で、エガオヲミセテやオレハマッテルゼなどの母として知られるカーリーエンジェル(牝30歳)が、岩内町のホーストラスト北海道から、日高町豊郷のキクチファームに引っ越した。

「カーリーエンジェルの会」が発足し、会員を募って余生を見守っていくようだ。詳しくは、同会のツイッター(@curly_angel1990)を参照いただきたい。なお、キクチファームは見学可能だが、事前に連絡が必要なので、ご注意を。

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作家。1964年札幌生まれ。Number、優駿、うまレターほかに寄稿。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』(2011年度JRA賞馬事文化賞受賞作)など多数。netkeiba初出の小説『絆〜走れ奇跡の子馬〜』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリーシリーズ第6弾『ブリーダーズ・ロマン』。プロフィールイラストはよしだみほ画伯。バナーのポートレート撮影は桂伸也カメラマン。

関連サイト:島田明宏Web事務所

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