【高松宮記念】春の大一番は、自然の命がほとばしるように激しい戦いに
今年のロードカナロア物語はどんなあらすじになるか
白木蓮のやわらかい花びらを見つめていると、ぼんやり幻想の世界に誘われ不思議な気分になる。そしてやがて、さあこれからだと奮い立つ春が身近に感じられてくる。これから混乱必至の一年であっても、自然は狂いなく動いていく。
この、もうすぐ4月というときにある高松宮記念も、春のGIシリーズ開幕を告げる一戦という色彩は褪せていない。はっきり、今につながるシーンが目に浮んできた。2012年。中京のコースが改修された最初のレース、先頭を走るカレンチャン、その内からロードカナロアが猛追し、さらに外からサンカルロが凄い脚で追い込んできてスリリングな直線の攻防が見られた。
結果は、速いペースを2番手で追った2番人気カレンチャンが勝ち、ビリーヴに続く牝馬秋春スプリントGI連覇を達成し、クビ差で3番人気サンカルロ、前走シルクロードSを勝って5連勝でここにのぞんだ1番人気ロードカナロアは、1/2馬身差で3着だった。伏兵の大駆けを許さない、明らかに力勝負だった。この一戦で新中京コースの評価は定着、その後の高松宮記念は、どの年も激しいレースが続いている。
ロードカナロアはその後スプリント能力にみがきがかかり、安田隆きゅう舎の先輩カレンチャンを破ってチャンピオンになり、国内外でGI6勝、世界のカナロアと言われるまでになったが、その産駒でスプリントGI戦に出走したのは、昨年の4着馬ダノンスマッシュが最初だった。
父と同じく1月のシルクロードSを勝って1番人気で高松宮記念にのぞんだが、少し余分に外を回る形になり、内をついたミスターメロディ、セイウンコウセイ、ショウナンアンセムに遅れをとってしまった。とにかくゴール前は極どくなるので、ちょっとした有利、不利で結果がちがってくるGI戦で、いかなる場合も予断を許さない。
今年のロードカナロア産駒は4頭。うちダノンスマッシュは5歳になり、オーシャンSを完勝してスプリントGI戦は4度目。ダイアトニックはやはり5歳で、阪急杯1400米は1200米を意識して前々を走らせ、15戦目で初めてのスプリント戦の備えをしていた。この2頭とも安田隆きゅう舎所属というのも面白い。新中京コース9年目にくり広げられるロードカナロア物語、どんなあらすじになるのか。
GI馬グランアレグリア、モズアスコットにセイウンコウセイ、それに現王者タワーオブロンドンなど多士済々。さらに伏兵もいる大一番、自然の命がほとばしるように激しい直線の攻防となるのは間違いない。