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【フローラS】時の流れも味方に積極的な騎乗で勝利

  • 2020年04月27日(月) 18時00分

1番人気が連敗し続ける不思議な世代


 レース全体の流れは「58秒6-60秒1」=1分58秒7。走りやすい絶好の芝とはいえ、2018年サトノワルキューレ(オークス6着)、2019年ウィクトーリア(オークス4着)のここまでの最高記録1分59秒5を、0秒8も更新するレースレコードだった。

 好位4-5番手で流れに乗った勝ち馬ウインマリリン(父スクリーンヒーロー)の前後半1000mは推定「59秒4-59秒3」。もっとも速い時計が可能になる理想のバランスになったとはいえ、東京は初コースだった。3戦3勝となった2000mは「2分04秒0→2分02秒5→1分58秒7」。確実にパワーアップしている。

 すべて伏兵としての勝ち星で、ハデなタイプではないが、昨年の日本ダービーをリオンリオンで経験している横山武史騎手とのコンビで3戦3勝の上がり馬。本番のオークスでも積極的なレースを展開してくれるだろう。

 母はオーストラリア産。19世紀中盤から「GB→NZ→AUS」と移った一族で、近親に活躍馬を探すのは難しいが、もうつながりはきわめて乏しいものの、血統大系の世界ではオーストラリア産の活躍馬として知られるキンシャサノキセキ(父フジキセキ)と同じ牝祖から発展するファミリー出身になる。

 母の父は2000年のケンタッキーダービー馬Fusaichi Pegasusフサイチペガサス。父スクリーンヒーローは勢いに乗ったところでジャパンCを制した馬。代表産駒のゴールドアクター(有馬記念)、モーリス(途中から7連勝)、ジェネラーレウーノ(3連勝して皐月賞3着)などにその最大の長所は受け継がれている。

 ウインマリリン、そして2着でオークス出走権利を獲得したホウオウピースフル(父オルフェーヴル)には、強気になっていい「時の流れ」がある。現3歳世代の牝馬限定重賞は、レシステンシアが勝った2歳11月の「ファンタジーS」以降、2つのGIを含めて「フローラS」までの9戦、勝ったのは「6、4、3、2、4、5、12、2、4」番人気馬。ずっと連続して1番人気馬が負けている【0-2-1-6】不思議な世代になった。

(提供:デイリースポーツ)


 惜敗したホウオウピースフルは、前半から苦しい位置に入って首を振っていたうえ、サッとインに進路を見つけたウインマリリンとは逆に、直線の坂上で前が詰まってしばらく空かなかった。

 最後は2頭の間を割るように伸びてクビ差2着。4コーナー手前で同じ位置にいたので上がり35秒3は同じでも、きびしい内容を切り抜けた点では勝ち馬と互角、あるいはそれ以上の評価だろう。ブラストワンピース(父ハービンジャー)の半妹。父がサンデーサイレンス系なので、こちらはデアリングタクトと逆の形で、いま脚光を浴びるサンデーサイレンスの血量(3×4)を秘めている。

 ブラストワンピースは4戦目の日本ダービーで苦しいインで包まれて動けなかったが(0秒2差の5着)、妹のホウオウピースフルの方が3歳春の時点では勝負強い印象がある。

 問題はD.レーン騎手が短期免許期間の都合でオークスの週には騎乗する予定がないこと。だれが乗ってくるかが気になる。距離は大丈夫。馬場が少しくらい渋っても心配ない。ウインマリリンとともにオークス候補となった。

 3着フアナ(父ルーラーシップ)は残念。クビ、クビの少差でオークスの出走権確保とならなかった。直線坂上、4着したショウナンハレルヤ(父キズナ)と接触しかけるシーンがあり、多頭数の接戦なので仕方がないが、脚を余した印象も残った。1勝馬でも出走できる年もあるが、状況はきびしいだろう。5代母Sun Princessサンプリンセス(英オークス馬)の時代から、3戦目(ごく少ない戦歴)で大仕事をするファミリーだったのだが…。

 人気のスカイグルーヴ(父エピファネイア)は、慎重に間隔を空けて3カ月ぶりの1戦なのに、余裕残しどころか久しぶりの輸送がこたえたかマイナス14キロ。坂で止まってしまった。3歳牝馬のこの時期は心身ともにもっとも難しいシーズン。ここでギリギリの馬体は予測外だった。懸命にクラシックを狙ったのだから仕方がない。

 レッドルレーヴ(父キングカメハメハ)も、落ち着いてはいたがここでマイナス8キロの馬体は誤算だったろう。1-2着馬と前後する位置にいたが、伸びるかと思えた坂上で苦しくなり首が上がってしまった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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