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桜花賞制覇で注目度急上昇のノルマンディー(村本浩平)

  • 2020年04月28日(火) 18時00分

育成方針の変更が結実したデアリングタクトの勝利


 スタンドには人影が無い中、降りしきる無数の雨が間近で見つめていた今年の桜花賞。重馬場を見方につけたスマイルカナが逃げ切りを図り、それを1番人気の支持を集めたレシステンシアが交わしたところ、猛然と後ろから追い込んできたのが2番人気のデアリングタクトだった。

 僅か3戦のキャリアでの桜花賞制覇は史上3頭目の快挙であり、また馬主であるノルマンディーサラブレッドレーシング、生産牧場の長谷川牧場にとっても、これが初めてのGI制覇。父であるエピファネイアも産駒最初の重賞勝ちが、いきなりGI勝ちとなった。

 デアリングタクトの育成先は新ひだか町のノルマンディーファーム。先日行われたPOG取材でも、クラブ所属馬を含めて多くの2歳馬を紹介してもらった。その時も取材対応をしていただいた、ノルマンディファームの岡田壮史氏は、

「クラブだけでなく、育成牧場で働く我々スタッフにとっても、モチベーションの上がる勝利となりました」

 と話す。セレクトセールの1歳セクションで購入されたデアリングタクトであるが、岡田氏は当時の印象について、

「華奢に映りながらも品のある馬体をしていましたし、動かした時の印象も良かったですね」

 と語る。セリの後はオカダスタッドのえりも分場において中期育成が施されると、馬体には幅も出てきただけでなく、ノルマンディファームでの騎乗育成にスムーズに入っていけるほどの体力も有していた。

 実はノルマンディファームでは、この3歳世代から育成方針を変えていた。

「これまでよりも早めに入厩できるようにと、管理スケジュールを見直しました。育成スタッフにとっては、これまで培ってきた下地もあっただけに、こちらの指示に応えていくのは大変だったと思います」

 その中で頭角を見せ始めたのがデアリングタクトだった。年が明けてから、一気に調教の動きが目覚ましくなったものの、この段階ではまだ、クラシックを期待させるような印象は無かった、と岡田氏は話す。

「父が新種牡馬のエピファネイアということで、どの条件があっているのだろうとも思いましたし、ひょっとしたら条件を問わず、手堅く走ってくれる馬になるのではとも考えたこともあります」

 デアリングタクトの未来像が一気にはっきりとしたのは、昨年11月のメイクデビュー京都だった。残り1ハロンだけの競馬で、一気に決着を付けたその末脚を見た岡田氏は、デアリングタクトがGIまで行ける馬だと確信する。

「試金石だと思っていたエルフィンSですが、届かないと思っていたところから、一気に前を交わしていったレース内容には驚かされました。このローテーションだけでなく、日々の管理についても杉山先生にお任せしてきただけに、感謝しかありません」

 歩様には堅さもあったので、桜花賞のように渋った馬場でもこなしてくれると思っていました、とも話す岡田氏。距離延長となるオークスに関しても、

「GIまで行けると思っていたのは、この馬が距離的にもオークス向きだったと思っていたからです。カッカする面があるとは言われていますが、牧場では気性の難しさは見せたことは無かったですし、直線の長い東京競馬場の方が更に末脚が活かせると思います」

 と自信を深める。個人的にもクラブのツアーや、昨年のPOG取材においても、成長の過程を見てきたデアリングタクトであるが、同じ3歳世代は他にも楽しみな馬が揃っていた印象もあり、また、先日の取材で見せてもらった現2歳世代も、仕上がりの良さや血統背景共に、楽しみな馬が揃った印象がある。

「デアリングタクト1頭だけでなく、これからも毎年のようにクラシックを沸かせるような馬を送り出して行きたいです」

 と最後に話してくれた岡田氏。5月2日に発売される「POGの達人 完全攻略ガイド」でも、浅野靖典さんが取材したノルマンディファームの原稿と、写真が掲載されている。その中から「未来のデアリングタクト」を選び出してもらいたい。

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