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【天皇賞・春】ごまかしが利かない大一番に真の王者が生まれる

  • 2020年05月02日(土) 12時00分

逆境を乗り越え大記録達成なるか


 五月の光の中、豊満な緑の衣をまとったケヤキの巨木。その幹は雄々しく圧倒されるが、風に鳴って渦立つ葉の動きには繊細さがある。そしてその葉のむこうに青空が見えている。スケールがあって美しい。この優美さを競馬にたとえるなら、ゆるぎない伝統の一戦、春の天皇賞になる。

 スタミナはもちろんのこと、どんなペースになろうとも折り合える精神力ももとめられ、さらにはスピードや瞬発力も欠かせない。淀の3200米の舞台で勝つためには、そのどれをも備えていなければならない。真の実力が問われるのだ。そして、長距離戦だけに、騎手の腕も求められる。ペース、仕掛けのタイミングでレースの明暗が分かれるからだ。見るものには、淡々と流れる道中の、手に汗握る感覚がたまらない。ごまかしの利かない大一番であり、真の王者が生まれることを思わせる。
 
 メジロマックイーン、サクラローレル、マヤノトップガン、それにスペシャルウィークにテイエムオペラオー、そしてディープインパクト。いずれも時代を飾った名馬たちだが、どれもがこの舞台で栄光をつかみ、一緒に鞍上の顔も浮ぶのだ。
 
 長距離戦は、のんびりした性格でゆったり大きなストライドで走るものが向いており、それだけ仕上げるのに時間がかかることが多い。そのぶん、一気に燃えつきる短距離馬と異なり、調子のピークは長く続くと言われている。ステップレースの阪神大賞典、日経賞で好走できたものは、そのまま本番でも走るというのも頷けるのだ。
 
 その逆に、これまでの成績を見ると、年明け最初のレースが春の天皇賞という馬の結果は良くない。また、一年前のここを勝ってからここまで一度も勝てなかった馬の勝利も、天皇賞が現在のルールになってからはなく、いずれも連対も外しているのだ。春の連覇を狙った馬はこれまで12頭いて、4勝2着6回となっている。今年のフィエールマンには厳しい記録だが、昨年がAJC杯2着からの中97日での勝利で、テッポーが利き、京都コース2戦2勝、5歳でキャリア9戦、さらに菊花賞馬でルメール騎手と、乗り超えるパワーはありそうだ。有馬記念4着以来の中132日での勝利、ルメール騎手の初の天皇賞4連勝という大記録達成に軍配を上げてもいい気もする。

 かつての菊花賞馬キセキは、問題のゲートも武豊騎手なら大丈夫そうだし、ユーキャンスマイル、ミッキースワローのステップレースの勝ち組を加えて、この4頭から王者にふさわしいものはどれかを考えたい。

 青空を背景にそびえ立つケヤキの巨木のように、堂々と他を圧する王者の姿を見せつけてほしい。人馬ともに。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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