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騎乗していた競走馬が愛馬に! ヒューイットソン騎手に聞く南アフリカの引退馬事情(3)

  • 2020年05月12日(火) 18時03分
第二のストーリー

ヒューイットソン騎手のご両親が所有しているノーウェストアーチ(提供:ヒューイットソン騎手)


 馬主が競走馬を購入する際、引退後のセカンドライフについての同意書にサインをする規定のある南アフリカでも、すべての馬を生かすことができないという現実を前回はお伝えした。それでも南アフリカの競馬に携わる人々の間では、競馬から引退した馬たちのその後についてオープンに語られており、皆が馬の行く先を気にしているという。

 また南アフリカのスターホースだったシェイシェイが、自然豊かな牧場でロバやシマウマなどと仲良く暮らしているという話を聞いて、ほのぼのとした気持ちになった。ヒューイットソン騎手自身も競馬から引退した馬たちのセカンドライフや余生を真剣に考え、自らも引退した馬を所有しているとのことで、今回はその話題を中心にお届けする。

「愛馬がいつも楽しそうで、嬉しい!」


――ではヒューイットソンさんが関係している引退した馬たちについて教えてください。

ヒューイットソン騎手 ノーウェストアーチという馬は、競馬では3回しか走っていません。僕の両親が所有して面倒を見ています。瞬発力のある動きをしていたので、ポロに向いているのではないかと思っていたら、南アフリカで1番のポロの馬になっていますよ。ニックネームはアーチです。

――ヒューイットソンさん自身が所有している馬はどのような馬ですか?

ヒューイットソン騎手 レース数もたくさん走っていて、7勝しています。パシフィックスピリットという馬で、重賞級の才能があったのですが、現役生活の最後の方は鼻出血が止まらなくなってしまいました。彼を所有していた人は南アフリカでは大きな馬主さんで、僕と仲が良かったこともあって、その馬を譲り受けました。

第二のストーリー

パシフィックスピリットとヒューイットソン騎手(提供:ヒューイットソン騎手)


――パシフィックスピリットのレースにはヒューイットソンさんも、当然乗ったのですよね?

ヒューイットソン騎手 もちろん、乗せていただきました。彼の7勝目は僕が乗った時のものです。

――その馬を何と呼んでいるのですか?

ヒューイットソン騎手 パシフィックスピリットと、そのまま呼んでいます。僕の彼女はパシフィックと呼んでます。

――パシフィックスピリットが引退した後、まずどうされたのですか?

ヒューイットソン騎手 彼女が全部やってくれました。1か月は放牧に出してしっかり休ませてあげました。(乗馬としてのリトレーニングも)ゆっくりゆっくり時間をかけました。1回障害をやらせようと思ってジャンプさせたら、すごく上手だったのですけど、すぐに前脚を痛めたので、今は自分や彼女が乗って遊んだりして、ペットのような存在です。

――どのような場所にいるのですか?

ヒューイットソン騎手 彼女の叔母が獣医なんです。その叔母さんがいつも使っているプライベートの牧場の馬房を1つ借りて、そこで過ごしています。その獣医の叔母さんも面倒をみてくれているんです。

――それは安心ですね。

ヒューイットソン騎手 はい。彼がいつも楽しそうなので、すごく嬉しいです。

――パシフィックスピリットはどのような性格ですか?

ヒューイットソン騎手 食べ物が好きです。遊んだりする時も良い子なのですけど、現役の時はすごく真面目で、一生懸命競馬に向かっていくという精神力の馬でした。ですから、引退して放牧に出して(競走馬生活が)全部終わったというのを理解して、今はとてもリラックスしています。

――日本では人参をよくおやつにあげるのですが、南アフリカではどうですか?

ヒューイットソン騎手 それは同じですね。あとは、レシスという甘くて種もあって黒いものがあるのですけど、それが好き過ぎてものすごく反応するんです(笑)。それでお酒も造っていると聞きました。飼い葉の上にも乗せて食べさせたりもしています。それが馬にとってはおやつですね。どんなに量が多かろうと、それをあげるとずっと食べ続けます。1個あげたら、まだ持ってるだろうと僕の後ろまで探しに来ます(笑)。

第二のストーリー

かわいらしい表情をみせるパシフィックスピリット(提供:ヒューイットソン騎手)


――南アフリカではヒューイットソンさんのように引退した馬を持っている調教師やジョッキーはいらっしゃいますか?

ヒューイットソン騎手 調教師やジョッキーのパートナーの方、奥さんだったり彼女だったり、そういう方たちは馬が好きな人が多いので、たいてい馬を引き取りたいという感じになります。僕の1番の親友の彼女も、僕の馬と同じ所に馬を置いています。なので僕の彼女と一緒に馬に乗ったり、ジャンプしたりしていました。そのように皆さん、引退した馬を持っています。

――日本では競馬関係者のご家族やパートナーでも、馬に乗れる人がさほど多くないと思いますが、そこが南アフリカと日本との違いかなと感じます。

ヒューイットソン騎手 競馬の文化は南アフリカは発達していると思いますね。場所によって、地区によってですけど、多くの人が馬に乗ったりしますから。日本でもそうなるといいですね。自分の経験上、競走馬は今まで食べていた飼い葉が変わると、馬がものすごく静かになって、人間に優しくなると僕は感じています。

(つづく)

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北海道旭川市出身。少女マンガ「ロリィの青春」で乗馬に憧れ、テンポイント骨折のニュースを偶然目にして競馬の世界に引き込まれる。大学卒業後、流転の末に1998年優駿エッセイ賞で次席に入賞。これを機にライター業に転身。以来スポーツ紙、競馬雑誌、クラブ法人会報誌等で執筆。netkeiba.comでは、美浦トレセンニュース等を担当。念願叶って以前から関心があった引退馬の余生について、当コラムで連載中。

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